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第83話 戦いの後で 3 大人で在るように

「結局、嬢ちゃんの言葉が一番効くよな」


 寝室へ向かった彼女達を眺めながら、団長がしみじみと呟いた。

 彼らがどれだけ言おうが、シアの言葉の方がよっぽど効果があるのは事実だ。


「流石にこれで解決だろ。俺達が話す必要なかったかもな」


「シアにあんな姿見せられないと思っての話だったのに、これじゃあな。別に纏まってくれたなら良いんだけども」


 彼女が目を覚ますまでにどうにかしようと思っての事だったのだが、結局シアの言葉でどうにかなってしまった。


 良いか悪いかで言えば当然良いのだけど……フェリクスとダリルは、自分達で上手く終わらせられなかったせいか微妙な顔をしている。


「僕も一層厳しく鍛錬を積まなきゃ。さっきはああ言ったけど、正直かなり心苦しかったのは事実だし」


 幼いシアさえ強くなりたいと言ったのを見て、セシルはより強く思ったらしい。


 彼もまた、相当な無力感に潰されかけたのだ。

 セシリア達よりは少しだけ、大人だったに過ぎない。



「はぁ……なんだかなぁ、私はどうすれば良かったんだ。何も出来ずにいて怒られて、子供に諭されて、結局答えも出せない。頭では分かっているのに……」


 あの時何の力にもなれず、思い悩む2人に何も出来ず。

 2人とはまた少し違った理由で沈んでいたリアーネは未だ……いや、むしろ余計に落ち込んでしまっている。


 強くなるという単純な答えを出した2人と違って、彼女はその答えは出せない。

 誰でも魔法が使えると言っても、当たり前だが戦いには向き不向きがある。

 この中で唯一戦えないリアーネは、まるで自分だけ取り残されたように感じてしまった。

 

「戦いに関しちゃ門外漢のお前が気にする事じゃない……てのも分かってるんだもんな。なんでもかんでも出来るわけが無い。家族、姉として支えて見守るしか無いだろう」


「家族として、なんて自分以外でも出来る事だからって悩んでるんだろうけどな。難しいもんだ。魔道具技師としても何か考えてみたらどうだ」


 そんな彼女に何か言ってやりたいと、団長は考えながら話す。

 ダリルも先程は厳しく言ったが、まさかシアが出てくるとは思ってなかったのだろう。 

 予想と違う展開になったからか親身になっているらしい。


 戦えないのなら家族として支えていくしかない。

 それは彼女だって分かっているし、それは彼女ではなくても出来ると思ってしまうのだ。

 別に他の人が出来るからといって彼女が要らないわけもないのだが……

 それでも探すなら、逆にこの中で唯一の魔道具技師である事で何か出来るかもしれない。


「戦えなくとも力になれる物を作るとか? 既に色々と有るからそれはそれで難しいだろうけど……シアちゃんの為になる物を作るとか、喜ぶ物を作るとか良いんじゃないかな」


 セシルも同じく考えながら、助けになりそうな案を出していく。


 彼だってリアーネが心配だ。

 早く立ち直って欲しいと真面目に思っている。


「それくらいしかないか……混乱していた頭じゃ、それらしい物は思い浮かばなかったけど。とりあえず意識を切り替える努力をして、一から考えてみるよ」


 どうやら自分に出来る事から考えてはいたらしいが、ぐちゃぐちゃな頭ではどうにもならなかったらしい。

 ひとまずは冷静に思い直す事にした。


「まぁなんにせよ、お前もまだまだ子供ってことだな。大人振るばかりじゃなく、本当に大人として成長する機会だと思え」


 団長はずっと年上で人生経験もあるが、根っからの武闘派だ。

 残念ながらリアーネの悩みに答えを出せる経験は無い。


「俺達だって明確な答えなんか出せやしない。それでも堪えて受け入れて、前向いて歩くのが大人だ」


 それでもただ大人としての言葉を続ける。

 後ろを付いてくる者の為に、どうにかこうにか前に進むのが大人なんだ、と。


「分かってる……情けない姿は見せなくないからね。頑張ってみるよ」


 大人でありたいリアーネからすれば、きっとその言葉が一番効いたのだろう。

 強がりにしかならなくても、悩みながらでも前を向こうと、立ち止まるのは止めた。


「その辺りは僕も同じだ。目の前に3人もお手本が居るからなんとかなってるだけで、自力じゃどうしようもなかっただろうしね」


 解決まではせずとも、立ち直ってくれそうな様子に安心しながらセシルが打ち明ける。

 元より戦う道を選んで、目の前の男達を目標に進んでいたから悩まずに済んだだけだ。

 そうでなければ彼もまた潰れていただろう。


「お互い、頑張ってみようじゃないか。大人になったつもりじゃなく、ちゃんとした大人になれるように」


「そうだね……本当に」


 もういつまでも子供でいられない。

 大人として歩いていかなければいけない。


 そう改めて強く実感した2人は、顔を見合わせて少しだけ笑った。

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