表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/181

第65話 実験と考察 6 無理でした

「はぁっ、はぁっ……はっ……はっ……」


 滝汗を流し息も絶え絶え、顔色は悪く、多少ではあるが鼻血まで流れている。

 体にも全く力が入っていない。酷い状態だ。


「シア!」


 見た事が無い程疲労したシアを見て、ルナはかなり焦っている。

 どうしたらいいのかと一瞬悩んで治癒魔法を使うが、怪我ではないので自力で回復するしかない。


 それでも痛みや疲労は軽減できる。

 温かい光に包まれて、シアは少しだけ穏やかな表情へ変わった。


「俺達がさせてしまったとはいえ、なんて無茶を……」


「シアちゃん、大丈夫かい?」


 2人も酷く心配している。

 普段から戦っている彼らは、彼女の状態が良くない事を理解しているのだ。

 しかもそれをさせてしまったのだから、自責の念もかなりのもの。


 そんな彼らを安心させようと、シアは薄く眼を開けて頷いて返す。


「とりあえず意識があるなら大丈夫だ。かなりキツイだろうが命に係わる程じゃない……休めば問題は無いだろう」


 シアがちゃんと声を聞いて頷きを返したのを見て、ダリルは鼻血を拭きとってあげながら説明も兼ねて言う。


 極度の魔力消費は、意識があるかどうかが最終ラインと言われている。

 実はシアがルナに助けられた時、あれは本当に危険な状態だったのだ。


 聞いていたルナはあの時の事を思い出したのか、安心と不安がごちゃ混ぜな表情でシアの頬を小さな手で挟む。


「もう……馬鹿な事しないでよ……」


「ごめん、つい頑張っちゃった……」


 珍しく泣きそうに見えたルナに、シアは声を絞り出して謝る。


 ルナはより一層治癒魔法を強くかける。

 どれだけ強くかけても殆ど意味は無い――それでも、少しでも助けになればと必死だ。


「治癒魔法か……適正は無いが多少の気休めにはなるか?」


 それを見ていたダリルは、自分も治癒魔法を使えば少しは変わるかと、シアへ手を当てる。


「だ、だめだよ、準備が出来たら戦いに行くのに……」


 戦いが控えているというのに無駄に魔力を使うなど申し訳なくてシアは慌てる。

 そもそも自分が制止を振り切って無茶をしたからだ。


「大した消費にならん、こんなもん」


「一応僕も。戦いに参加するとはいえ、メインじゃないからね。気にしなくていいよ」


 2人とも適正ではなく最低限ではあるが、ルナと同じようで少し違う温かな光が更に少しだけシアを楽にする。


「全く、俺はなんて馬鹿だったのか。あの障壁がどれ程の魔力を使うのか、考えが及ばなかった……目の前の事に夢中になりすぎてしまった。すまなかったな……」


 あの障壁がどれくらいの魔力を使うのかは分からないが、少なくとも軽いものではないのは確かだった。

 でなければあれ程の物が作れる訳が無いのだ。

 そこまで考えられずに夢中になっていた事を恥じて心底申し訳なさそうに謝る。


「それにシアちゃんは体が弱かったのに、それすら忘れてしまっていたよ……ごめんね」


 彼女の体が弱いという事も忘れていたけれど、それはシアが体が弱い事を噯にも出さないから仕方ない。

 精々皆が見るのは、疲れて眠ってしまう所くらいだろうか。

 貧弱で虚弱な事を忘れてしまう程、彼女は明るく元気なのだから。


「いいよ、私が自分でやったんだし……それに、お陰で色々分かったよ」


 謝る2人に対してそんな必要は無いと返しつつ、自分の力について今まで以上に理解が出来た事を伝える。

 自分だけでは出来なかった進歩だ。


「それは良いけど……ほんとにこんな無茶もうしないでよ? 短時間に一気に限界まで魔力を使うなんて……危なすぎるよ」


「うん……ごめんね、心配かけて」


 本気で心配したルナは優しく怒っている。あまりにも危険過ぎた。


 どれだけ危なかったのか、どれだけ心配させたのか、それくらいは流石に分かっているシアは謝るしか出来ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ