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第63話 実験と考察 4 細かすぎる検証

「しかし、集中が必要とはいえ形も移動も意思のままならば……なぁ、順番にちょっと見せて欲しいんだが、まず単純な1枚の壁を作ってみてくれないか?」


 痛がるシアを無視して、手元のメモを見ながら考えていたダリルが真面目な顔でまた何か言い出した。


「え? うん……」


 急に真面目な顔で雰囲気の変わった彼に言われた通りにシアは壁を作った。

 疲れてはいるがまだ大丈夫だ。


「ほほう、なるほど……」


「壁だね。さっきまでのと形が違うだけで……ダリルさん、これが何か?」


 現れた壁は地面から生えるように真っすぐ立てられている。

 見た目が半透明なだけでまさに壁そのもの。


 ただし途切れてしまう端の部分は靄のように薄く消えていくような形になっているし、厚みという物が無いように見える。

 横からの攻撃には無力だろう。


 なにか分かったような顔をしているダリルと違い、セシルはよく分かっておらず尋ねる。


「まぁ待て。次はこの壁を空中に固定して作れるか?」


 その質問には答えずに、再度シアへ壁を作るように頼む。


 空中に作るというのはシアもたまにやっていた。自分だけなら包めばいいが、飛んでいるルナを護ろうとすれば自然とそうなる。


 とりあえず今の壁は消して、もう一度集中する。


「んっ」


 また現れた壁は地面から浮いた状態で止まっている。毎回結構な魔力を使ってしまうので、連発するのはつらそうだ。


 それでも、自分の力についてダリルが答えを出してくれそうだという予感の元、頑張って障壁を作り出した。


「ほうほう……しっかりと空中に壁が固定されているな」


「ああ、なるほど。空中に固定出来るならさっきも落ちることは無かったわけか」


 空中に固定された壁を見て、更に興味深そうにしているダリルは細かい確認をしている。

 対しセシルは毎回ただ感想を言うだけになってしまっている。


「そういえばそうだね……」


 言われて気付いたのか残念そうにシアも言うが、驚き慌てる中で咄嗟に集中など無理な話だ。

 どちらにしろ落ちてお尻を抑えていただろう。


「じゃあこのまま固定を止めてくれ。壁は消さないようにな」


「ん」


 ダリルに言われるままに固定していたのを解く。

 当然壁は落ちていき地面に倒れる。


「これはさっきシアちゃんが落ちたのと同じでは?」


「いや、さっきはシアが中に居たしすぐ消えたから分かりづらかったが……見ろ、一旦作られた壁は物理的に1つの物として存在しているという事だ」


 そう、シアの作る障壁は物としてそこに在る。

 他の魔法で作られる物質――水や石と同じだ。

 あれらも、どう形作りどう動かすかは本人の意識次第である。


 ただこの壁に関しては端が靄のようになってしまっているので、どこまでが物質なのか境界線がよく分からない。

 触れてみれば分かるだろうが、随分曖昧な感じだ。

 恐らくこの端の辺りは防御力としては皆無だろう。


「なぁ、これは端のモヤモヤした部分をこう……ピシッと形を整えられるか?」


 ダリルもそこが気になったらしく注文を付ける。


「どうだろう……考えた事なかったけど、やってみる」


 わざわざそんな事を気にした事が無かったシアは戸惑いながらも言われた通りに再度作り出す。


 そうして現れた壁はまさにピシッと整えられてる。

 しかし先ほどまでは厚みなど無いように見えたが、今度は数ミリ程の厚みが生まれた。

 恐らくシアの意識的な問題で、整えるなら厚みが必要と思ったのかもしれない。

 そういった細かいイメージが無かったから曖昧な形だったのだろう。


 しかしこの変形は今までしたことが無いというのもあるだろうが……より集中する必要があって疲れるようだ。


「ふぅ……こんな感じかな?」


「おお、完全に半透明の板だな。しっかりと形作る事も可能か。厚みが生まれたが……むしろそこも変えられるという訳だ」


 注文通りにしっかりと形を変えて見せたシアに感心している。

 メモしながら目聡く厚みにも気付いたようで、その形から板と評した。

 なんだか壁からランクダウンしている気がする。


「さて、次は空中に壁を……いや、床のように作ってくれ」


「んっ……」


 どんどん頼まれるがシアは文句を言わずに大人しく言われた通りに空中に床を作る。これも初めて使う形ではない。


「よし、そのままだ」


「おお……」


「やはりこうして乗ることが出来るか」


 ダリルは作られた床へ乗る。

 これは土や石、氷でも同じ事が出来る。

 しかし強度の問題もあるし、重さに耐えられるよう固定するには相応の実力が必要だ。


 しかしシアのこれは強度も固定もかなりのもの。

 大人が乗って踏みしめてもビクともしない。

 扱う本人がまだ幼い事も考えると驚きしかないだろう。


「本当にとんでもない力ですね。こんな事、僕だってかなり集中しないと無理だ」


 セシルは氷の魔法を使う。

 だから彼も氷で足場を作ったりするのだが、装備を纏った大人の重さに耐えるのは難しい。


 強度は問題無い。

 それなりの力をかけられてもその場へ固定し続ける事が難しいのだ。

 更にそこからジャンプでもしようものなら、蹴りつける力にも耐えなければならない。


 地面に接しているなら誰でも出来るが、完全に浮いた状態でのそれは全くの別物である。


 ついでに言うなら、動かす事と固定する事は難易度に大きな差がある。

 普通は固定する方が難しいのだが、シアはどうやら逆のようだ。


 とは言え流石に彼女も軽々とやっているわけではない。

 かなりの集中が必要だし、大きなものや複雑な形は作れない上に、同時に1つしか維持出来ない。


「ふむ、色々と予想以上だった。とりあえずこの辺りで終わっておくか」


 と、ここまで色々と調べていたダリルはひとまず満足して言った。

 シアもそれを聞いて障壁を消す。

 またしても魔力が大きく減って、更につらくなったが我慢した。

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