クリスマス飾り
12月に入り、男子ツアーの最終戦を終えた翌週火曜日の夕刻。
神川ゴルフ練習場では、クリスマスの飾りつけを行っていた。
「ねえ、お父さん。これはどこに付けるの?」
陸斗は金色の大きなお星さまを手に持ち、父に尋ねる。
「ああ、それはね。モミの木のてっぺんに付けるんだよ。でも、私じゃ届かないから、陸斗、肩車をするから付けてくれるかい?」
「うん!」
練習場の入口から入ってすぐ。受付の隣に置かれた高さ二メートルほどの、モミの木のてっぺん。
そこへお星さまを付けるとあって、陸斗はわくわくしながら父の肩車を待った。
「じゃあ、持ち上げるからね。バランスを崩さないように気をつけるんだよ」
「うん、だいじょうぶ。壁に手をついてるから」
「ははは、そうだね。じゃあ、いくよ」
佳斗は可愛い息子が落っこちないようにと、様子を見ながら慎重に立ち上がる。
陸斗も、「あっ」とか「おっ」と声をあげながらも、急に高くなった視界を楽し気に眺めていた。
「すごい! 高くて、よく見えるよ」
「そうだろうね。でも、周りを見てばかりいないで、お星さまを付けちゃおうか」
「あ、そうだった。この辺でいい?」
普段とは全く違う視界に夢中で、すっかり目的を忘れていた陸斗は、慌ててお星さまを掲げて取り付ける場所を尋ねる。
「そうだねぇ……。いいんじゃないかな」
「わかった。じゃあ、ここに付けるね」
そう、父からの承諾を得て、陸斗はお星さまをモミの木のてっぺんに取りつけようと手をのばした。
その方法はいたって簡単。お星さまからは取付用に長い棒が出ていて、それを木の幹に結束バンドで括るだけだ。
問題となるのは、その取り付け棒が見えない位置で、下過ぎてお星さまが枝に隠れてしまうのも違うし、かといって飛び出ていたらカッコ悪い。
丁度いい位置とはどこであるか。
それを子供の陸斗では決めかねていたのだ。
それでも、お星さまは無事に取りつけ完了。
佳斗はせっかくだから高いところの飾りつけも済ませてしまおうと、ツリー飾りをいくつか頭上の陸斗に手渡し、そのまま作業を続行。
父子二人で楽しく飾りつけを行っていた。
一方、練習場の窓に飾り付けを行うのは、瑠利とカエデ、詩穂の三人である。
女の子らしく可愛いらしいデザインになるよう期待してのものだが、実に怪しい。
「ちょっと、これって反対じゃない」
「えっ、おねえ。こっち向きじゃないの?」
「違いますよ、カエデさん。それだと外からは反対に見えちゃうから、そっちが正解です」
「ええーーっ」
とまあ、こんな具合にカエデが搔き乱すから、ちっとも先に進まない。
やっていることは既存の文字を綺麗に張るだけ。
色のバランス等は彼女たちに任せてってことなのだが、苦戦中である。
「これって、もしかして……、一人は外から見た方がいいんじゃないかしら?」
「あっ、そうかも。ルリ、外に出てくれる」
「はい、カエデさん。少し待っててくださいね」
と、どうやらそんな重要なことを今更気づいたようであるが、今は12月。
「うっ、さぶっ」
と、寒風の吹く中、寒そうに外へ出た瑠利はその出来栄えに愕然とした。
「シホさん、カエデさん、すっごい歪です」
「うそっ」
「ああ、マジか……」
こうして三人は最初からやり直しとなり、がっかりした様子。
けれど、そんな失敗をしても楽しそうに笑う彼女たちに、練習場に来ていたお客さんたちも、微笑ましい気持ちになるのであった。




