第31話 お風呂 4 洗い洗われ
「あ、復活した」
ばっちり皆の裸が見えているけど、もう大丈夫だ。
しっかり心は興奮してるけど、全て受け入れた私はもう何の問題も無い。
「ふふふっ、シアは大変だなぁ」
結局また全部ルナのせいじゃないか、覚えてろよ……
「ていうかルナだって恥ずかしがってたのに」
「確かに恥ずかしいけど。シアを恥ずかしがらせて楽しめるならいいかなって」
なんだそれ……というか空中で仁王立ちするな。隠せ。
「そういえばルナって――というか精霊って体は人そのものなのね」
「確かに……精霊の体なんて知らなかったけど、ただのちっちゃい女の子だね」
「ふしぎー」
だよね。不思議だよね。気になるよね。
だからルナ、私が好奇心で聞いたのはおかしくないんだ。許せ。
「精霊は人を模して生まれるからね。私だってちゃんと女の子なんだ」
「精霊も人なのね」
「うんうん、友達思いのただの女の子なんだね」
ほら、同じような事を言ってる。
「んぐっ……まぁ、お風呂っていうのも入ってみたかったし、気になったから……」
そしてやっぱり照れる。
お前も皆に絆されてしまえ。
「ルナの小さい体だとお風呂ってどうなんだろう」
リリーナがシャワーを流しながら言う。
多分ぷかぷか浮くんじゃないかな。楽しそうだ。
「川とか湖で遊んだりしてたし、溺れたりはしないよ」
そう言ってお風呂に飛び込んだ。おーい体綺麗にしたか?
まぁルナならそこら辺はちゃんとしてるだろう。
「わー、楽しそう! いいなぁ」
確かに。
リーリアは羨ましそうだ。飛び込んじゃダメだぞ?
「さて……シア、洗ってあげるからおいで」
「えっ?」
「ほらほら、座ってねー」
「あの……ちょっ――」
一緒に入るだけじゃなくて洗われるの?
「私、妹と洗いっこってしてみたかったんだよねー」
洗いっこ!?
いやでもそんな事までしてしまえば、もうどんな事があっても大丈夫かもしれない。
させてもらいましょうとも。
他意は無い。無いんだ。
開き直ったからってそんな……ねぇ?
「わぷっ」
頭からお湯をかけられる。これだけでも気持ちいいなぁ。
山でも魔法でお湯を作って洗っていたけど、場所が違うだけでなんでこんなに変わるんだろうか。
「シアちゃんはどこから洗うとかあるのかな」
「私は髪からかな。洗って纏めてから体を……」
他の人がどうしてるかなんて知らんけど、私はお母さんからそう教わった。
「だよねー。まぁ髪が長ければ皆そうするか」
そう言ってまず軽く流して洗って、それからシャンプー。
一応毎日魔法の練習ついでに洗ってはいたけど、汚かったら恥ずかしいな。
「わしゃわしゃするよー。目閉じてねー」
「一応軽く綺麗にしたり、梳いたりしたけど……改めてこう洗ってみると、結構ギシギシになっちゃってるね」
起きた時になんとなく髪がすっきりしてたのはそのお陰か。
櫛すら無かったからねぇ……それでもこの程度で済んでて本当に良かった。
私も髪は一応出来る限り丁寧に扱ってきたつもりだし。
「これからはちゃんとお手入れしようね。今でも綺麗な髪だもん、手入れしたらすっごく綺麗になるよ!」
今日の買い物でも髪関係は買ったし、私も真面目に手入れするつもりだ。
この真っ白な髪は気に入ってるし、なにより――
「うん、頑張る。お母さんと同じ髪なんだ。綺麗にしたい……」
「シア……」
「うぅ……色々教えるし買ってあげるからね」
うん、お願い。これだけは……
あぁ、ダメだ。
優しく髪を洗われていると――お母さんに洗われていたのを思い出して切なくなってきた。
「1回流すよー」
「ん」
シャンプー終わり。次はトリートメント。
色々な物が地球と同じ名前なのは突っ込んじゃいけない。そういうもんなんだ。
……私は何を説明しているんだろうか?
「リーリアは洗えてる?」
「洗えてるよー。魔法でお湯だって作れるんだから」
2人が私を洗っている間にリーリアは自分で……ていうかセシリアもリリーナも合間に洗ってるし。
まぁ同時に洗ったほうが短縮にはなるけど……洗いっこじゃなかったの?
髪は別なのか。
「でも……やっぱり痛んでないとは言えないし、無造作に伸びちゃってるから、今度綺麗に髪を切って貰おうか?」
「そうね、手入れって話ならそれも大事だし……」
洗いながら髪の状態を教えてくれる。
まぁ、髪を切ってなんていなかったしなぁ……
確かに大事な髪だけど、手入れだって大事。ちょっと切る程度は構わない。
「うん、お願い。何処で切るのか知らないからお任せするよ」
「そかそか。じゃあ早めに行こうね」
髪型も気にした方が良いのかな。
詳しくないし、全然気にしてなかったせいで分からないや。
「はい、もう1回流すよー」
「ん」
そんな悩みは置いといて、また流して洗髪終わり。
地球と違って時間を置いて髪に浸透させるとか無い。そういうもんなんだ。
きっと素材が違うんだよ素材が。
……私は何でまた説明をしているんだ?
「ほら! ちゃんと洗ってサラサラになっただけでもこんなに綺麗!」
「むふー……ふふっ……」
髪を顔の前まで持ってきて見てみる。確かに全然違う……嬉しい。
「良かったね、シア」
「ありがとう……」
うん、本当に。
お礼を言うと頭を撫でられた。
それもお母さんが髪を洗った後よくやってくれたやつだ。
「じゃ次は体を洗おっか」
自分の髪を洗い流して、リリーナがボディソープを持って言う。
それぞれ皆髪を纏めて……ついに洗いっこタイムか?
本当に私は大丈夫だよね?
「あたしとシアちゃんで洗ったげる!」
「お、じゃあお願いしようかな」
「やったぁ! 妹2人に洗ってもらえるなんて……」
どうやら先に私とリーリアで洗ってあげるらしい。
セシリアもなんか欲望を隠さないね。なかなかだらしない顔をしている。
そういえばルナは……まだ遊んでる。
てっきり私を弄ると思ってたけど、遊ぶのに夢中らしい。
「洗うよー」
「うん、お願い」
やる気充分なリーリアと並んで、まずリリーナを洗っていく。
よし、落ち着け……覚悟を決めて開き直るんだ。
「あはは、流石にちょっと恥ずかしいね」
「なんか懐かしー」
流石に姉妹でもこの歳では恥ずかしいらしい。
ならなんでこんな状況に……
「うわぁ……わぁ……」
柔らかい……触ってしまっていいのか?
こんなことが許されていいのか?
小振りだけど形の整った胸もその先端も細い腰も……その下は流石にダメだろう。
そこは飛ばして軽く足を洗って終わる。
ていうかよく考えたら前まではやらないんじゃ……そういうものなの?
「こんな感じでいいのかな? 人の体なんて洗ったことないから……」
「いいよいいよ、ありがとう」
そして流す。
泡が流れていくとまた色々見えちゃってヤバイ。
「じゃあ交代! お願いねー」
そしてすぐにセシリアに変わる。
「うひゃぁあ……」
意外と大きめの胸。たぷたぷ……
リリーナと比べてしまうと全体的に――いや失礼だな。
いつまで経っても顔に集まった熱が引かない。
「お姉ちゃんよりおっきいねー」
おぉいそこに触れるなっ。いや物理的には触ってるけどそうじゃなくて……
「小さくて悪かったわね」
ほらリリーナが反応しちゃったじゃないか。怒ってるぞ。
「あはは……」
セシリアも流石に苦笑いするしかないらしい。
仕方ないんだ、エルフは華奢だから。
リアーネさんが珍しく大きいだけだ。
それを見て育ってきただろうリーリアには分からないかもしれないけど。
「私だってもう少しくらいは成長するはずなんだから……」
「えっと……うん。なると良いね!」
言葉に迷ったからってそれは嫌味にしか聞こえないんじゃ……
「嫌味かっ!」
「あいたぁ!」
べちーん、とリリーナがセシリアの胸を引っ叩く。
泡で滑って大した痛みではないだろうけど――揺れる揺れる。
「わぉ……」
おっと、つい声が漏れてしまった。
いやだって、叩かれてぷるんって……
「終われ終われ! もう交代っ!」
そう言って魔法まで使って思いっきりお湯で流し、悲鳴が上がった。




