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第84話 戦いの後で 4 皆で1歩

 シアを寝室へ連れて行ってからしばらく経って、セシリアとリリーナが戻って来た。

 ルナはやはりシアの元に居るようだ。

 リビングに入って来た2人は、先程までとは違いどこかスッキリしたような……それでいてキリッとした表情だ。


「戻ったか」


「良い顔になったじゃないか」


「シア様様だな」


 彼女たちの様子を見て、大人3人が口々に言う。

 やはり安心した表情からも、心配していた事と結果を喜んでいる事が見て取れる。


「うん……完全にこれで大丈夫なんて言い切れないけど」


「少なくともウジウジするのは終わり。だから……」


 ひとまずは見つめ直して前を向けただけだ。

 至極単純な話だったが大きな1歩。

 彼女達はそう言ってから、同時に強く大きな声を出した。


「「私達を鍛えてください!」」


 団長に、父に、師匠に、これまで以上の本格的な鍛錬と教育を熱願した。

 今までだってそれなりにやってきてはいたが、彼女たちはまだまだ若く未熟故に……比較的ゆっくり鍛錬をしてきた。


 リリーナはダリルを師として学んではいたが、やはりそこまでレベルの高いものではなかった。

 同じエルフ且つ同じ属性で才能を見出したから、他の者よりも重点的に教えていたに過ぎない。


 しかし今……子供だから未熟だからと相応のモノではなく、それ以上を望んでいるのだ。

 それが彼女達の決意。


「ただハンターとしてだけじゃなくて、もっと色んな事を……!」


「どれだけ厳しくてもやり遂げて見せるからっ」


 ただ戦うだけのハンターではなく、様々な事をより一層学ぶ為。

 そう言ったセシリアの言葉を継いでリリーナが覚悟を誓った。


「おう。端からそのつもりだ。心身共に叩き直して強くしてやる」


 対し団長は最初からそのつもりで考えていた。

 そうしてやらねば彼女達は満足して進めないと分かっていたから。


「言っとくが、お前達から望んだ以上……相当厳しくするからな」


 少しだけ意地悪そうな顔でフェリクスが言った。

 自分達で決めて望んだなら、予定よりもずっと厳しくして大丈夫だろう。

 隣でダリルも同じ顔をしている。


 きっと、成長して前に進もうとする若者を見るのが、大人として嬉しいのだろう。


「っ……当然!」


「ゆっくりでもいい、諦めないよ」


 そんな意地悪そうな……嘘でも冗談でもなく本当に厳しくするだろう大人に、ほんの少しだけ怯んだ2人だったが、決意は変わらない。

 もうブレない。


「よく言った。――セシル、お前も混ざれ」


 満足そうに頷いたダリルは、セシルを見てもっと意地悪な顔をして言う。

 どうせなら一緒にしてしまった方が良い。これも良い機会という事だ。


 なにせ彼らはギルドのトップ3。

 本格的に厳しく鍛えるなら短時間では無理だが、頻繁に揃って時間は取れないのだ。


「えっ? いや、まぁ勿論鍛えてくれるというなら是非お願いしますけど……なんか温度差が」


 一方、自分は自分でどうにかしようと考えていたセシルは驚いた。

 基本的に忙しい彼らに直接鍛えてもらえるのは貴重だ。

 鍛練は殆どの場合、ギルドで多くの人が共に鍛え合う。ダリルとリリーナのように、師弟というのが珍しいのだ。


 父であるフェリクスにさえも、あまり本格的には鍛えてもらっていない。

 日々の仕事で疲れている父に教えを乞う事に多少の遠慮をしていた面もある。

 だからこそ彼はその言葉を喜んで受け入れた。若干態度が気になるが……


「お前に優しくしたって仕方ないだろう。こいつらよりもっと厳しくいくぞ」


「俺は父だからと手は抜かんぞ。むしろ……精神的に多少なりとも成長したのなら期待出来るというものだ」


 セシリア達に関しては、いくらなんでも急に馬鹿みたいに厳しくしたって無理があるが、セシルは別だ。

 既にそれなりに実力があって意識も高いのだから、当然と言えば当然か。


「分かったよ。望むところだ、と言っておこうかな」


 なんにせよ、遥か高みの者から直接鍛えてもらえるという時点で文句も言えない。

 きっとフェリクスの言う通り、これから彼は大きく伸びていく事だろう。

 それは鍛える側としても嬉しくて楽しいものだ。



「しかし嬢ちゃんも強くなりたいとはな。どう強くなろうってんだ?」


 話が一段落ついた所で、団長が思い出したように呟く。

 シアもまた、強くなりたいと渇望していたが……少し無理がありそうだ。


「体は弱く、小さいというかそもそも幼い。適正も無い。あの子には悪いが、何か案があるか?」


 強くなりたいにしても、正直問題が多すぎる。

 フェリクスはあえてハッキリと言葉にしながら考えてみたが、全く思いつかなかった。


「どうせ話す予定だったし、場も整ってるからちょうどいい。それについてはちょっと話がある。」


 と、ここでダリルがなにやら話があると言った。シアの力についてだ。

 すぐに話すつもりだったのに、そんな状況ではなかったせいで話せなかったが、これでようやく伝えられる。


 そこから彼は詳しく語り始めた。

 どういう力か、どれくらいの消耗か、そして恐らく新しい属性である事まで全て。


 そして何より、彼は相談して決めたかった。

 彼女について、彼女の力について……どう対応すべきかどうかを。

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