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第73話 戦闘準備 4 そりゃそうだ

「それなんだけどさ。ルナ、あまりシアに治癒魔法を使いまくるのは止めたほうがいいかもしれない」


 しかしそんな話に口を挟んだリアーネ。

 治癒魔法を頻繁に使う事に何か思う所があるらしい。


「え、なんで?」


 今まで2年以上もの間、当たり前にやっていたのだ。

 まさか止めた方が良いなんて言われるとは思っておらず、ルナは驚いて聞き返す。


「ルナが止めちゃったらシアちゃんは……」


 セシリアも、彼女がどれだけシアを気遣っているか……そのお陰で元気なのだと考えているので思わず口に出した。


「それだよ。ルナが癒してくれる事に慣れてしまっている。あいつらも言っていただろう? この子は体が弱いって事を忘れるくらい元気だ。普通、体が弱ければあんなに明るく元気に振舞えない」


 至極単純な話だ。ルナがいつも癒してくれる事に慣れ過ぎた。

 普通、体が弱いなら弱いなりの生活をする様になる。

 なのにそんな気が全く無いのだ。


 それは彼女の性格でもあるし昔からそうだったのだけど……少なくとも現状はリアーネの言う通りだった。


「ルナが助けてくれるからって、それに甘えて元気一杯ってこと?」


 リリーナはあえてきっぱりと言い直した言葉で確認するが、まさにその通りだ。

 もっと悪い言い方をするなら、シアはルナに依存している。

 精神的にもそういった面が無いとは言えないが――身体的な意味では確実に依存してしまっている。


「ああ。なにせ私達だって、この子がどれくらい体が弱いのか知らないじゃないか。その辺りの事を気にせず過ごしてきたけど……ルナの魔法がある事を当たり前に考えていいわけじゃない」


 彼女達も誰一人としてシアの体の弱さを詳しく知らない。

 目に見えてそういった事が無かった故に気にせずに済んでいたが、それがそもそもおかしかったのだ。


 毎日のように魔法で癒される事を当然の事とする……そんなのは相当な重病人の扱いだ。

 病気でもなく体が弱いだけのシアが、それを当たり前に感じてしまうのはよろしくない。


 ちょっと疲れを癒すだとか、軽い怪我を治すだとか、その程度は適正が無くとも誰でも出来る。

 それでも毎日頻繁にはやらない事だ。

 高いレベルの治癒魔法を常に、なんてまずあり得ない話である。


「確かに……良い事ではないかも」


 言われて確かに、と納得したセシリア。反論する余地が無い。


「……そっか、あたし過保護だったのかな」


 同じく返す言葉が無かったルナ自身も、自分のしてきた事を振り返ってしょんぼり呟く。


「勘違いしないでね。ルナのその気持ちは何も間違ってないし、事実シアはずっと助けられてきたんだろう。ただそれを少し……本当に必要な時以外は控えた方が良いかも、って話だ」


 ルナを責める気など無いリアーネは、しっかりとフォローしつつ…少し治癒魔法を抑えるようにした方が良いかもしれないとだけ伝えた。


「弱ってるシアは見たくないし、元気なシアと一緒に遊びたいからそうしてたけど……確かにずっとそんな事してたら、シアの体も良くならないかも」


 魔法に依存した体と言われると良い想像は出来ない。

 ルナも流石に思い直したようだ。


 改善しようとシア本人が意識し始めたのだし、合わせて魔法を抑えて体を本来の有り方にした方が良いだろう。


「回復してくれるのが当たり前だったら、体は勝手にそういうものだと認識してるかもね。体は強くならなくて、いつまでも弱いまま変わらない可能性はある」


 外部の力ですぐ回復される事に慣れた体は、シアの意識と関係無くそういうものだと勝手に覚えてしまう。

 筋肉だって負担を受けて成長するし、使わなければ衰える。必要無ければ強くはならない。それと同じ事だ。

 常に回復される体は、改善する必要性を感じてくれないのだ。


「まぁ、調べたり聞いた事は無いから分からないけどね。ただ、恐らく正しいんじゃないかと思うよ」


 リアーネの話は推測だが、それは正しい話だ。

 多少専門的な知識なのでこの場では誰も知らないだけである。

 そしてシアが頻繁に魔法で癒される事を知っているのもまた、この場に居る彼女達だけだった。

 恐らく団長あたりが聞いたなら、すぐに止めさせていただろう。


「分かった。ちょっと気を付けてみる」


 そう言って話を纏めたリアーネに、ルナは素直に頷いた。

 貧弱なシアにはつらいだろうが、これからは控えめにする事に決めた。

 それが彼女の為になるなら……と。

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