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第79話 急襲 2 異常な行動

 門の外で出来る限り全力でグリフォンを迎え撃った討伐隊だが、多少の攻撃を浴びせる程度で空高く逃がしてしまう。


 20人を超える集団では身動きが取りづらい。

 本来は複数の隊に分かれる筈だったのに、急な襲撃だった為スムーズな連携が出来なかった。

 奴を捕らえる牽引具を素早く正確に撃てなかったのだ。

 そうなれば遠距離からの攻撃しか出来ない。


 それでも攻撃は当てていたのだ。なのにも関わらず、追撃を避ける為に――いや、とある狙いの為に。

 グリフォンは脅威である筈の討伐隊を無視して越え、攻撃を受けて尚、街の上空へ進んだ。

 それはあまりに異常な行動であった。




 雄叫びが上から聞こえた。

 そして街の中へと急降下してくる。目標地点はシア達だ。

 グリフォンは山での戦いを覚えていた。

 自分をここまで追いやった原因である彼女達を目の敵にしているらしい。


 先ほどしっかりとその姿を捕らえた奴は、討伐隊を無視して彼女を狙った。

 元より酷く気が立っていた事もあり、奴もまた冷静ではないのだろう。


「嘘!?」


「なんでいきなりこっちに来るのよ!?」


「ちっ、運が悪すぎるだろう」


 セシリア達は揃って驚愕の声を洩らす。

 向かってくるグリフォンに恐怖を感じるが、仮にもハンター。

 未熟だろうが護るべき人達の前で戦わない選択肢など無い。

 リアーネもまた、戦いなど出来ないが大人として子供を護るという信念で立ち向かう。


 しかし彼女達が動き出すよりも僅かに早く、奴は大きく翼を羽ばたかせ魔法による暴風を巻き起こした。


「きゃあっ!」


「くっ……」


「うわっ!」


 単純な突風。

 しかし強烈な空気の塊を叩きつけられて、逃げていた周囲の人達も揃って転げてしまう。これだけでも怪我人がいくらか出ただろう。

 セシリア達3人もギリギリで身体強化を使うものの、体勢を崩してしまった。


「わっ!?」


 そして誰よりもずっと小さく、しかも宙に居たルナは不覚にも大きく吹き飛ばされた。

 以前の戦いではシアが護ってくれていたが、今のシアは疲れて障壁など使えない。

 その一瞬の判断が遅れてしまったせいで、咄嗟に魔法でどうにかしようにも間に合わなかった。


「ルナ! わっ、わぁー!?」


 ルナが飛ばされたのを見て叫ぶが、シアもまた小さく軽い。しかも体に力が入らないのだから、当然転がっていく。

 先ほどまで繋いでいた手を一旦離してしまっていたのが裏目に出てしまった。


 3人は体勢を崩し、ルナは飛ばされ、シアは1人離れている。

 シアとルナへ恨み……と言っていいのか、敵意を持つ奴がそんなチャンスを逃す筈も無かった。


「マズイ……!」


「シアちゃん!」


「やめろぉ!!」


 離れた3人が体勢を立て直した瞬間にはもう、シアへと近づいてしまっていた。


 土や石の壁で護ろうにも、地属性に適正のあるリアーネは戦闘など出来ない。土壇場での判断を求めるのも酷だ。

 いや、どちらにしろ強度と速度を重視した壁を作るには、離れていて難しく間に合わないだろう。


 せめて注意を引ければと揃って魔法を飛ばす。リアーネは地、セシリアは水、リリーナは雷。

 尖った石を飛ばし、圧縮した水の弾を撃ち出し、強烈な放電をお見舞いする。

 しかし傍のシアに当たらないように意識しなければならなかったせいで効果が薄かった。


 彼女達が悪いわけではない……焦った上に一瞬の判断で精密な制御をするなど、相当な実力者でなければ無理なのだ。


「っ!?」


 シアはなんとか咄嗟に障壁を作り、グリフォンの大きな鉤爪を防ぐ。

 金属でもないのにギラリと鈍く光り、恐ろしく鋭い。小さく華奢な彼女など簡単に切り裂いてしまうだろう。


「っく……あっ!?」


 しかし障壁は1秒と持たずガラスのように砕け散る。

 元より魔力を使い過ぎて寝込んでしまっていたのだから、無理して咄嗟に使ったところで普段より格段に脆かった。


 使い慣れた自信のある護りだ、避ける判断など出来なかった。

 そもそも素早く動く事も出来ないのだから、他の対抗策は無かった。

 故にそのまま、障壁を砕いた恐爪は勢いを緩めることなく、シアを襲った。

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