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クリスマス

 12月25日。


 神川ゴルフ練習場では、今朝から子供たちがサンタのコスプレをして接客していた。

 受付の席に座る美里は帽子だけであったが、陸斗と瑠利、カエデ、詩穂はフル装備。

 もちろん、保護者がいるのでスカートではなく、ズボンだ。

 彩夏も少し恥ずかしそうではあるが、同年代の子たちに混ざって楽しんでいた。

 

「まさか、こんな格好をさせられるなんてね」


「ふふふ、ここでは毎年こうなのよ。ねっ、お姉ちゃん」


「うん、まあ……。でも、ちょっと恥ずかしくはあるのよね、いいかげん……」


 なんてことを言っているが、一番気合の入っているのが詩穂である。

 というのも、彼女はすでに、ここの代理店長を任されることが決まっていた。

 まだ学生の身であることを考慮し、佳斗がオーナーという立場でサポートする予定であるが、やるからには実績を上げたいというのが本音であろう。

 売り上げを伸ばすためにも、こういったイベントは大事である。

 多少の恥ずかしさは我慢してでも、固定客を増やそうと頑張っているのだ。


「ほらほら、カエデ。お客さんたちにお菓子を配りにいくわよ」


「は~い」


「彩夏さんも、お願いしますね」


「ええ、頑張ってみるわ」


 そうしてカエデは嬉しそうに、年長組は若干の恥ずかしさを抱えながら、事務室を出ていった。



 一方、子供たちは元気一杯だ。


 陸斗はもちろん、瑠利も恥ずかしさなど微塵も感じていない様子。

 打席のテーブルを拭きながらも、常連のおじさんやおばさんたちに話しかけられ、楽しそうにしている。


「ほう、今日はクリスマスか」


「うん、見てみて、サンタさんだよ」


「そうか、じゃあ、プレゼントをあげなきゃいけないな」


「ええ~、ぼくが渡すんだよ~」


「ハハハ、もう頂いてるよ。楽しい気分にさせて貰ったからね」


 そんな話を陸斗とするのは、常連の清水行永(ゆきなが)(63歳)だ。

 先代の頃からの常連さんで、幼少時代の陸斗をよく知る人物でもある。

 亡くなった先代の代わりに孫の成長を見守ろうと、ずっと通い続けてくれているのだ。

 まだ老け込む年齢としではないが、陸斗の前ではすっかりお爺ちゃんになっている。


 そして他にも。


「おっ、なんだリクト。今日はコスプレか?」


「あっ、タケルおじさん、こんにちわ。だって、今日はクリスマスだよ。みんなで楽しまないと」


「ふう~ん、そうか。なら、奮発しなきゃいけねえな。よしっ、今日は200発打とう」


「ほんと! やったー」


 そんな話をするのは、葛城猛だ。

 言わずと知れた、常連さんである。


 コースへ出る日の朝晩は必ず練習に来るので、陸斗ともすっかり顔なじみであった。

 佳斗から指導も受けているので、気のいいおじさんというイメージなのである。


「すぐに、ボール持ってくるね」


「あ、いや……少しずつで頼む」


「うん、わかった」


 こんな感じで、陸斗はみんなから大人気。

 常連さんたちはよちよち歩きの頃から見守っているので、感慨も一入ひとしおであろう。

 子供の成長は早く、うそみたいな良い子に育った陸斗を、皆はホッコリした面持ちで眺めるのであった。




 そして、最後は瑠利。


 彼女に対しても、常連さんたちの目は温かい。

 それというのも、彼女が自ら佳斗を師匠として選び、ここに来たことにある。


 先代から通う常連さんたちにしてみれば、陸斗が孫であると同時に、佳斗は息子なのだ。

 その彼を慕い、弟子となった瑠利は、もはや身内も同然。

 特に女性陣からは大人気である。


「ルリちゃん、サンタさんの格好も可愛いわ」


「ありがとうございます!」


「早く、プロになってね。おばちゃんたちが応援に行くから」


「はい、頑張りますので、その時はよろしくお願いします」


「まあ、ほんと良い子ね」


 と、物怖じしない態度と、ハキハキした話し方で好感度もアップ。

 将来に向けての、強力な応援団を手に入れたのであった。

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