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新年会④

 師匠の佳斗が新年会に参加しているメンバーに囲まれたため、瑠利は暇を持て余した様子であった。


 そこへ、まるで美味しそうな獲物を見つけたかのように、三人の女子プロゴルファーが近づいてくる。


「きゃあ、かわいい。お人形さんみたい。抱きしめていい? ねえ、いいでしょう」


「リオ、この子が困っているでしょう。あまり驚かせないの」


「ええーーっ、でもこんなに可愛いんだよ。スズカさんもそう思うよね」


「あ、いや……、私もマリカさんと同じで、中学生を怯えさせるのはどうかと……」

 

 そう、桃川涼花が話す通り、瑠利は急に先輩たちに囲まれて怯えた様子。


 まだ中学生であり平均よりも背の低い瑠利と違い、三人の女子プロゴルファーはみな身体が大きかった。

 それも身長がというよりは、ツアーで活躍するだけあって、細身に見えてもしっかりと鍛え上げられたその身体。

 アスリートらしくバランスのとれた体型で、姿勢もいい。


 そんな者たちに囲まれ、上から覗き込まれれば、流石の瑠利も萎縮するというもの。

 涙目にもなっていて、それに気づいたお姉さんたちも慌てた様子。


「ほ、ほら。リオが驚かせるから」


「え、え、え、わたし?」


「そうよ、スズカもそう思うわよね」


「は、はい。リオ! なんとかなさい」


「あ、うん」


 有岡里桜も先輩たちからそう命じられれば、ほっとくわけにもいかない。


 ただ、瑠利もそんな先輩たちのやり取りが可笑しくて、「ププッ」と吹いてしまった。


 というのも、ここにいるのはテレビでも見たことのある女子プロゴルファーたちだ。

 それが子供相手にあたふたする姿は、陸斗を相手に一喜一憂するカエデや詩穂と同じで、どこか親近感の持てるものだった。


「あら? この子、意外と余裕ありそうね」


「マリカさんを前にして、なかなかの大物だわ」


「おっふぅ……、泣かせてなかったみたいで、よかったぁ」


 と、三者三様の反応であるが、この場で瑠利を泣かせたとあっては、流石にまずい。

 ただ普通に挨拶すればよかっただけなのに、さっそく有岡里桜がやらかしたのだ。


 里桜は自分の部屋に両手で抱えられるほど大きなユルクマのぬいぐるみを置いてあるほど、可愛いもの好き。

 家に帰れば真っ先に抱き着くので、その感覚なのであった。


「ごめんね、驚かすつもりじゃなかったんだけど……」


「あ、はい。大丈夫です。ちょっと、びっくりしただけですので」


 有岡里桜からの謝罪に、瑠利も素直に応じる。

 

 実のところ、本当にびっくりしただけなのであった。


 自分では大人びた衣装のつもりで買った薄いピンクのワンピースドレスだったのに、有岡里桜の反応はお祖母ちゃんやショップの店員さんと同じだったのだ。

 そのため、それに驚いたことと、それがショックだったことで、呆然としてしまったのである。


 結果、それを知らない三人は、慌ててしまったというわけだ。


 ありがちな勘違いであったが、それで一気にお互いの距離は縮まるというもの。

 ちょっとしたハプニングは人間関係において調味料であり、味付けに失敗すれば最悪だが、今回は上手くいったようだ。


 四人ともいい感じで力が抜け、自己紹介を始める。


「改めまして、私は有岡里桜。今期は初優勝を狙っているから、応援して欲しいな」


「はい、応援します」


「ふむふむ、ルリは感情が無いと……」


「…………ん?」


「えっと、私は桃川涼花。私も里桜と同じで、初優勝が目標かな。応援するなら私の方が絶対いいと思うよ」


「じゃあ、どっちも応援します」


「うんうん、ルリは八方美人タイプかぁ……」


 そう言って、いちいちチャチャを入れるのは、もちろん有岡里桜だ。

 ちょっと、おふざけが過ぎるところもあるが、その明るさが彼女の武器である。


 ただ、涼花からは「リオ、うるさい!」と、注意されてはいたが……。


 そして、最後は城野真理香。


「私は城野真理香よ。ルリちゃんとは、以前に会った事あるわよね」


「はい、小学生の頃に少し」


「そう、大きくなったわね」


「ええ、でもマリカさんこそ、ご活躍をテレビで見てましたよ」


「うふふ、ありがとう」 




 こうして、なんとか無事に対面は済んだ。


 続いて、女の子同士集まっての歓談となるわけだが、城野真理香には師である大内雄介から頼まれていることがあった。


 それは瑠利にとっての試練みたいなものであるが、いきなりは難しい。

 佳斗たちの話も長くなりそうなので、一先ずは世間話で盛り上がり、いよいよ本題へ。


「ところで、ルリちゃん」


「はい。何ですか?」


「私たちね、明日は春乃坂ゴルフクラブで練習させてもらうのだけど、一緒にどう?」


「えっ」


 それは、思いがけないお誘い。

 プロたちの練習に参加させてくれるというのだ。


 新学期は7日からであり、明日はまだ休み。

 願ってもないことで、絶対に行きたい。


 そう思えるほど、瑠利は彼女たちと打ち解けていた。


「時間は最終組が出た後の10時30分からアウトコース。もし移動の足が無いのなら、私が迎えに行くけど」


「行きます! ぜひ、お願いします」

 

 そうして瑠利は、明日プロとのラウンドに挑む。











ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。


次回からは少しの間ゴルフ場へと舞台を移しますので、ゴルフに興味のない方には厳しいかも。

物語の内容的には端折っていただいて構いませんので、よろしくお願いします。

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