第82話 戦いの後で 2 皆で成長
「ねぇ……」
シアだ。
目が覚めたのは偶然……むしろすぐにまた意識を落としかけていた。
しかしなにやら穏やかではない様子に気付いて、フラフラの体を起こしてなんとか歩いて来たらしい。
ルナが心配そうに、それでもシアのしたい様にさせる為、止めずに小さな体で支えてあげている。
小さい故に支えきれてない気がするが、それを言うのは野暮だろう。
「シ、シア……!?」
「起きて……いや、無理しちゃダメだよ!」
流石にセシリア達も驚いて駆け寄ろうとした。
しかし、普段からは想像しづらい真面目な表情で……よろよろと歩いてくるシアと、隣で同じ表情をしながら首を振るルナの様子から思わず止まってしまった。
団長達も心配そうだが、彼女が話を聞いていて何か伝えたい事があるのだと察して黙って見ている。
「あのね、私も……全然ダメだなって思い知ったよ。すぐ疲れるし、魔力無くなっちゃうし、壁しか作れないし。殆どなんにも出来ない。護られるしかない。お母さんだって……」
シアこそ自分の無力さを酷く痛感していた。
そもそもコンプレックスの塊で、しかも命を賭して母に護られたという過去に苛まれていた。
その精神的苦痛は、今回のセシリア達の比ではないだろう。
だけどどうにかこうにか前を向いて、唯一出来る事だけを見つめて頑張って来た。
そうして明るく元気な子として生きている。
「私も散々、余計な事を考えるなって言われてきたけど……お姉ちゃん達はちゃんと分かってるんでしょ?」
この街に来てからの数日で何回も言われた。
分からないまま自覚のないまま、余計な事を考えてばかりで馬鹿だった。
でも彼女達はそうじゃない。しっかり理解しているけれど立ち止まってしまっている。
さっきまで眠っていたシアに、それは分かる筈も無い事だが……彼女はそうだと信じている。
だからその背中を押してあげたいと思ったのだろう。
団長が言った通り、自分を愛して護ろうとしてくれる人達が、自分の所為で後ろを向いているのは嫌なのだ。
あえて『お姉ちゃん』と呼んでまで強く気持ちを伝えようとしている。
「私は大丈夫だったんだから、護れなかったなんて責めないで。そんなの私は嫌だよ。護るとか護れないとか、自分達だけで悩まないでよ! 皆同じでいいじゃん! 私も強くなりたい……一緒に強くなろうよ! それでいいじゃん!」
何か伝えなければとは思っても、具体的な言葉までは考えていなかったのだろう。
つい昨日のルナの様に……思いつく限りの気持ちを伝えるシアは必死だ。
いつまでも護られてばかりなのは歯痒いが、シアの体と能力、立場からして仕方ない。
しかし護られる側なのは変わらなくても、隣で一緒に進むことは出来る。
そんな気持ちを精一杯伝えるシアの姿は……全部分かった上で沈み込んでいたセシリア達を、無理矢理にでも前に向かせるには充分だった。
むしろ団長達の激励でひとまず立ち直りかけていたのだから、このタイミングで効果覿面なんてものではないだろう。
「うん……そうだね……」
「分かってる……分かってるよ、シア。ただちょっと、気にし過ぎただけ。……ありがとね」
大人達に厳しく言われ、シアからさえもここまで言われては……もはや悩みなど振り切って置き去りに出来た。
自分達が護りたいと思うシアにこんな事を言わせてしまった事を恥じた。
まだ全然回復していないのに起きてきた上に、声を張ったせいで息が荒れているシアを2人は抱きしめる。
少なくとも立ち直れたのだから、きっとこれで彼女達は大丈夫だろう。
このまま起こしていても体に良くないので、一言二言話してから再度シアを寝室へ連れて行った。
ベッドに入るとすぐに寝息を立てて寝始める。
やはり無理矢理起きてきたのだろう。
申し訳なさを感じると共に、そうして想ってくれた事を嬉しく感じたセシリアとリリーナの表情は――さっきまでとは確実に変わっていた。




