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第61話 実験と考察 2 またもや転がる

「あんな山で生き延びていられた以上、相当な物だろうけど……結局どれくらいの強度なんだい?」


 延々と独り言を続けるおっさんを眺めていても仕方ないので放置する事にした。


「あたしが見た限りじゃ、どんな魔物も魔法生物も亜人も、何を相手にしてもビクともしないぞ」


 ルナも変なおっさんは無視して答えた。

 山で見てきた事をどうしてか自慢気に語る。


「とんでもないな。この球状になっているのはシアちゃんの意思で?」


「うん。ちゃんと足元……地面の上も護ってるから一番安全なんだ」


 ルナの語る障壁の強度に更に驚いて、シアへ質問してみる。

 聞いたところで詳しい事など分からないが、疑問をそのままにするのも嫌なのだろう。

 

「ほう、意思で形を変えられるのか」


 すると考えを纏めていただろうダリルが会話に混ざって来た。

 しっかり聞いていたらしい。


「これは元々、まん丸になるように作ってるんだ。それで地面に当たる部分を変形させて合わせてるの」


 急に混ざって来たダリルに少し戸惑いながらもシアは説明を続けた。


「器用なもんだ。言い方からして他の形にも出来るんだろう? それに、攻撃されてもビクともしないというなら動かないのか?」


「うん。ただの壁も作れるよ。動かないのは固定してるから……やめれば動くよ」


 そのままダリルが質問し始める。まだまだ色々と聞いて思考を纏めたいらしい。


 シアはなにも球状の障壁しか使わないわけではない。

 ただの壁として作る場合も当然あるし、多少動かす事も出来る。


「動かせるのか……それはますます興味深い」


 更にのめり込むようになったダリルは、いつの間にかメモまで取っている。

 そうして考えを纏めて結論を出そうとしているのだろう。


「動かせる状態で何かされると大変なことになるけどね」


「それはまぁ……うん」


 ルナが笑いながら口を挟んだ。当然言っているのは山を転がり落ちた件だ。

 あれは障壁を動かそうと、固定しない状態で転んで押してしまったからだ。


 ルナからすれば、無事だったのでただの馬鹿な楽しい想い出なのだが……転がったシアからすれば痛くて苦くて臭い想い出である。


「あぁ、動くということは攻撃されたら押されるのか。こう包んでいたら押されるどころか吹っ飛びかねないな」


 納得したようにセシルが言う。

 実際、固定しない障壁など障害物にすらならない。

 どうも重さというものが殆ど無いらしいからだ。


「その固定するってのは、どれほどの力まで耐えられる? 動かせるのなら、その球状のまま歩けるか?」


「どれくらいまでかは分かんない。歩くのは頑張ればなんとか……地面に合わせるのに集中しちゃうし、自分の動きに合わせて障壁も一緒に動かすから凄く大変」


 メモを手にダリルが更に質問を重ね、またシアが答えていくが……いつまで続くのだろうか。


「なるほど、結局は意識か。集中出来ないとどうなる?」


「んー……こうなっちゃう」


 まだまだ続く。言われた通り要望に応えて、わざと集中を切る。

 すると地面に接している面の変形が球へ戻り、完全な玉になった。

 これが基本であり一番自然な状態だとシア自身が意識しているからこうなっている。


 ちなみにこれが山を転がり落ちた時の状態だ。

 押せば面白い事になるだろう。中は大変な事になるが。


「中で動くとこんな感じ」


 そしてシアは中で足を踏み出した。当然ボールはそれに合わせて動いていく。


 歩いてると言っていいのか転がってると言えばいいのか。

 しかし意外と楽しそうである。


「ボールが転がってる……面白いけど、速度があったらちょっと怖いかもな」


 セシルは見たまま素直な感想を言うが、転がる速度によっては痛そうだと想像したようだ。


「外からの衝撃は全然感じないよ。私が中からぶつかると痛いけど」


 しかしどういう原理なのか、外からの衝撃はしっかり護られて殆ど伝わらない。

 転がっても体が地面に打ち付けられる痛みは殆ど無いわけだ。


 それでも全く衝撃が伝わってこない訳ではないし、自分が中から壁にぶつかる痛みはある。


 現に山を転がった時は中のシア自身が結構な速度で壁にぶつかっていたから、外からは護られてもめちゃくちゃになってしまっていた。


「これは……なかなか面白いな。押したら転がっていく」


 ダリルはボールを転がして色々と調べているが……小さな中の人は立っていられずコロコロと大変なことになっている。

 ちなみにルナはコロコロと笑っている。


「わっ、わわっ」


 こんなイタズラ染みた事をされるとは思わなかったシアは、転がりながら慌てて服の裾を抑えた。

 ちゃんと学んだらしい。


「ちょっとダリルさん、何虐めてんですか」


「おぅ……すまん。つい興味が……」


 流石にこれは見ていられなかったセシルが注意する。

 スカートを抑え下着を隠す少女を、興奮したおっさんが虐めている……色々と危ない光景だったから仕方ない。

 注意で済ませていいのだろうか。


「そういうところですよ」


 セシルに呆れつつも責めるように軽く睨まれて、ダリルは咳払いをしてまた質問へ戻っていった。


「しかしこう見ると本当にボールだな。完全に遮断されているのか?」


「少なくとも何か攻撃とか入って来たことはないかな。ずっとこのままだと苦しくなるから、空気も通ってないと思う」


 シアもとりあえず転がされたことは置いておいて答えた。

 あと何回質問に答えるのだろうか。


 空気すら遮断しているから色々と使い道がありそうだ。

 シアが思いつくかどうかは別として、だけども。

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