表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/181

第33話 お風呂 6 温かさと気持ちよさに包まれて

「ふぃ~……」


 肩まで浸かったら自然と声が漏れる。

 お風呂ってこんなに気持ちよかったっけ?

 全身しっかり洗ってもらっただけでも気持ちよかったけど……これは最高だ。


 リリーナに運ばれたまま入ったから、私は後ろから抱かれる形になってるけどそんなのも気にならないや。

 ルナとリーリアは元気な子同士気でも合うのか、バシャバシャと遊んでる。


「気持ちよさそうだね」


「お湯に浸かるなんて久しぶりだから……溶けそう……」


 ほんとに気持ちいい。


 そういえば、よく考えたら障壁で囲んで中にお湯を溜めたらお風呂になったんじゃ……

 なんで今まで思い至らなかったんだ私は。


「のぼせない程度にゆっくりリラックスしようね」


「こうやって少しでも体を休めなきゃね。シアちゃんはすぐ疲れちゃうみたいだし」


「それは元々……」


 私を抱いたままのリリーナがリラックスしろとか言ってる。

 なんか小振りで柔らかいものを枕にしている気がするけどなんでもないな。

 うん、リラックスだ。


「これから改善できるようにしよ。多分今までも何かしら考えてたかもだけど」


 考えたけど結果的に全部無視して体を虐めてました、なんて言えない。

 少なくとも今は違うけどね。


 しかし本当に気持ちいい。

 お風呂に来る前にもう眠かったのもあって凄く意識が沈んでいきそうになってる。


 あれ、お風呂でそういうのって気を失ってるんだっけ?

 むしろもう上がった方がいいかも。でも気持ちいいなぁ……温かい……


「ぬくぬく……ぽかぽか……」


「お風呂気に入ったみたい」


「ほんとに溶けそうになってるね」


 2人の声がなんだか遠く聞こえる。

 まずいな早く上がらなきゃ……疲れと眠気と興奮もあってのぼせてるかも。


「シアちゃん、寝ちゃいそうだよー?」


「あー……これ早く上がった方が良いかもよ?」


 ちっちゃい2人の声も聞こえてくる。

 そうだねぇ、上がらなきゃねぇ……


 でも昔を思い出してなんだか切なくって。

 よくお母さんも私を抱いてお風呂に……もうちょっとだけ……


「あれ!? こんなすぐにのぼせちゃった!?」


「ちょっとリリーナ、上がらなきゃ!」


「シア、上がるから持ち上げるよ?」


 上がる?

 もう終わり?

 あと少し……


「んぅ……お母さん……もうちょっと……」


 あれ……私今なんて言った?


「シア?」


「シアちゃん……」


「ふぁっ!? 違っ、今のはその……」


 やっちゃった……これは恥ずかしい。物凄い恥ずかしさだ。


 いくら思い出してたからってこれは無いだろう。

 やっぱり幼児退行してる気がする。


「――っ」


 リリーナが無言で抱く腕を強くした。


「……上がろっか」


 そうしよう。

 改めてセシリアの一声でリリーナと一緒に立ち上がり浴槽を出る。


 体から垂れてお湯に紛れていった、私の顔から落ちた1滴も、きっとただのお湯だ。


「ほら、こっち向け」


「ん……? わぷっ」


 ルナに呼ばれてそっちを向けば、少し冷たい水が優しく私の顔を拭った。

 のぼせたり恥ずかしかったりで熱い顔がちょっとだけスッキリ。


「……ありがと」


「さっさと水気飛ばすなり拭くなりしなよ」


 お礼を言ったらぶっきらぼうになんか言ってる。

 照れることじゃないと思うんだけどな。



「シア、ほら……」


 リリーナが体を拭いてくる。

 自分は魔法で水気飛ばしてるのに私は拭くのか。


 でも拭かれているうちに体の熱がマシになった。

 魔法で冷ましてくれたのかな……


「シアちゃん、着替えられる? まだのぼせてたり眠かったりする?」


 セシリアも私の着替えを持って聞いてくる。

 とりあえず大丈夫だけど……眠さはある。


「眠いけど大丈夫……」


「そう? じゃあ、はい」


 今日私が選んだ下着……それから柔らかいショートパンツと、同じく柔らかいシャツ。

 皆着替えて脱衣所を出てリビングへ。


「髪は私がやってあげる」


 リリーナが拭いてはいたけどまだ乾燥はしてない。

 そのままセシリアが私の髪を乾かす。


 魔法で水気を飛ばせば終わりだけどお願いする。

 使うのは魔道具で温風が出る、つまりドライヤーだ。

 これもお母さんがいつもしてくれた。


 優しい手つきで髪と頭を触られているうちに、眠気が限界だったのか――他にも理由は有る気がするけど、段々と意識が沈んでいく。


 なんだかいつも寝てるな私は……でもまぁ、いいか。

 だって……こんなにも……



 今日はずっと温かかった。これが家族だった。

 これから家族になって――いや、なったんだ。


 新しい家族に囲まれて。

 きっと良い夢を見て、きっと良い明日になって……


 多分こんな日が当たり前と思えるようになるのに、時間はかからないだろうな……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ