第50話 捜索 4 まずは退却、一休み
それはしっかりと胴体へ当たり、その体に紋を刻んだ。
警戒した者に攻撃されたグリフォンは雄叫びを上げ突進してくる。
これで完全に敵として認識された。
「よしっ! 逃げるぞ!」
グリフォンが叫ぶと同時に団長も叫び、アインとグエンは妨害に走る。
これらの声は先に離れた3人にも届いただろう。
「おらぁっ!!」
グエンの化身は二足歩行の牛のような姿――水牛あたりだろうか。
大斧を下から大きく振るい上げて、地面を抉り石混じりの大量の土を勢いよく飛ばす。
今は近づいて叩き切ることはしない。
いくらこの状態の彼でも、こんな所でグリフォンと真正面からぶつかるのは避けたい。
あくまで逃げる為の妨害。余計な怪我を負って、逃げるのが遅れたら無意味だ。
「数秒稼いだら俺らも退く! 追いつかれたらまた妨害だ!」
一瞬怯んだものの、翼を羽ばたかせ魔法まで使って突風を起こし土砂を吹き飛ばす。
アインも同様に魔法で風を起こして防ぎつつ動き回る。
彼は虎のような見た目。その見た目に違わぬ力強く素早い動きで翻弄していく。
「了解、無理はするなよ! セシル、着いて来い!」
「はいっ!」
団長とセシルは2人を後目に駆け出す。
当然身体強化をしているので彼らもかなりの速度だ。
グリフォンは手を出したのがセシルだと理解しているようだ。
魔法の風を起こし、妨害を無視して追いかけようとする。
「させるか!」
素早くアインは魔法で複数の石を作り、風を使って弾丸のように飛ばす。
しかも強化された剛腕で直接投げつけ、更に加速させた物だ。
彼が得意とする風魔法は相手も使う以上、対抗され易く効き目が薄い。
しかし石を作り飛ばすというのは、ただの風じゃなく物理的な物を当てられるのだ。
そういった利点から、風の魔法でもよく使われている。
よく使われるという事は効果も高いという事である。
咄嗟に風で防いだものの、数発被弾したのか怯み上空へと距離を取った。
「おしっ!退くぞ!」
「おう!」
森の中で距離を取られたならお互いに手は出せない。
2人は一気に駆け出し皆を追う。
流石は身体的に優れたアニム……化身して更に強化されているだけあって、あっという間に団長達へ追いつく。
このまま逃げられれば良し、追って降りてくるならまた妨害するだけだ。
その後、結果的にもう一度襲ってきたものの逃げ切った。
やはり大人しく平地までノコノコと釣られてはくれなかったようだ。
それでも良い。
これで一旦他の隊も街へ集合し、準備をして再度臨むのだ。
山で複数人が戦うのはやはり難しい。
ある程度戦いやすい所まで、無理矢理引き摺り出す必要がある。
シアとルナの場合は他の仲間を意識する必要も無く、驚異的な護りの上で思いっきり戦えたからなんとかなっただけだ。
討伐隊とは別の隊も戻す事に決めた。
これから確実に討伐しようという状況で、他の者が遭遇したり刺激してしまっては面倒だ。
というか既に刺激している状態だ。
万が一経験の浅い者達が遭遇したら危険でさえある。
面倒をかけてしまうが、強大な敵の討伐の際はよくある事でもある。
今は昼前だ。
隊が集合するまで少し時間がかかる。ひとまず街に戻って準備を進めつつ、休息を挟むことにした。




