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第97話 会議 2 サプライズパーティー

「確かに急な話でどうしていいやら。明日も鍛錬のつもりで予定を組んでいたんだがな」


「ウチに来て最初に話した時にチラッと聞いただけだったから、うっかり忘れちゃってて……」


 しかしそんな事を急に言われても困るのが正直なところ。

 別にシアを祝う事を否定するつもりなど全く無いのだけど、当然鍛錬のつもりでいた団長は困惑して言葉を洩らす。


 そんな彼に理由を説明するリリーナだが、これも仕方ない。

 会話の中で1度言っただけの事だった上に、最近色々とあったせいで記憶から吹っ飛んでしまっていたのだろう。


「まぁ明日は元々軽めにするつもりだったし、夕方頃からどっかに集まっていいんじゃないか?」


 フェリクスも当然祝ってやりたい気持ちはあるので、鍛錬後に集まるという事で進みそうだ。

 元より軽めにするつもりだったなら、クタクタで祝うどころじゃないなんてオチにもならないだろう。


「軽めに? そうだったんだ……」


「ひたすら無理したって効率が悪いからな。一晩で全快出来るなら別に軽くしなくてもいいが、それはそれで追い込みが足りてないよなぁ?」


 昨日あれだけ厳しくされたからか、明日は軽めにするつもりだったと聞いてセシリアは驚く。

 しかしフェリクスの説明通り、それでは効率が悪い。

 いくら限界まで追い込むとは言え、無理をし過ぎるのもよろしくない。


 それに次の日には仕事になっている。

 頻繁に揃って時間を作るのが難しく、鍛錬3日で仕事を2日に休みも2日の繰り返しという……なかなか苦しそうな予定を組むのが精一杯だったのだ。


 元々は休みを増やしてやるはずだったが、鍛錬と休日だけでは収入が0なので流石にそれは忍びないだろう。

 誰もが必要な事とは言え、残念ながら鍛えてるだけでは給料は貰えないのだ。



「全快出来ないから! 今日だってだいぶキツイのに、明日なんてどうなってるか……!」


 一晩で全快出来れば……なんて冗談を言う父に、慌てるセシリアは正直に今の時点でキツイ事を伝える。

 やる気はあっても体がついていかないらしい。


「まぁ昨日は俺達もついやりすぎたような気がしなくも無い。今日も厳しくするが、本当に無理だと思ったら言えよ?」


 そこまでキツイか、と考え直したらしいフェリクスは少し優しくなった。

 いくらなんでも娘を苦しめて楽しい筈もない……のだろうか?


 しかし実際昨日は彼らもノリノリだったのは確かだ。

 やはり家族や親しい者を鍛える事に喜びがあって、ついやりすぎたのだろう。


「で、明日の鍛錬後に集まるのはいいとして……どうするんだ?」


 結局話が進んでない事にダリルが突っ込む。祝うと言っても何をどうするのか。


「改めて歓迎の意味も込めてどっか店を貸し切って盛大に祝ってやればいいか?」


「盛大に……そこまでしなくても。シアは多分気後れしちゃうと思うし」


 見た目通り豪快な提案をする団長だが、流石にそんなに祝われ方をしたらシアも引くだろう。

 むしろ逆に気を遣いかねない、とリリーナは止めた。


「んじゃ誰かの家でちょっと豪勢な食事程度にするか……ところで、嬢ちゃんには内緒にしておくのか?」


 せっかくの提案を止められて少し残念そうだ。

 祝いにかこつけて自分もガッツリ楽しもうとしていたのかもしれない。


「それもどうしようかなって。内緒にした方が、こう……ワッーって嬉しくなると思うけど、なんか普通に気付かれそうだし……」


「意外と鋭いからな、あの子は。事前に言うまでは無くとも、ひたすら隠す必要もないだろう。バレたらバレたでいいんじゃないか?」


 そうしたい気もあるが、セシリアとしてはバレるかもと思っているようで、ダリルも賛同している。

 一体何処をどう見たらそんな評価になるのか……シアの言動を振り返ってみてほしい。

 あの歳にしては色々考えているという面がそう思わせるのだろうか。


「どっちにしろ祝うのは変わらん、それでいいだろう。――それにしてもプレゼントか。相談された所で大した答えなんて出ないと思うが」


 なんにしろ祝うのだから、軽く考えていればいいだろうという結論になった。

 決まったのは良いが、フェリクスは彼女へのプレゼントなど全く当てがないので、どうしたものかと悩んでいる。


「鍛錬に真剣だから、服にしようかなって。この間ダメになっちゃったし、普通の服で鍛錬続けてたらもったいないしさ」


「成長を考えたら服ってのも微妙だけど……急にデカくなるわけじゃないし、少し大きめに作れば長く使えるだろうから」


 セシリアとリリーナは先ほど話していて考えを纏めていたらしく、それを語った。

 先日のグリフォンの所為で、シアの服は1着ダメになってしまったし、鍛錬をするのもあって丈夫な服をあげたいらしい。


 お約束とも言えるが、普通の服とは別に魔法生物の素材から作られる……非常に丈夫で軽い上に汚れに強い服が存在する。

 当然ながら防具ではないのだが、戦闘する者にとっては重要である。

 ただし結構お高い物だ。


「作る……そうか、子供用の小さな物なんて無いからな。じゃあのんびりしていられないじゃないか。さっさと注文行ってこい。言ってくれれば多少は金も出す」


 基本的にはあくまでも戦闘用に考えられているので、小さな子供用の物など売っていない。

 わざわざ注文して作ってもらわなければならないのだ。


 とは言え結局は丈夫な服なので、子供用の注文は特別珍しい事でもなかったりする。

 もっと言うなら、体に合わせて作るほうが当然良いので既製品を買わない人も少なくない。


 しかし明日の夕方頃に祝うのなら、今から注文しても間に合うかどうか微妙なところだろう。

 なにせ他の客の注文だってあるはずなのだから。

 なので団長は若干慌てながらセシリア達へ急いで行ってこいと言う。


「え、今? まぁそれもそうか、なら急いで行ってきます!」


「ちょっ……私も行く!」


 今すぐ行けと言わんばかりの彼に少しだけ驚いたが、時間というどうしようもない事情に今更気付いたのかリリーナは走っていく。

 慌てて彼女についていくセシリアだが、注文に2人も要らないのに何をするつもりなのか。


 多分、服だからデザインやらなんやら気になるのだろう。

 話を放り出して、揃って駆け出していってしまった。 

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