金魚すくいに、すくわれた
友達と喧嘩したんだ。
なんか、ムカついた。
特に、理由はないけどね。
そのくらい、しょうもないこと。
自分が、バカに思えてきたよ。
好きなことがない。
好きを感じる隙もない。
そういうこと。
唯一、好きに近かった友達。
今はもう、好きに近くないな。
勉強が出来ない。
それが、一番ダメだ。
そこが良ければな。
なんとかなるのにね。
歩み進められるのにな。
学校で突っ伏す毎日。
机の木目を、見つめる日々だ。
しかも、至近距離でね。
机に逃げても、無駄みたい。
耳が、珍しいタイプだから。
福耳で、かなり大きいから。
聞きたくなくても、耳に入る。
耳で羽ばたけるんじゃないの?
それくらい大きい。
折り畳めれば、話は別だが。
お祭りに来た。
ひとりでね。
金魚すくいだ。
金魚すくいがあるよ。
やるしかない。
ストレスが増えるか減るか。
それは、実力次第だ。
ポイで金魚を狙う。
バンバン取れた。
思い通りいって、実力が出せた。
金魚が、雲より軽く感じた。
顔を上げれば、そこは人の群れ。
口角が上がった人ばかり。
初めて、自分を嫌いじゃなくなった。
ある顔を見つけ、首がカクッとなった。
喧嘩した友達だ。
「ごめんね」
友達が小さく言う。
「悪いのは、こっちだよ」
私は、頭を下げた。
「スゴかったよ。かっこよかったよ」
「ありがとう」
褒めてくれた。
金魚すくいが、好きかも。
褒められると、好きになる。
単純だな。
もっともっと、金魚をすくいたい。
すくって、すくい続けたい。
武器を見つけたから、嬉しい。
金魚をすくうように、勉強した。
そしたら、成績が上がった。
たぶん、言っても分からない。
感覚的なものだから。
自分でも、分からないんだ。
金魚すくい勉強法。
私は、そう名付けた。
すごい勉強法だ。
おかげで、うまくいった。
勉強だけに、とどまらない。
金魚すくいの要領。
それで、あらゆることをこなした。
でも、破れそうになった。
心のポイが。
薄い紙だから。
繊細だから。
スランプは、誰にでもある。
落ち込んだ。
そこに、友達が寄り添ってくれた。
「大丈夫? そばにいるからね。一緒に頑張ろう」
「うん。ありがとう」
喧嘩していたのが、嘘みたいだ。
友達は、私を引き上げてくれた。
前向きな言葉で。
言葉のポイで、すくってくれた。
友達は言う。
『ひもくじをひくみたいに、物事をやってみたら、うまくいったんだ』と。
『でも、ひもくじイメージは、時にうまくいかなくなる』みたい。
『ハズレを引くことが多くなった』んだそうだ。
そんなとき、友達が助けてくれたらしい。
カタヌキを型抜く、そんなイメージで。
様々な物事を、処理する友達に。
放課後になった。
廊下でうずくまる、男子がいる。
イライラしてる。
すくいたいと思った。
今は、心のポイの調子がいいから。
話し掛けることにした。
「どうしたの?」
「割ってしまってね。心の中にある『傘のカタヌキ』を」
「それは大変だね。でもね、カタヌキも、やり直せる。そう考えないと」
「うん、そうだよね。ありがとう」
噂の子だ。
友達をすくってくれた子だ。
心で、ひっそり叫んだ。
『私がすくうよ。分厚い心のポイで』と。




