第46話 襲来 9 迎えてくれる大切さ
「とりあえず、ここに居ても邪魔になりかねないし……帰る?」
「そうだね、色々話したり決める事があるだろうし」
ひとまずこれで帰った方が良いんじゃないかとルナが言う。
なかなかの大事なのだし、邪魔になってはいけない。
最初こそ遊びに来たけれど……迷惑を掛ける為に居るわけじゃないのだ。
「まぁ、確かにこれから色々としなきゃならん事があるからな。お前達を見てやれないから、そうした方がいいかもしれん」
「じゃあ、私達は帰るね。えっと、無理しないくらいで頑張って」
そんなわけで、時間も中途半端だが……シアとルナはこれで今日は帰る事にした。
帰るにあたり何か言いたかったが、大した言葉は出てこなかったらしい。
なんだそれは。
「ふっ、何年ハンターやってると思ってんだ。なんてことねーよ」
そんなの彼女らは知らないが。
しかしシアを安心させるように笑いながら頭をわしわしと撫でる彼は、団長という名に恥じない頼もしさを感じる。
「ん。ばいばい」
大人しく撫でられていたシアはお別れを言い団長室を出る。
そのまま、少しだけ騒がしくなったギルドを出て帰宅。
まだリーリアが帰るまで時間があるが、何をしようか考え中。
セシリアとリリーナの為に――いや、団長達へも含め何かしてやりたいが何も無い。
まともなご飯など作れないし、やはり思い浮かばない。
気を紛らわせる為か、ルナと慣れ親しんだ鍛錬をして時間を潰しはじめた。
そしてついつい、いつも通りにガッツリとやってしまい、リーリアが帰ってくる前に疲れて寝てしまった。
体の改善がどうとか言っていたが、どうやら今は頭からすっぽり抜けているらしい。
緩い頭だ。ちゃんと締めなおした方が良いだろう。
一方リーリアは帰って2人と遊ぶつもりだったのだが、学校から帰ってきたらソファで眠っているのを見て少しだけ呆れた。
シアが学校に行く必要が無いというのは理解している。
それでも、自分が行っている間も寝ているというのは、同じ子供の目線から見たらどうなのだろうか。
もしかしたら一番早くシアの本質に気付くのは彼女かもしれない。
寝てるのを起こすのも気が引けるので、リーリアはとりあえずシアをそのまま放置した。
シアがお昼寝から目を覚ましたのは、セシリアとリリーナが帰ってくる頃だった。
まるでセシリアもこの家で暮らしているかのように、自然に一緒に来ているのがどこか面白い。
「あんた……なんで当たり前のように着いて来てんのよ」
「当たり前だからだよ」
「はぁ……分かるけど意味分かんない」
そんなよく分からない事を言い合いながら家に入ってくる2人を迎えるのは、たった今目を覚ましたばかりのシアだ。
「お、おかえりなさい!」
「シアちゃん、ただいまー!」
「……ねぇ、あんたの家じゃないんだけど。シア、ただいま」
結局2人にしてあげられることなど思い浮かばないままだったシアだが、ひとまず笑いながら迎える。
そんなシアを見て元気よく、ただいまと言うセシリアと……ツッコミを入れながら同じく続くリリーナ。
「おかえりー!」
リーリアも気付いてリビングに入ってくると、2人はもう一度挨拶をして着替えに行った。
セシリアの着替えが常備されている事はもう気にしない。
シアが寂しがってギルドへ行ったことは既に2人に知られている。
彼女達はそれを分かった上でいつも通りに振舞う。
グリフォンの件も伝わっており、シアが色々と不安がっている事も、どうやら何か考えている事も団長から聞いていた。
だから、シアが何かしら考えていてこうして迎えてくれたからこそ、このいつも通りの空気が良かった。
状況によっては、これから少し大変になるかもしれない。
だからこそ、やはり団長が言った通り――護りたい大切な人が迎えてくれるというのはそれだけで意味があるのだ。
何処かへ行っていたらしいルナも遅れて帰ってきた。
彼女なりに考えて動いているが、特に何かするつもりではなさそうだ。
それでも、手を出さない事と気にしない事は全く違うのだろう。
シアがお昼寝している間に街で集めてきた情報を纏めて後で伝える程度でしかない。
そういった事を知っているのと知らないのとでは、シアの気分的にもだいぶ変わる。
結局シアありきでの行動という訳だ。
その後ご飯の用意が進んで、リアーネも帰ってきた。
彼女の仕事は基本的に家でしているのだが、時折こうして朝から夜まで居なくなってしまうらしい。
それを聞いたシアは、とりあえずその日はギルドに行こうかな……なんて、団長と話していた事を忘れて考えていた。
やはり緩い。
そうして、この数日で当たり前のようになっている大勢での食事をして、お風呂に入り、1日が終わる。
厄介な事が起こっていると知ったけれど、こうして過ごす事が皆にとっても良い事なのだと……シアはちゃんと理解したようだ。
とりあえずご飯くらいは作れるか、手伝えるようにならないとなぁ……
なんて考えながら、ゆっくりと眠りについたのだった。




