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第55話 休息 5 石を投げれば銃になる人も居る

「了解。さ、こっちだ。いつまでもここに居たら邪魔になってしまう」


「はーい」


「一体どんな面白い物があるかな~」


 快く受け入れたリアーネはシア達を連れて、言われた部屋へ向かう。

 団長もこれで仕事か休息かへ戻るようだ。

 素直に着いていく2人は何が見れるかとワクワクしている。



「さーて……何から見ていこうか。とりあえずさっき話してたマーキングからかな」


 部屋に入るといくつもの魔道具が並んでいた。

 リアーネは早速、先の話題にもなっていたマーキングの魔道具を取り話し始めた。


「それが? 変な形だね」


「わお」


 ルナはそれを見て、純粋によく分からない様子。

 しかしシアは違った。

 それはまるで中折れ式のリボルバーのような――まさに拳銃といった形だったので驚いたらしい。


 だが火薬で金属の弾を撃ち出すというわけではない。

 もっと便利な魔法があるのだから、わざわざ火薬を使いはしないという事だろう。


「これは魔法で小さな魔石を撃ち出すんだ。で、当たった所へ魔石に込められた魔力で追跡用の紋を刻む……そうすると対象が移動したとしても常に把握出来る。大した距離は飛ばないし、半日くらいで消えてしまうけどね」


「へぇ~……このコンパスが追跡するやつ?」


 それはシアの予想とは違って、リアーネの言う通りあくまで魔法的な物だった。

 攻撃する物ではない事に多少の落胆でもしたのか、シアの興味は隣にある方位磁針のような物に移った。

 方位も数字も何も無いが、中の針の先に小さな魔石が付いている。


「そうだ。針の先の魔石が対象の方向を指してくれる。上下は指せないから分かりづらい時もあるけどね」


 これも至極単純なもので、ただ方向を示してくれるだけだ。

 当然ながら針は上下には振れないし、マーキングの方と決まったセットで使わなければならないのも不便なところだ。


 それでも今回のグリフォンのようにある程度行動範囲が分かっているなら、方向さえ特定出来れば充分効果的である。


「これ、当てられなかったら地面とかをマーキングしちゃうの?」


 ふと気になった事を聞いてみる。

 魔石を当てた所をマーキングして追跡するのなら、毎回確実に当てなければならないというとんでもない欠陥だ。


「ああ。でも次弾を撃てば上書きされるようになってるから、外してしまう事は大して問題じゃないんだ」


「なるほど~……」


 当然ながらそんな欠陥は無いらしい。

 弾を撃てば、以前の物は効果が切れるようになっている。

 逆に言えば1つの物しか追跡出来ないし、間違えて撃ってしまったなら追跡は不可能になってしまう。


 シアはどこか感心したような、思い直したような表情。

 魔法や魔道具といった不思議な力なら、前世の感覚からすればなんでも有り得そうなのに……割とままならない物だと今更ながらに気付いたようだ。


「ねぇねぇ、これは? 同じような形してるけど別だよね?」


 近くにあった似た形の物を、ルナが指を差しながら聞く。

 一応勝手に触らないように気を付けているらしい。


「それは銃だね。そっちは単純に攻撃用だ。弾は中に作られる石で、火と風の魔法で強烈に飛ばすから威力はなかなかだぞ」


 と、今度こそ銃が出てきた。

 さっきの物とは違って装飾こそあれど形はシンプル。地球の物で言うと中世の頃の形に近い。

 魔法で爆発を起こして威力を高めているので耐久性の為に少し大きめか。


 ただし弾はただの硬い石である。

 魔石に組み込んだ魔法で、魔力さえあれば作り放題なのだ。

 魔法で金属を作る事も可能だが、複雑故にかなり大きな魔道具になってしまうから石なのだろう。

 自動で中に作られる以上、装填する手間も無い。

 だから余計な機構も無い故に単純な形になっている。


 とは言え結局は石の弾。

 命中すれば基本的に砕けるし、有効射程としては短めだ。


「はぇー……これで攻撃するのか。確かに離れたところから攻撃ってのは良いけど……魔法で良くない? 威力がどれくらい凄いかは分からないけど」


 聞いていたルナは面白そうに眺めるが、存在意義を疑う質問をする。

 この世界は誰でも魔法を使う以上、わざわざこんな道具を使う必要は無いと思ってしまう。


 そしてそれはその通りである。

 身体能力を上げ、武器を振るい、魔法を放つ世界では、他と比べて特別威力に優れるわけではないのだ。それに弾も小さい。


「誰でも同じ攻撃が出来るって事だし、それが大事なんじゃないかな」


 さっきは少し落胆していたけれど、今度こそ想像に近い銃が出てきたことで色々考えていたシアは口を挟む。


 前世からの知識でそれっぽい事を語ってみるが、そもそも魔道具自体が誰でも同じ事が出来るようにというのが前提だ。

 残念ながら改めて言うほどの事でも無かった。


「その通り。これは魔石に魔力を込めてさえいれば、誰でもいつでも同じ事が出来るっていう利点がある」


 そんな当たり前の事を言うシアを褒めて頭を撫でてあげるあたり、リアーネはすっかりお姉ちゃんらしい振舞いになっているようだ。


「しかしルナの言う通り、これを撃つより魔法の方がよっぽど良い。魔法は持ち歩く必要も無いし、その威力も範囲も使い方だって調整出来る」


 ルナが言った事に補足を入れていく。

 結局魔法の方が便利で融通が利くのは事実なのだ。


「でも人によっては苦手にしている事もあるし、魔力が減っていたら使えない事もある」


 人により属性の適正があるし、魔法を苦手とする種族だっている。

 敵や周囲の環境が攻撃手段と相性が悪いなどよくある事だ。

 そういった場合は武器が重要になるので、選択肢として銃があるだけだ。


「それに弓より嵩張らないしな。まぁあっちはあっちで、銃以上に色々出来る利点があるから、よっぽど多く使われているけどね」


 同じく離れた所から攻撃出来る武器としては弓がある。

 矢を持ち歩く必要がある弓に比べて、弾が中で作られる銃は持ち運びしやすい。


 それでも弓は魔法と合わせた使い方が出来るし、鏃を魔石にした特殊な矢も存在する。

 銃の弾に魔石を使わないのは、石の弾を中に直接作れる便利さもあるが――そもそも爆発に魔石が耐えられない。


 マーキングの方は威力が必要無い分、爆発を極力抑えているからどうにか出来ているだけだ。

 魔石とは存外脆い物なのだ。

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