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第37話 新しい日常

2章及び3章は、説明回が多いです。

展開が遅く面白みに欠けるという自覚はあるのですが、どう纏めればいいのか悩み続けてこの形になりました。

今語る事ではないからと削除したり、長くなっても地の文で説明する、とか。

いっそ根幹から展開を変えるべきとか色々選択肢はあるのですが……なかなか難しい所です。

 とある街、エルフの3姉妹が住む家に新しく、4人目の幼いエルフの少女が……家族が増えた。

 と言うのも、なんと外で拾ってきたのだ。

 人がそこらに落ちてる訳が無いと思いたくもなるが、事実落ちていたのだから仕方ない。


 たまたま少女を拾い、たまたまこの一家に引き取れる環境があっただけ。

 そうでなければ彼女はどうなっていたのやら。


 しかし皆が皆、受け入れるまでわずか1日。

 たったそれだけの時間で家族だと笑い合うなんて、些か出来過ぎているような気もするが……それも仕方のない事。


 少女――シアの抱える過去と傷は、それほど酷く憐憫の情を煽り、お人好しはまず放って置ける筈が無かった。

 そして彼女自身も、こんな居場所を求めていたのだ。



 どうやら昨日は掃除やら買い物やら、賑やかな食事にお風呂と、随分大変だったようで貧弱な彼女は疲れて眠ってしまった。


 今はもう次の日の昼。

 なかなかのお寝坊さんだが……満たされた1日を過ごし、久しぶりの温かいベッドで寝たのだから無理もないかもしれない。


 すやすやすぴすぴと可愛らしく眠るシアを度々眺めるのは、やたらと入れ込んでいるらしいセシリアとリリーナ。


 リアーネも本当は彼女達と同じくお姉ちゃんとして見てほしい所を、年長者として1歩退いた立場で居るようだが……きっとその内溺愛するようになるだろう。


 そして誰よりも、殆ど付きっきりな程にシアの傍へ居るのはルナ。

 昨日、シアが寝た後で打ち明けてしまった心の内は皆が知るところで、微笑ましい2人を眺めていたりもした。

 当然ながら眠っていたシアは全く知る由も無い。



「んにゅ……」


 ようやくお目覚めのようだ。声を漏らしもぞもぞと動いて、むずむずする顔をぐりぐり。

 これで中身35歳の男というのは、それを知るルナでさえ疑ってしまうほど。


「おはよ。随分寝てたね」


 シアが起きた事に気付いたルナは声を掛ける。


「ん……今何時?」


「もうお昼になるよ」


 わざわざ起こさずただ隣に居るだけなのは、彼女なりに思う事があったから。

 山で生活していた頃だったら、体調が悪い時以外は叩き起こしていたのに。


 でもきっと、そのうちにまた、お寝坊な彼女をわざと無理矢理叩き起こすようになるのだろう。それが彼女達なのだから。


「そっか、そんなに寝ちゃってたんだ……」


 まだしょぼしょぼしている目を擦り、ふらふらと立ち上がり部屋を出ようと歩く。


「まぁ、しばらくはゆっくりすればいいじゃん。疲れとか溜まってるんだし……皆もそう言ってたでしょ?」


 今のシアに必要なのは、幸せな居場所でゆっくり心と体を癒す事。

 ルナは気遣うように優しく言う。

 それが必要だと気付けなかった自分を責めるのは止めたのだ。


「うん、いっぱい食べて休んで、それでいっぱい遊ぼ」


「じゃあ顔洗ってあげる。そろそろお昼ご飯出来るらしいからさ、食べたら街に出てみようよ」


「わっ……ありがと」


 ルナ魔法で水を出して顔を軽く拭うようにしてあげると、シアは驚いたもののお礼を言う。

 周りを濡らすなんて事もなく、それでいて顔や前髪を濡らしていた水気を一瞬で消してしまうのは流石精霊と言ったところか。


 魔法は便利で誰でも使うが、こんなちょっとした事にはあまり使わない。

 洗面所に行けばいいだけだ。

 水分を取り去るなんてのも割と難しいので、無駄に高度な事を無駄にやっている訳だ。


 魔法で甲斐甲斐しくお世話をされる事に慣れて、このままではシアは堕落してしまいかねない。

 そんな事は2人揃って全く考えすら及ばないのだが。


 そうして部屋を出てリビングへと向かう。


「あ、おはよーシアちゃん」


「あら、お寝坊さんね。おはよう」


 他人の家だと言うのに、何故か当たり前の様に居るセシリアが朗らかに元気よく挨拶をする。

 リリーナもそれに続き柔らかく微笑む。どうやら2人で昼食を用意しているところだったようだ。


 リアーネは自室で仕事、リーリアは勉強でもしているのだろう。


「おはよう、ございます」


 返すシアはつい畏まってしまう。

 まだ少し、お世話になっているという引け目があるらしい。


 寝起きで意識せずに出てしまった言葉だが、故に本心だ。


「硬いよー。もっと砕けて砕けて」


「ご、ごめん……つい」


「ちょうど良かったわ。今ご飯出来たところだったから、起こすか迷ってたのよ」


 セシリアは不満な様子。お姉ちゃんなんて呼ばせようとしていたあたり、彼女としては硬い口調はダメなようだ。


 それはリリーナも同じだが、わざわざ自分も同じ事を言うのも違うと思い、その事は触れずに昼食が出来た事を伝える。


「ルナがさ、寝かせておいてあげてって言うから――」


「わー! いちいち言わなくていいよ!」


 セシリアの言葉を遮ろうとするが、シアにはしっかりと聞こえていたので意味は無かった。


「そうだったんだ。ありがと、ルナ」


 気を遣ってくれたルナへお礼を言うシアは嬉しそうだ。


「もう! 早く食べて街に出ようよ!」


 そんな彼女に八つ当たりもしづらいらしく、ルナは拗ねたように言う。

 シアに気持ちを知られるのだけは本当に恥ずかしいのだ。


「ん? 遊びに行くの?」


「今日はどうしようかって私達も話してたんだけど……」


 シアが起きたら何をしようか、と2人は話し合っていたようだ。

 なにせやりたい事は多いし、彼女の意思も重視したいから纏まらないままだったが……既に決めているのなら助かる。


「この街の事何も知らないし……色々見て回りたいかなって」


「それもそうだね。じゃあ案内するね」


「流石に1日じゃ回りきれない程度には広いから、しばらくはそれでいいかもね」


 当たり前だが、シアもルナもこの街の事なんて全く分からない。

 昨日の買い物で少し歩いて回っただけだ。

 街の案内もまた、当然のように選択肢として考えていた2人は快諾。



 こうして、新しい家族と共に過ごす2日目が始まった。


 そんな事を話していれば、リアーネとリーリアも部屋から出てきて……また賑やかな食事をして。


 運の良いことに、今日から3日は学校も休みでリーリアとも一緒に居られる。

 昨日買った服へ着替えてから、皆で一緒にお出かけだ。


 すぐ傍に親友のルナが。

 お姉ちゃんとしてセシリアとリリーナが。

 姉妹というよりは友達としてリーリアが。

 そんな彼女達を見守るリアーネが。


 皆でわいわい楽しく、まるで観光に来たかのように。


 囲まれるシアは――それはもう嬉しそうで……楽しそうで。

 そんな日が数日、続いていくのだった。

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