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第54話 休息 4 社会見学?

 お昼ご飯をしっかり食べて、準備を済ませたシア達はギルドへ向かった。


 どちらからか、自然とリアーネと手を繋いで歩く姿はもはや何も言うまい。

 10歳くらいの子でそこまで幼い言動をするのも珍しいと思うのだが突っ込むのも野暮だろう。

 見た目はもっと下だしおかしくは見えない。


 甘える幸せ、甘えさせてくれる幸せ。今はそれを享受していれば良い。

 きっとその内成長していくだろう。

 それこそまさに子供のように。



「やあ団長さん、来たよ」


「おう、すまんな、急に呼んだりして。……ん? 嬢ちゃん達も来たのか」


 ギルドへ着くと入口に団長が立っていた。

 今は特に何か出来る状態じゃないから休息……といった感じだろうが、暇そうだ。


「こんにちは。色々見せてくれるって言うから……来ちゃった。邪魔だったら帰るから」


「まぁ、変に騒いだり余計な物に触ったりしなけりゃ大丈夫だが……嬢ちゃん達は聞き分けの無いガキじゃねぇし良いか」


 部外者なのに昨日の今日でまたギルドへ来たのが気まずいようだ。

 大変な状況だろうし邪魔になったりしないだろうか、という考えが頭から抜けていたらしい。


 団長は軽く注意だけして許可を出した。

 わざわざ邪魔をしようとはしないだろうし、言って聞かせればどうにでもなると思ってくれているようだ。


「うん、気を付けるよ。ありがと」


「あ、うん。あたしも気を付ける」


 受け入れてくれた事に素直にお礼を言って皆でギルドの中へ。

 ルナは面白そうな物に勝手に触りそうな自分を理解しているのか、少し苦笑い。


 当然と言えば当然だが、中は昨日よりも騒がしい。

 邪魔にならないようそのまま隅の方へ歩いていく。


「さて、さっそくだけど――まずどれくらい時間がある? 具体的な予定は決まってるの?」


 そして立ち止まるとリアーネが口を開いた。

 準備と言っても、どれくらい時間があるのか分からなければやりようがない。


「いや、まだ討伐隊も他の奴らも戻ってないから……まぁ結構余裕はある感じだ」


 聞かれた団長は軽く答える。どうやら再出発までほぼ未定らしい。

 しかしそこから討伐までは何時間もかからないはずだ。


 追跡は出来るし戦力もある。

 既に終わりが見えていると言っていいくらいだ。


「そうか……ところで、私じゃなくても確認やら調整やらは出来るだろうに。どうして私に?」


「まぁ、頼みやすくてちょうど手が空いてそうなのが居るならってな」


 団長自身からハッキリと余裕があると聞いて、多少気が楽になったようで普通に会話を始めた。

 しかし疑問は当然。

 わざわざ彼女を呼び出すほどの仕事ではないのは確かなのだ。


 団長としては理由は単純だったが、やはり急でも頼みやすいというのが大きいらしい。

 妹のリリーナが所属するギルドで、周囲の人達ともそれなりに関係が深い。


 しかもシアの為とは言え、仕事を減らしている状態だ。

 ちゃんとした仕事として、減ってしまっている収入の分のお金を渡すなんて意味もあるかもしれない。


「やっぱりか。まぁそれはそれで、この子達に色々と見せて教えてあげられるから良いさ」


「確かに、良い機会と言えばそうだな」


 返ってきた答えは大した理由じゃなかったが、それも良い機会になったと前向き。

 賛同した団長は一息ついて意識を切り替えた。

 早々に世間話は終わり仕事の話だ。


「グリフォンは平地にまで追ってこなかった。山の中でやりあう事になるのは避けたいから、場合によっちゃ無理矢理にでも有利な場所に引き摺り出す必要がある」


 遭遇した時の事を語る。

 追跡して討伐に向かったとしても、また戦いづらい場所だったら同じことの繰り返しだ。

 それでは意味が無い。次で確実に終わらせるのだ。

 その為には無理矢理でもグリフォンを移動させなければならない。


「じゃあ大掛かりな魔道具をいくつも使うのかもしれないのか」


 そういった状況はなにも珍しくも無い。

 その為の魔道具がある。頑丈な鎖を射出して絡めとる物だ。


 それをいくつか使えば、例えグリフォンでも短時間ならば強引に連れていける……というか地面へと引き摺り降ろせるだけでもかなり有利だ。

 そうなれば後は一斉にかかって仕留めればいい。


「そういうことだ。そっちの部屋に物は集めてあるし、牽引具は庭だ。何をどうしたかは後で報告してくれれば、その分報酬を払う」


 団長は魔道具のリストやらの書類を渡しながら、点検と調整、場合によっては作成までを依頼する。

 仕事なのに随分軽いやり取りだが、信頼があるからだろう。



 グリフォン1匹というのは、先の遭遇時に場所さえ良ければ狩れた程度だ。

 なのに何故ここまで大袈裟に準備をするのかと言うと――結界で阻めない以上、ある意味では魔物よりも脅威となり得るからだ。


 次で確実に討伐するという状況では、準備が足りない事はあっても過剰にはならない。

 万が一でも街に向かわれるよりは、結果的に大半が無意味に終わったとしても誰も構わないのだ。

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