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第71話 戦闘準備 2 少女達の悩み

「全くもう。分かりました、どうせ討伐が終わるまで待機だし……」


「待機とは言うけど、どうせ今日はこれで仕事終わるだろうし、シアとの時間が出来て良かったと思いましょ」


 いつまでも責めているよりさっさとシアの所へ行く方が優先度が上らしい。

 なにより思わぬ時間が出来て若干喜んでいる。


 今は昼過ぎ。

 例え早く討伐されて待機が終わったとしても、そこから再度仕事で外に行くには中途半端な時間だ。

 そういう場合はそのまま仕事は終了となる。


 なにせ街の外は街道にしか灯りが無い。

 暗くなっては真っ黒な魔物など見辛くて敵わない。

 魔法を使おうと、灯りを持っていようと、暗くなる前に街に戻るのが基本なのだ。


「そうだね。――多分そろそろ出発だよね、気を付けてよ?」


 討伐隊の出発が近い事を思い出したらしく兄を見ながら言う。

 怒ってはいたがそれはそれ……家族の心配は当たり前にしているようだ。


「準備は出来てるけど、まだいくらか戻ってない隊がいるからもう少しかな。まぁ無理はしないさ。自分に出来る事くらいは理解してる」


 心配されたセシルは相変わらず気負わず構えて安心させる。

 そういうところは兄らしく立派だ。


「俺達もコイツに無理はさせるつもりはない。グリフォン1匹程度、何の問題も無いさ」


 ダリルも当然の事のように語る。

 こうして自然体で自信を持っていられる彼のような実力者が居るからこそ、セシルも心構えが出来ているわけだ。


「私も参加して経験したかったけど……流石に足手まといにしかならないからなぁ」


「凄いなぁ……私は全然……」


 技術はあれど、実戦でそれを発揮できないリリーナは自分に必要な物を理解している。

 故に経験の為に参加を考えたが、自身の力量も同じく理解している為控えたらしい。

 そもそも団長達に参加させる気は無さそうだったが。


 対してセシリアはそんな考えも無かった為、親友の直向きさを知り尊敬した。

 彼女は最初から、力量を理解するまでもなく自分には絶対無理だと諦めていたからだ。


「あんたは自信つける為に参加した方が良かったかもね」


 それはセシリアの自信の無さからくるものであり、リリーナは彼女のそんな面をちゃんと分かっている。

 冗談交じりに言うが、無理矢理でも強大な敵に立ち向かわせるのはある意味効果的かもしれない。


「それは確かにそうかもしれないが飛躍しすぎだ。段階を踏め」


 年長者たるダリルからしても、そういった荒療治に似た対応もアリと考える。

 ただし流石にいきなりグリフォンはナシだ。せめてもっとマシな敵にするべきだろう。


「セシリアは自信さえ持てれば変わるんだけどね。伸び悩んでるみたいだし……シアちゃんに良いところ見せるって考えれば多少頑張れるんじゃないかな」


「う……でもそうかも。カッコ悪いとこ見せたくないしね……頑張ろうかな」


 兄から見ても同じらしい。

 しかし今はシアという溺愛し護りたい者がいる。ならば意識も変わっていくだろう。


「あの子は多分そんな事は気にしないだろうけどね。意識としては良いんじゃないかな」


 今日一日でダメな所をいくつも見せてしまったリアーネは、シアがそんな事を気にしないでいてくれる子だと知っている。

 それはそれとして、意識としてはなんら問題無いし良い事だ。


「お前らはまだまだ子供だ。どんどん経験を積んで成長していく時期なんだから、焦らず色々悩んで進め」


 この場で一番の大人だったのに怒られてばかりだったダリルは、とりあえず大人らしく良い事を言ってやろうと口を挟んだ。

 まぁ確かに言う通りである。


「私ももうちょっと頑張ろうかな。どんどん鍛えて経験積まなきゃ…」


「お前は特にそうだな。ま、本当に焦る必要は無い。」


 リリーナは歳を考えれば技術もセンスも飛び抜けているが……あくまでそれだけだ。

 実戦では歳相応の未熟な実力しか出せないのが悩みである。

 それこそ本当に鍛錬と実戦を繰り返して経験を積んでいく以外に無い。


「ほら、着いたんだからやめやめ。入るよ」


 そんな話をしているうちにシアの眠る団長室に着いた。

 いつまでも実力がどうの経験がどうのと話していたって仕方ない。


 リアーネは戦闘に関しては門外漢だ。魔法の腕はそこそこではあるが戦闘などどういったものか正直分からない。

 戦う者達の悩みも曖昧な想像しかできない為、助言も出来ず力にはなれないのは歯痒いらしい。


「僕たちは様子だけ見て戻るよ。流石にそろそろ集合しないと……」


 出発は近い。多少早いらしいがもう集合していた方が良いだろう。


「ああ、そうだ――彼女の力については今日か明日にでも皆を集めて話をする」


「うん、気になるけど待ってるよ」


 ダリルは忘れないうちに伝えておきたいと思ったのか、シアの力についての話を約束した。

 わざわざ皆を集めて話をする程の事かと察したリアーネは素直に受け入れ、会話をしながら団長室の扉をそっと押し開けた。

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