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第76話 戦闘準備 7 お見送り

 そんなこんなでギルドを出て東門に向かった。

 どうやら討伐隊は門の外に居るようだ。

 門周辺には関係ない人達も多く居るし、同じく見送りに来たらしい人も見受けられる。


 門は基本的にかなり広々としている場所だが、流石に20人以上の隊と物資を集めるのは邪魔になるのだろう。

 馬や大型の魔道具もある。討伐したグリフォンは良い素材になる故に運ぶ為の物だって必要だ。


 ちなみに、20人以上と言っても同時に戦う訳ではない。

 そんなのは邪魔過ぎて戦いどころではなくなってしまう。

 ある程度進んだ所で、いくつかの隊に散開するのだ。



「あれ、東門って言っても中じゃなくて外だったか……」


「別に外に出たからっていきなり危なくなるわけじゃないしいいでしょ」


「それもそうか。まだ出発してなくて良かったな」


 外に集まっていることまでは知らなかったリアーネは声を洩らした。

 見送る為とはいえ子供を外へ行かせるのは……と考えてしまったらしい。

 しかしそれは考え過ぎというものだ。

 いくらなんでも街から出た瞬間危険になる筈も無い。少なくとも周辺は安全だ。


 リリーナに言われて、そんな当たり前のことに気付いたらしい。

 過保護になると細かい事が分からなくなるのかもしれない。

 まぁ、戦わない者にとって街の外は危険という認識でいるべきではあるが。


「うん、間に合って良かった。――それにしても、この門の先は道が無いんだね」


 歩きながら会話に応えたが、街道が無い事に気が付いたシアが呟く。門と街道はセットだと思っているのだろう。

 しかしシアが知らないだけでそういう門は他の街でも割とあるどころか、故郷のアルピナさえ1つはそうだった。


 街を覆う壁は防衛の為にも、出来るだけ門を減らしている。現在は東西南北の四つが分かりやすいので主流だ。

 ただそれでは万が一門を崩されたら街から脱出しづらい。

 なので外壁には普段は閉じている非常時用の小さな門がいくつもある。これもまた過去に学んだ物だ。


 ともかく、その方角に街道を作る必要が無い立地は珍しくも無い。

 なにより街道は整備がなかなかに大変なのだから、無駄を減らすのは当然と言える。


「この先は山脈だからね。あの山を通す道なんて維持が難しい。それに、仮に今更作ったところで……何処にも繋がらない」


「そっか……ここから東って……」


 シアの疑問にリアーネが答えてくれたが、最後は少しだけ言いづらそうにした。

 この門の先、山脈を越えるとシアの故郷があったのだ。

 どうにかこうにか道を通したとしても、繋がる街が無いのでは意味も無い。

 

 色々と無駄に察して少しだけ空気の沈んでしまった一行だったが、ルナが気を使って声を上げた。

 門の外に出た所で、団長達を見つけたのだ。


「あ、団長だ。おーい!」


 ルナの元気な声はよく響く。ざわついている中でもすぐに気付いてくれたようだ。


「ん? なんだお前ら。こんなとこまで来てどうした?」


「見送りか?」


「まぁね」


 隣に居る父に見送りに来た事を聞かれ、照れくさそうにセシリアが言う。

 微妙なお年頃というやつだろう。


「なんだ、あんな事言ってたのに結局来てくれたのか」


「別に。シアが見送りたいって言うから来てやっただけ」


 見送りなんてしない、と言っていたリアーネが来た事に気付いたセシルが、わざわざ近寄ってきて揶揄う。

 流石にあんな言い方をしたからか、こっちもこっちで照れくさそうにしている。


「起きてしまったのか。ここまで歩いてくるのもつらかったんじゃないか?」


 一方ダリルは、シアが起きてここまで歩いてきたことを心配する。

 彼女が相当酷い状態だったのを知っている彼としては気掛かりでしかないだろう。


「一応今の所は大丈夫。心配かけてごめんね?」


「大丈夫なら良い。無理だけはしないようにな」


 心配してくれているのを理解しつつ、やはり強がる。

 だいぶゆっくりと歩いて来たからマシなのは確かだが、どちらにせよつらいものはつらい。


 ダリルにも彼女の強がりと誤魔化しは分からない。

 と言っても、ルナでさえ見逃しかけるものだ。今の所、走ったりしない限りは誤魔化せるだろう。


「やらかした奴が言うことか」


 無理させておいてそんな事を言うなとフェリクスが突っ込んできた。

 どうやら彼にも伝わっているようだが、こっちでもダリルとセシルがやらせた事になっているらしい。


「ぐ……俺は……はぁ、いいだろう、反省したって事だ。それ以上触れないでくれ」


 反論したいが何も言えない。

 シアが自分の意思で無理をしたという事を内緒にしているからだろう。


「え、あれは……」


 彼が代わりに怒られていた事を察したのか、シアは正直に伝えようとした。

 しかしそんなシアの頭にポンと手を乗せて笑うダリルに、そのまま言い切る事は出来なかった。

 セシルも同じようで、シアと目が合うと頷いた


「……ありがと」


 好意にしろなんにしろ、庇ってくれたのをわざわざ訂正するのも悪い。

 そのまま受け入れて小声で素直にお礼を言った。


「まぁ今後は気を付けろよ? お前は夢中になると視野が狭くなるからな」


 尚もフェリクスがお説教。

 というよりは、当のシアがこうして歩いてここまで来ているのを見て、問題無さそうだと判断しての軽口だ。


「分かってる、子供の前で説教はやめてくれ……」


 しかし流石に軽口だろうと子供の前で怒られるのは堪らないらしい。

 不憫な男である。


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