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佳斗、意思を伝える

 その日の夜。


 営業を終えた神川ゴルフ練習場では、佳斗がある報告をするために瑠利を呼び出していた。


 場所は練習場の事務室。


 この時間、小学生の陸斗はお風呂に入り、就寝の準備をしている。

 まだ子供であるため、七時以降は手伝いをさせてもらえないのだ。


 本音をいえば、佳斗も息子には子供らしく育ってもらいたい。

 むしろ、手伝いなんてさせたくないのだが、それができない事情もある。

 そのために、一度は練習場の経営を諦めよとしたが、少しばかり風向きが変わってきた。

 それが、ある一人の少女の出現によるものだと、佳斗にもわかっているのだ。


「師匠、何か御用ですか?」


「やあ、疲れているところ、済まないね」


「いえ、全然平気です」


「ははは、それは頼もしいね。息子の面倒も見てくれているし、キミには感謝しているよ」


 まずは、そんな他愛もない雑談から始まり、徐々に本題へと話を進めていく予定だ。


「ところで、ルリちゃんはいつ頃からゴルフを始めたんだい?」


「えっと、確か……小学三年生の頃だったと思います。お母さんが先生に教わっている時に、わたしも打たせて貰ったのが最初ですね」


 それは瑠利の母親、遥がここに生徒として通ってきていた頃の話だ。

 大内プロの紹介で佳斗のレッスン教室を受けた遥は、幼い娘を一緒に連れて来ていた。

 最初は見ているだけだった瑠利も次第に興味を持ち、「私も打ちたい」と言い出したのだ。

 それで遥は佳斗の許可を得て、一緒になって練習。

 初めてのわりには、いい球を打っていた。


 そんな記憶を、佳斗は思い出していた。


「そうか、あれからか……、経歴としては十分あるし……」


「あのう、それが何か?」


「ああ、すまない、ちょっと待っててもらえるかな」


「はい……」


 本人から話を聞く限り、ゴルフ歴は意外と長い。

 今が15歳であることを考えれば、もう6年以上は経っていた。

 感覚を養うには十分な期間であり、『これなら』と佳斗は改めて納得する。


 そして、その後も暫し沈黙が続き、いよいよ本題へ。

 瑠利もこれから何を伝えられるか察し、緊張した面持ちだ。


「ルリ()()


「は、はい」


「昨日、遥さんにも伝えたのだけど、私はキミを預かることにしたよ」


「えっ、ほんとですか?」


「ああ、すでに雄介にも話してあるし、もうキミのお父さんにも伝わっているだろう」


 そう話す佳斗に、瑠利は感激した様子。


「あ、ありがとうございます。精一杯、頑張ります」


 そして、緊張の解けた瑠利は嬉し涙を流し、佳斗も大切なことを無事に伝えられてホッとしたのであった。


 これから二人は本当の師弟関係となり、厳しい女子プロの世界へ戦いを挑むことになる。

 試験に通るのは年間20名の狭き門。

 まして、その中でも活躍できるのは、ほんの一握りであり、毎年ツアーでシードを獲得できるのはたったの50名だ。

 華やかではあるが、辛い世界でもあるのだ。




 とはいえ、それはまだ先のこと。


「うん、よろしい。今後のことは追って話すから、まずは高校受験に専念して欲しい。練習との両立は難しいかもしれないけど、きっとキミなら出来るはずだ。期待しているよ」


「はい!」


 そして、この日を境に朝陽瑠利の戦いが始まるのであった。







第24話までお読みいただきまして、ありがとうございます。


これで瑠利は佳斗の正式な弟子となりました。

今後の活躍を期待ですね。


ちなみにですが、主人公であるはずの陸斗の出番はまだ少ないです。

現状、子供というのが理由ですが、中一の夏ごろから本番となります。

それまでは可愛い陸斗をお楽しみください。

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