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第92話 新しい日常 3 武器はやっぱり憧れだけど……

「ひとまず休憩してな。で、2回目が終わったらちょっと色々試そうか」


「はーい……」


 魔法無しで多少回復するまでは時間がかかるだろう。

 とりあえずしっかり休憩してもらって、後でまた見てやろうと団長が伝えた。


 その後シアはなんとか隅の方まで行って、休憩を続け――しばらく経って再度戦い始めた皆を眺めていた。

 さっきよりも更に苦しい状態での戦い。

 しかしシアにガッツリと見られているからか、セシリアとリリーナはカッコ悪い所を見せられないと必死だ。


 まぁ結局またしてもボロボロになって転がってしまったのだが、シアがそれをカッコ悪いだなんて思う筈も無い。

 タオルや飲み物を持って行っていつもと逆にお世話をしている。


 うっかりセシルの分を忘れてしまい、彼は悲しそうだったが……普段妹が行っているから自分までは、とあまり関わってこなかった所為なので置いておく。

 お兄ちゃんになれるよう頑張るといい。



 やはりと言うか……休憩を挟んだ事でまだまだ余裕なのは変わらない大人達は、彼女達を休ませている間に再度シアを見るつもりのようだ。

 シアを連れて少し離れて、武器の並ぶ所まで来て話を始めた。


「正直、まだ早いとしか言えないんだが……とりあえず武器が使えるのかどうか試してみようか」


「無理はするなよ? 身体強化もナシだ。素でやるんだからな」


 一応確認として、武器を持ってみることになったらしい。

 彼らも流石にシアが持てるとは思っていない。

 それはそれとして筋力の確認にもなるし試してみるのもいい、と団長とフェリクスは気楽な様子だ。

 そして武器に対する彼女の反応を見るという面もある。

 なにせ言い方を変えれば、命を奪う為の道具だからだ。


「それはまぁ……絶対後で大変な事になるしいいけど。皆はそれを素で……?」


 当然彼女は自分の非力さくらいは分かっている。

 そして強化を使えば、後で酷い疲れと筋肉痛で苦しむ事になるのだから、むしろ使いたくない。


 しかし素で扱える物を……とわざわざ言った事から、まさかそのデカい武器は強化無しで持っているのかと恐ろし気に聞いた。


「まさか。俺達は長時間でも強化の負担なんか大して感じない程度に鍛えてあるだけだ」


「いくらなんでもこんなデカい武器は強化無しじゃあ無理がある。まぁ背負って持ち運ぶくらいはとりあえず出来るがな」


 流石にそれは無かったらしい。

 団長の言うように負担は大した問題じゃないと言える体であればいいのだが、そんな人は多くは無い。

 ただし持ち運ぶ時さえ常に強化するというのも不便なので、素で持ち運べるという最低限の基準がある。


「こんな奴らを参考にしなくていいからな。俺のように必要な時にだけ強化を使うってのが普通だ」


 鍛え上げた肉体を持つ2人を指して、細身のダリルは腰の剣を掴みながら一応補足を入れる。

 あくまで武器とは普通に扱える物を持ち、効率良く強化を使うのだ。

 属性に適正があるように、強化にもやはり多少なりとも向き不向きがある。

 それが彼らであったり、一部の種族だったりする訳だ。


「さて、大きな物は無理だろうから……適当にこの辺のを触ってみろ」


 そんな大きな物を持つなんて、恐らく一生無理であろうシアには関係が無い。

 団長はダリルの言葉を流し、如何にも普通としか言えない武器が立て掛けられている場所を指差して言う。

 誰もが想像出来る一般的な剣から、槍や弓と種類も大きさも様々だ。

 シアが最初に手に取ったのは、セシルが使っているような少し大きめな両刃の剣だった。


「剣……うぬぅ……っ……」


 手に取ったとはいえ持ち上げることが出来なかった。

 両手でも無理だったがそれも当然。

 非力だからという理由もあるが、そもそも小さなシアと比較したらかなりの大きさに……というか剣の方が若干大きい。

 何故それを持とうとしたのだろうか。


「無理だ、諦めろ」


 剣の重さで倒れてしまいかねない。

 触れる前から絶対に無理だろうと分かっていたフェリクスがサッと取り上げて軽く窘めた。


「はぁ……じゃあこっちの少し小さい方……ぅう……」


 自分でも無理だとは分かっていたけれど、触ってみたかったらしい。

 中身の男としてはやはり武器に興味があって、目の前にあるのなら持ってみたいと思ってしまうのは仕方ない。

 シアはそのまま隣の剣に移った。

 ダリルが持つようなサイズの、普通の剣としか言い様のない一般的な物だ。


「微妙だな、それじゃまだ振れないだろう」


「強化が問題無く使えれば別に構わないんだがな……使えない以上、素で扱える物に限定されるってのが厳しいな」


 今度は一応持つことは出来たが、それでも両手でなければ無理だ。

 これでは扱えないとダリルが言葉通り微妙な顔で言う。

 身体強化無しで考えるとこんな普通の剣も無理なのかと、団長は頭を悩ませる。

 想像していた通り、見た目通りに筋力が無い。


「じゃあもうこの辺しかないじゃん……」


 残念そうに呟きながら向かった先には小振りな剣が並んでいる。


「短剣が限界か。まぁこういうのも必要ではあるけども」


「小さい物にしておけ。それで戦う奴はあんまり居ない」


 最初から分かっていたが、短剣程度が無難だろう。

 しかしどうせ持つならより小さな物にしろとダリルが言って渡す。


「もう武器っていうか、非常時用のナイフだよ……」


「用途としては大体がそうだしな」


 渡された短剣はもはやサバイバルナイフ程度のサイズだった。

 明らかに戦う為の物では無いとシアはぼやくが、フェリクスが肯定した。


 なにせ敵は簡単に人の命を奪うのだ。

 そんな敵に対し、あえて小さな剣で挑むなどリスクが大きい。

 身体能力に秀で、相当扱いが上手くなければ持つ意味は無い。


 狭い場所での戦いには使えるが、そもそもハンターとしてはそんな不利状況で戦う事自体避けるべきだ。

 基本的に街の外で戦う彼らは、屋内のような狭い場所で戦わない。

 そんな可能性があるのは、街の中を護る警邏隊だ。


 つまりハンターにとってはまさに非常用の刃物でしかない故に、最低限小さくて良いという訳だ。

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