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第62話 実験と考察 3 落ちるオチ

「あ、シア。前言ってた水に入ったらどうなるか試そうよ」


「ここで?」


 と、以前お風呂で言っていた事を思い出したのか、ルナが水に入れようとしている。

 ここはギルド内の庭なのだが……


「ふむ、空気が通らないなら完全にただのボールだ。水に入ればそのまま浮くだろう」


 やるやらないはともかく、とりあえず推察を言うがルナはそんな事を聞いても満足はしない。


「ちょっと離れてー」


 完全に乗り気になっているから止まらないだろう。

 周りに他の人が居ないから迷惑にもならないし、魔法で水を出すだけだから……なんて思っている。


「え? ほんとにここで水を?」


「えい!」


 結構な水量になるだろうに、本当にやるのかと驚いているシアを無視してルナは一気に水を作り障壁の上から更に包む。


 高さは2メートル程度、幅はその倍程もある大きな水の塊を作ってしまったが、技術と魔力の無駄遣いである。


「わっ!?」


 いきなり周囲が水で埋まったシアは声を上げた。

 固定していないので、そのまま浮力によってプカリと浮いていく。


「随分な水量だな……そしてやはり浮いたな」


「さすが精霊だね。びっくりしたよ」


 一気にこれほどの水を作った事に驚きつつ、予想通り浮いた事に若干満足そうにしながらメモメモ。

 セシルは精霊の凄さを実感したらしい。アホの子でもやはり精霊なのだ。


 とはいえ流石にこれほどの量の水はただ固定するだけで大変らしい。

 しかしちょっとだけ頑張って水流を作り渦を発生させた。


「わぁー!? ……わぁ~!」


 水上で呑気にゆらゆらしていたシアは、急にぐるぐると流されて悲鳴を上げる。

 しかしすぐに楽しそうな声に変わった。


 ただ、皆の頭上に浮かんでいるせいで隠すべき物が丸見えだ。

 今度は楽しくなっているからか気付いてさえいない。まだまだダメなようだ。


「これなら溺れることもないな。自分で水流を作れば移動も出来るし、便利なもんだ」


 見上げてしまってはいるが、とりあえず見ていないフリをしてくれているらしい大人2人。

 触れないでいてあげるのは気まずさか優しさか。


 意識していたらそれはそれでアレだが……意識されないでいるとシアは気付かない。困ったものだ。


「浮くから水中は無理だねぇ……残念だったね、シア」


「まぁこれはこれで結構楽しいけどね」


 ルナのように水中を自在に……なんてことは無理そうだが、それでも楽しいからいいやと満足気。


「邪魔だし維持するの大変だから水消すよー」


「うん。……え!? ちょっと待っ――」


 そしてもう大量の水を維持するのが面倒なのか、さっさと終わらせるようだ。

 庭を水で浸す気は無いらしく、水は消す事にした。


 シアも返事を返したものの、直前で何かに気付いて声を上げたが遅かった。


「「「あっ…」」」


 まぁ、落ちるだろう。

 水が消えてフワッと落ちるシアを見て全員が声を揃えた。


「痛っったぁ!」


 可哀想に、2メートルの高さから落下。そのままお尻から着地して、鈍い音と共に悲鳴が上がった。


 落下した勢いのまま障壁の内側へ打ち付けられた痛みは相当なものだ。

 集中が途切れたのか障壁も消えてしまった。


 まぁ元気そうに悶えているから大丈夫だろう。


「落ちるのか……いや当然か」


「思いっきりお尻から落ちたね。痛そ……」


「ご、ごめん、シア。全然考えてなかったや……」


「うぅ……酷い……」


 三者三様に口を開くが、お尻を抑えて呻くシアには聞こえていない。


「しかしあの水量をパッと消すとは、流石精霊だな」


「これでどの属性も使えるっていうんだから、本当に凄いね」


 少女のお尻をどうにかしてあげる事も出来ないのでなんとも言えず、とりあえず男達はルナの魔法について語り出した。

 事実、水を作り出す事とそれを消す事は難易度が全く違う。

 もっと言えば、水気を取り払う事と消す事もまた違う。


 既に有る水を魔法で消す事は出来ない。

 消せるのは最初から魔法で作り、操作を続けている物だけだ。

 適正云々では無く、純粋に制御の腕によるモノである。

 なので一応シアも出来るが、規模はかなり小さい。


「えへへ……」


 急に褒められたルナは嬉しそう。


「ちょっと! 私お尻打ってるんだけど! なんでルナを褒める流れになってるのさ!」


 お尻を思いっきり打ち付けて悶えていたのを完全に無視して、その原因のルナを褒めているのは流石にシアも怒った。


「すまんすまん、やはり精霊の魔法というのも興味深くてな」


「ごめんね、シアちゃん」


「はぁ……障壁消えちゃったし、疲れた……」


 未だお尻を擦りながら涙目で怒っている彼女へ多少罪悪感でも感じたのか、素直に謝る。


 そしてシアは長く障壁を展開し続けていたのが途切れて、一気に疲れが出たようだ。

 意識して集中している間は多少は疲れも我慢出来るのだろうが、一旦途切れるとそれが顕著に表れてしまうらしい。


 ルナはとりあえず自分のせいだとは理解しているので、痛がるシアのお尻に治癒魔法をかけ始めた。

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