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第67話 答え 1 たった1人の違うモノ

「そういえば……ダリルさん、私の力の事、何か分かった?」


 散々調べて考えていた彼が既に色々と分かっているだろう事はシアにも察せる。

 このままでは聞きそびれてしまいそうだと思ったらしい。


「ああ、分かったけど……今か? まぁ聞きたいならいいか」


 ダリルとしてはわざわざこんな状態で聞かせるよりも、今は寝て休んでもらって次の機会にと思っていた。

 まぁ本人が聞きたいと言っているのだから構わないだろう。


「うん、お願い」


 シアは自分では分からなかった事が、なにかしらようやく分かるんだと、真面目な顔でお願いする。


 ダリルは懐から先ほどのメモを取り出して確認した後、1つ咳払いをして真面目な顔になり口を開いた。


「シア、君の障壁は魔力障壁ではない。そもそも魔力じゃなく、属性エネルギーだ」


分かりやすいように、ゆっくりと話し始める。


「魔力から変換して作り出された物質だ。だから意思のままに動かして形を作れる。水や氷、地属性の魔法だってそうだろう? つまり、君のそれは属性魔法だ」


 シアの障壁は一般的な魔力障壁の進化だと思っていたが、それは間違い。

 属性魔法なのだという。


「え? でも私は適正が……」


 魔法を学んだあの日、何回調べても適正が無かったのは確かだ。

 それにどの属性にも合わない物質だ。

 流石に理解が出来ず、思わず否定の言葉を洩らす。


「違う。適正が無かったのは既存の7つだ。君の適正は――新しい8つ目の属性だったんだ。そうとしか考えられない」


 それは本来この世界に無かった属性。

 彼女が気付かなかったのも無理はない。


「嘘!? あたしそんなとんでもない事に気付かなかったの!?」


 むしろ精霊ともあろうルナがずっと見てきて気付かなかったのが不思議なものだ。


 あえて理由を語るなら……ルナはシアの力を知る前に、異世界から生まれ変わった事を聞いた。

 その後で、適正を持たないが壁を作れるという説明をされた為、彼女が普通ではないそういうものだとあっさり受け入れてしまったのだ。


 そもそもシアを助け世話をしたのも、異世界からの魂であるという、なんとなくの違和感への興味から始まっている。


 シアは普通ではない。

 その先入観故の思い込みだった。


 あとは単純にルナが色々考えるタイプじゃなかったからというのもあるが……まぁつまり、あまり深く考えないお馬鹿だったという事だ。



「きっと俺以外が調べても同じ結論を出すだろうよ。前例が無い以上、8つ目の属性だという確証は無いが……確信はある」


 恐らく、ルナのような先入観を持たずにじっくりと障壁を調べたなら、ある程度知識があれば辿り着く結論であった。


「これは凄い発見だ。まさか新たな属性が見つかるなんてな。誰とも違う特別な存在だ。公にしていいのか分からないくらいには、とんでもない事だ」


「まさかそんなことが……凄いとしか言えないな」


 ダリルは語りながら興奮が戻ってきてしまったらしい、それも仕方ないだろう。

 彼のような研究者気質な者が歴史的な発見をしたのだから、落ち着けと言う方が無理がある。


 セシルは逆に落ち着いている、というか言葉が見つからず呆けている。

 いくらダリル程詳しくない彼でも、これが一体どれほどの事なのかは想像できる。


 しかしこの事はどう扱えばいいのか、難しい問題だ。


「新しい属性……」


 シアは全く予想もしていなかった答えを示されて困惑している。


 誰とも違う――自分だけが違う。

 それはきっと、違う世界から生まれ変わったから。

 本来この世界に存在するモノではなかったから。



「正直、この事は公にするべきでは無いと考えている。途轍もない発見ではあるが……他に前例も似たような話も存在しない以上、やたらと広めるものじゃない」


 ダリルは物凄い発見をした事に興奮はしつつも、それを公開したらどうなるのかを冷静に考えていた。

 新たな発見など、良い事にも悪い事にもなるのだから。


「そうですね。聞いても信じないでしょうし。僕だって今日ここに居なければ信じるわけがない」


 セシルの言う通り、直接見て説明を受けなければ誰も信じないだろう。


「それでシアに注目が集まったり、調査だのと面倒な事に巻き込まれるのも可哀想だ。世界でただ一人違う属性を持つ特別な子など……どんな扱いになるか」


「まともな生活には戻れないでしょうね……周囲の信頼の置ける間でだけ共有して、隠すべきかと」


 たった1人の新たな属性。たった1人の調査対象。たった1人の特別な存在。

 あまり良い想像は出来ない。


 例えこのまま永遠にシアの力について知らずにいても、変わらず世界は今まで通り動くのだ。

 公にした時の悪い想像しか出来ないのなら、隠すという選択肢は無難だろう。

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