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週末になって

 金曜日の夕方になり、瑠利は母親と一緒に神川ゴルフ練習場を訪れた。

 受付には顔見知りの渡会海未がいて、ちょっと驚いた様子であったが、まずは師匠だ。

 母と一緒に受付の裏手にあるドアを通って事務室に入り、書類を見ていた佳斗に挨拶をする。


「おはようございます! 師匠、またお世話になります」


「こんにちはルリちゃん、げんきだねぇ。私は瑠利の母(ハルカ)さんと話があるから、自由にしているといい」


「あ、はい。わかりました」


 そうして師匠と言葉を交わした瑠利は、母親を残して事務室を出る。


 そのまま打席側へ向かい、全くお客さんのいない練習場の風景にがっかりしたが、もちろんそんな状況では目的の人物もいなかった。

 なので、それならと母屋へ向かうも、そこにも人のいる気配はない。


 今の時刻は15時。秋の日はつるべ落としということわざもあるくらい、日の沈みは早い。

 小学生の陸斗ならもう帰って来ていてもいい頃合いであるが、姿は見えなかった。

 そのため、瑠利はまた事務室へ戻ってきて、


「すみません、師匠。リクトくんがいないみたいですが」


 と、尋ねた。 

 陸斗とは五日ぶりの再会とあって、とても楽しみにしていたのだ。


 けれど、残念ながら今は留守な様子。


「ああ、リクトは今、ミサトの買い物に付き合ってもらってるんだ。もう暫くしたら、戻ってくると思うから、待っててあげて」


 ただ、そう聞けば瑠利も納得。

 受付には海未もいるから、時間に余裕ができたのだろう。


 そう考えた彼女は、待っている間に練習を始めることにした。


「はい、わかりました。では、練習していてもいいですか?」


「ああ、もちろんだよ。それがキミの仕事だからね。私はもう少しハルカさんと話があるから、自由に打っているといい」


「ありがとうございます」


 こうして瑠利は佳斗の許可を得て、さっそく練習を開始。


 受付の海未に声をかけて50球入りの籠を受け取ると、誰もいない練習場の真ん中に陣取った。

 そして、先週注意されたように十分な準備運動ストレッチを行い、ほぐれた感触をつかんでから打席へ立つ。


 まずはドライバーを持ち、素振りを十回。

 握りを左右逆にして、左で素振りを十回。


 その後はクラブをサンドウェッジに変えハーフスイングを繰り返し、イメージが固まったところで、ようやく籠のボールへ手を掛けた。


「じゃあ、打ちます」


 誰かが聞いているわけでもないのに、そう宣言してからボールを打ち始める。


 最初はサンドウェッジで三十ヤード、五十ヤード、八十ヤードの打ちわけを行い感触を確かめ、その後は番手を徐々に上げながら、ボールを打っていく。 


「よし、いい感じ」


 打感や球筋、飛距離もイメージ通り。

 ただ、問題があるとすれば、落下地点にバラツキがあることだ。


 プロを目指すのであれば、誤差は少ないほどいい。

 練習での誤差は、本番で大きな差となって現れるため、なるべく正確なショットが求められるが……。


 それはプロでの話。


 今はまだ、基礎の繰り返しが大切な時期だ。

 日々、身体の成長が進むこの年齢では、スイングを固定させることは逆効果であったりする。

 むしろ、感覚重視の方が、いい結果を生むのである。


「うん、もう少し打とうかな」


 瑠利もまだまだ満足できていないようで、50球の籠を追加。


 そしてまたボールを打ち始めようとしたとき、美里と手を繋いだ陸斗が帰ってきた。


「ああーーっ! ルリねえちゃんが来てる!」


「あら、ほんとだわ。早かったわね」


 一旦母屋へ入り、裏口から打席側へとやってきた二人は、そこで打席に立つ瑠利を見つけたのだ。


「リクトくん、それにミサトさんもこんにちわ。学校が終わったので、お母さんに連れてきて貰いました」


「あら、そうなのね。じゃあ、兄さんとハルカさんは事務室かしら? ちょっと、行ってみるわ」


 美里は陸斗と繋いでいた手を放し、事務室へ向かう。


 残された陸斗は「じゃあ、僕はルリねえちゃんの練習をみてよっと」と、瑠利の立つ打席の後方に設置された椅子へ座り、足をブラブラさせ始めた。


 可愛い。


 そう思ってしまう瑠利であるが、いかんいかんと頭を振り、練習へと集中。


 若干、急ぎ気味ながらボールを打ち、最後の100球目をサンドウェッジで纏めて、練習終了だ。


「終わったよ。片付けしたら、あそぼっか」


「うん」


 こうして、急ぎ後片付けを行い、瑠利は汗をかいたため服を着替えてから、陸斗と合流。


「何して遊ぶ?」


「えっとね、パター勝負しよ」


「えっ?」


 それは思いがけない提案だった。


 アプローチ練習場にあった高麗グリーン。

 それを、この一週間で佳斗が仕上げていたのだ。 

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