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第99話 会議 4 服は大事

 そうして男達がああでもないこうでもないとのんびり話していると、ようやくセシリアとリリーナが戻ってきた。

 注文だけなのに一体何をしていたのか……2時間近くはかかっただろうか。


「お待たせしました、戻りましたよ~」


「無駄に疲れた……」


 満足気なセシリアとは対照的にリリーナは何故か疲れた表情でげんなりしている。


「おう、随分遅かったじゃないか」


「全くだ。服の注文だけでどれだけ時間をかけてるんだ?」


 急いで走っていった事もあり、すぐに戻ってくると皆が思っていたらしい。

 団長とフェリクスは文句を言っている。


 リアーネに丸投げされた件も、彼女達が一緒に考えてくれればもっと楽が出来たかもしれない……なんて恨みも混ざっていそうだ。


「いやぁ……明日の夕方までにっていう条件で引き受けてくれるとこが全然無くて……」


「それだけじゃないでしょ、色々と細かく注文してくれちゃって。お陰でどんな服か散々考える羽目になったわ。当然いくつも大急ぎで作る分料金上乗せだし」


 セシリアが言うには、短い時間で受けてくれる店を見つけるのに時間が掛かったらしい。

 まぁそれは確かにそうかもしれないなと納得出来るのだが……どうやら理由はそれだけではないらしく、リリーナが文句を言っている。


 それもその筈、セシリアはせっかくだからとデザインやらなんやら、細かい注文をしていた。

 急ぎだと言うのに呑気なものであるが、結果的に注文を受けて貰えたのなら良かった。


「待て、一体何着注文した?」


 彼女達の様子から嫌な予感がした団長は確認を入れる。

 精々2着程度の話だと思っていたのだが、どうも違うらしい。


「4着です。鍛錬用の物と普段着に使える物でお願いしました」


 さも当たり前の事のようにセシリアは答えた。

 鍛錬用の動き易い服と短パンのセットとは別に、シアのお気に入りらしいワンピースとおまけに上着まで注文したのだ。


 もしシアの成長が予想以上に早かったら、いくら大きめに作っても勿体ないような気がするが……そこまでは考えていないらしい。

 そもそもそれなりに高価なのだ。随分と思い切った事をしたものである。


 ちなみに靴も同様のものがあるが、流石にサイズの問題が服とは全く違う。

 成長するまでは基本的に買うものではない。


「なんで普段着が出てくるんだ……鍛錬用にって話じゃなかったのか?」


 単純に丈夫で長く使えるので、普段着として着るのは何も珍しくない。

 が、そういう話だっただろうかとダリルは思わず口を挟んだ。


「鍛錬以外でまた何かあったら大変じゃないですか。万が一何かあった時にそれを着てるとは限らないけど……あった方が良いなって」


 この間の襲撃のように日常で危険な目に遭わないとも限らない。

 別にその服を着ていたからといって色々防げる訳も無いが、軽い怪我程度の防止になるくらいには丈夫だ。


 そもそも魔力障壁で護ればいい話ではあるが、突っ込むのもやめておいた方が良いだろう。

 服1つとっても、彼女が気に掛けている証だ。

 まぁとにかく服として良い物ではあるので、別に買う事自体には誰も文句は無い。


「とりあえず金は全員で出し合うぞ。リアーネのプレゼントがどうなるか分からないが、結局俺達は大して貢献出来んから金くらいはな……」


 彼女達はそれを自分達で払うつもりだろうが、収入があるとは言えまだ子供と言っていい彼女達からすれば軽い金額ではないだろう。


 なので団長が代わりに払うなり、少なくとも半額程度の負担はするつもりだった。

 しかし彼はそれを全員で出し合うという提案を改めて伝えた。

 どうやら自分達が特に何もしていない事に引け目があるらしい彼らは、少しでも貢献しようとしているらしい。


「それでいいか?」


「そりゃあ助かるけど。それはそれとして、リアーネさんは?」


 一応確認としてフェリクスはセシリアに聞くが、それは彼女達にとって助けでしかない。

 父にそんな確認をされておいて断るのも悪いし、お互いにプラスであるなら全く構わない。


 それはそれとして、姿の見えないリアーネはどうしたのかと今更ながら訊ねた。

 気になるのは確かだが、急に話を変えたのはきっと父に礼を言う気恥ずかしさからかもしれない。


「嬢ちゃんの力で魔道具が作れないかって急いで帰ったぞ。連絡も無いからどうなってるのかさっぱり分からん」


「無理だった時は俺達が魔道具をいくつか用意しなきゃならないんだけどな……どうすりゃいいんだか」


 溜息交じりに団長が説明し、ダリルも同様に口を開く。

 彼女は本当にどうするつもりなのだろうか。


 彼女の件とは別に、彼らから魔道具を贈るのも悪くはないのだけど、既に有る物をプレゼントしたって意味が薄い。

 技師であるリアーネが何を持っているのか分からないのだ。

 なので結局彼女と話さなければならないという結論になったようだ。


 彼女達は魔道具の知識が浅いので何も言わなかった。

 しかし丸投げして放置というのはどうなんだ、という意見は一致しているらしい。

 セシリアは困惑し、リリーナなど姉の行動に申し訳なさでも感じたのか軽く頭を押さえて同じように溜息をついていた。

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