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美里の娘たち

 土曜日の朝5時。


 前回同様、陸斗と瑠利はボール拾いを始め、6時前に終了。

 その後は朝食に行き、戻ってきて佳斗と受付を交代する。


 そんな慌ただしい時間が過ぎていき、時刻は9時。

 そろそろ客入りも鈍くなり始めた頃、美里が出勤してきた。


「兄さん、おはよう」


「やあ、おはよう。いつもすまないね」


「もう、何言ってるのよ」


 もはや定番となった、朝のこの会話。


 本当なら忙しい時間帯にも手伝いに来てほしいところだが、美里にも面倒をみなければならない家族がおり、優先すべきはそちらである。

 平日なら早い時間に旦那や娘たちを追い出せても、土日祭日ともなると、そうはいかない。

 そのため、土日だけでも瑠利が手伝いに来てくれるようになったことは、喜ばしいことだった。

 これまで平日の朝(7時から営業)は佳斗が一人で頑張り、出来るだけ早く美里が来るという流れであったため、もはや限界だったのだ。


 今後は平日の午後を海未に任せられることになり、労働環境も大きく改善されたと言えよう。

 ただ、朝の人手不足は変わりないため、まだまだ厳しい状況ではあるが……。



 ☆ ☆ ☆



 受付で兄と朝の挨拶を済ませた美里は事務室に入り、家から保冷バッグに入れて持ってきたおやつを冷蔵庫へ入れる。


 これは、後からみんなで食べようと思い、持ってきたプリンだ。

 子供の陸斗はもちろん、女の子の瑠利も甘いものは大好き。 

 すでに事前調査(遥に聞いた)で知っていたので、作ってきたのである。


 と、そこへ打席側の清掃を終えた、陸斗と瑠利が戻ってきた。


「ミサトおばさん、おはよう」


「ミサトさん、おはようございます」


 二人は佳斗から美里の出勤を聞き、挨拶をしに来たのだ。


「おはよう、二人とも。朝からありがとね」


「うん、任せて」


「はい、私も大丈夫です」


 そして、どちらも子供らしい元気の良さで言葉を交わし、事務室を出ていく。


 美里もその可愛らしい姿を見届けてから「さあ、やるか」と、一つ気合を入れた。

 すでに家では、なかなか起きてこない旦那や娘たちを叩き起こし、無理やり朝食を食べさせ、家事も済ませている。 

 あとは早朝から忙しなく働く兄やこの天使たちを休ませれば、任務完了だ。


 事務室を出た美里は、そこにいた兄たちに言葉をかける。


「兄さん、交代するわ。それにりっくんとルリちゃんも休んでくれていいわよ」


「ああ、助かるよ」


「うん」


「はい」


 そうして美里は受付の席へ座り、佳斗は朝食休憩へ。

 陸斗と瑠利は、これからどうするかを相談。


「ルリ姉ちゃん、今日はどうする?」


「う~ん、それじゃあ、昨日のパター勝負をまたやろうか?」


「うん、いいよ」


「決まりね」


 こうして二人は昨日の続きをするため、アプローチ練習場へと走っていき、それを見届けた美里も、


「今日は、お客さん来てくれるかしら」


 と、あまり車の停まっていない駐車場を眺めるのだった。



 ☆ ☆ ☆



 それから30分後。

 練習場の打席では、いつものお爺ちゃんたち集まり、練習がてらゴルフ談議に花を咲かせていた。

 というのも、大概こういった場所で話す内容は、最近プレーしたコースの事や、健康に関する事と相場は決まっている。 

 それを如何に面白可笑しく話すかが、腕の見せ所だ。

 打球音に混じって爺様方の笑い声が響く。

 それも練習場の醍醐味である。


 と、いつもと変わらぬ様子の神川ゴルフ練習場。

 駐車場はガラガラ、お客さんのくる気配はない。

 相変わらずの不景気っぷりだが、そこに二人の少女が現れた。


 どちらも見た感じは高校生くらい。背は高めでメリハリのある引き締まった体型。

 髪色こそ明るめ金髪と茶色がかった黒髪で違うようだが、顔立ちは美里似の美少女だ。


「あら、あなたたち、来たのね」


「うん、お母さんのお手伝いをしようと思って」


「もう……。また、そんな嘘をつく。カエデはルリって子が気になるだけでしょう」


「うっ……、だって気になるじゃない。それにお姉ちゃんだって、そうでしょう」


「まあ、そりゃあ……。でも、だったら、そう言えばいいじゃない」


 そう言い争う二人は、美里の娘たちだ。


 黒髪で少し背の高い方が姉の詩穂しほ(18歳)で、金髪で騒がしい方が妹のカエデ(16歳)である。

 どちらもゴルフ專門ブランドの短パンにポロシャツと同じような服装だが、姉は黄色の短パンに紺色のポロシャツ、妹は白の短パンに薄いピンクのポロシャツと、その派手さを考えたら、手伝いというよりは練習に来たといった方がしっくりくるが……。


 母親の美里は来たそうそう騒ぎ始める娘たちに、うんざりした様子。 


「ほらほら二人とも、こんなところで揉めないの。りっくんとルリちゃんはアプローチ練習場にいるから、会ってきたらいいわ」


「うん、そうする」


「それじゃあ、私も行こうかな」


「ほら、やっぱり、シホ姉だって」


 そうしてまた騒がしく、出ていくのだった。

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