第25話 お買い物 2 背伸びしたいお年頃
「シアちゃん、これはどうかなっ?」
「待って待って、もっと違うデザインにしましょ」
「えー……だってこういう可愛い感じが似合うでしょ」
店に入ってからセシリアのテンションが高い。リリーナも色々と手に取ってああでもないこうでもないって感じ。
2人とも私の服を選ぶのが楽しいみたいだ。
「確かに似合うけど……シアは子供っぽいのが嫌なんでしょ? 具体的な好みってある?」
好みねぇ……そりゃあ、女であることはとっくに受け入れてるつもりだけど、あんまり幼い感じがするのは遠慮したい。
でもまぁ、わざわざ私の為にお金を使って買ってくれるんだからあまり文句を言うつもりもないんだけど。
「別に……買ってもらえるのなら何でも」
「またなんか遠慮してるなぁ?」
「そうよ。どうせ成長するにつれ買っていくんだから。遠慮したって仕方ないわよ」
見透かされてるのかなぁ……まぁ甘えさせてもらおう。
体が成長すればまた買うから仕方ないってのも分かるし。
なら多少は注文つけてもいいかな。
「じゃあ……シンプルなのが良い。可愛くてもいいけど、幼過ぎるのはちょっと……」
「シンプルねー。10歳ならもう背伸びしたいもんね」
「歳はともかく、シアのサイズだとどうしても大人っぽいのは似合わないかなぁ……ていうかあるのかな?」
そう、どうせ選ぶのなら背伸びしたいんです。
とはいえ大人っぽいのがいいってわけでもないんだけど……この微妙な感じ。
でも似合わないと言われてしまうのももやもやする。
「もう諦めたら~? シアは好みと体型をちゃんと考えた方がいいよ」
そしてその辺を飛んで眺めてたルナが戻ってきて手痛い事を言われてしまった。
「うっ……じゃあ服は子供過ぎなければなんでもいい。でもパンツはやだ」
フリフリした、いかにも可愛らしい子供ですよってデザインじゃなければ服は大丈夫だ。
ただしパンツは別。あれは流石に……ふわもこな幼児用と言っても良さそうなのは勘弁してほしい。
「なら私達で服は選んじゃっていい? 出来るだけ希望通りにするから」
「うん、いいよ」
もうむしろお願いします。私じゃセンスも無さそうだし。
それに選んでもらったなら普通に着るよ。
好みじゃなかろうが、買ってもらって嫌だなんて言わないさ。
「そしたら、私達が服選んでる間にシアちゃんはパンツ……下着を選んじゃおっか!」
「うぇっ?」
とんでもないことを言い出した。
中身大人……もう35にもなる男だというのに、女児のパンツを選べって?
待ってそれこそそっちに選んでほしいんだけど!
25歳で生まれ変わってから精神的に成長(老化?)した気は全くしないけど、事実もう35歳なんだよ。
「そうね、下着は自分で選んでみたら? 一番気にしてるみたいだし」
「えっ?」
リリーナまで同じことを言い出した。
気にしてるのは確かだけどそういうことじゃないんだよぉ……
「シア! こっちこっち!」
「ルナが手伝ってくれるって! 行っておいで」
「私達はこの辺りでゆっくり選んでるからさ」
「えぇ……」
ルナが笑顔で呼んでる。楽しそうだなあいつ。
私が恥ずかしがると楽しそうにしてる気がする。
結局、服は2人に任せてルナと下着売り場へ移動。
「ほらほら、シアの好きなパンツを選びなよ」
にやにやと憎たらしい顔だ。
「その変態みたいな言い方はやめてっ!」
「何言ってんの、普通の事でしょ。変な事考えてるからそう感じるだけだよ」
「ぐっ、ぬぅ……選ぶって言ったって、あんまり幼過ぎないやつをテキトーに……」
嫌な言い方を……そして言い返せない。
確かに自分の好みで選ぶわけで、中身がどうとか考えているからおかしな事になるんだ。
とりあえず開き直って選ぼう。この辺のでいいだろう。
「おーい、そっちはシアのサイズじゃないよ。子供用はこっちだってば」
とか思ってたら引っ張られていく。
「え、これ? いや、もうちょっとこう……」
こんないかにも幼児用って感じのじゃなくてさ。
なんというかもうちょっと普通な感じの……なんて言えばいいんだ……
「ワガママだな。今までどうしてたのさ」
「お母さんが全部買ってたからわかんない。パンツはちょっと背伸びしたやつをお願いしてたけど……」
そうだった。お母さんが買ってたからどういう物が売ってるのか知らないんだった。
当然最初はこういうのを履いてたけど……どうしても恥ずかしくてワガママ言って違うのを買ってもらってた。
「あぁそう……ん、こういうやつ?」
ルナが呆れながら、ふよふよと飛びながらパンツを眺める。
そうして見つけてくれたのは、以前お母さんが買ってくれていたようなやつ。
まだまだ子供っぽいけど、ふわもこではないやつ。
「あ、そうそう、お母さんが買ってたのはこういうやつだったよ。これならなんとかなるかな」
それそれ。そういうパンツが欲しかったんだ。
いや、なんかほんとに変態みたいな……
くそぅ……ルナはパンツも自分の意思でどうにでも出来るらしいからほんとズルイな……
「よーし、お前が気に入りそうなやつ探してやるぞっ」
「気に入るとかそんなん無いから。ふわふわもこもこじゃなくてサイズが合ってればいいよ。――そういえば何枚買えばいいんだろ?」
同じようなやつで適当に選ぶ。
マシとは言え、それでも小さい子供用だ。どうしたって可愛らしいものになるけど仕方ない。
ていうかルナはなんで私のパンツを楽しそうに選んでるんだ?
そしてパンツとはいったい何枚買えばいいものなの?
お母さんは何枚買ってたっけ?
以前持ってた数なんて全然思い出せない。全く気にして無かったな……
「そんなんあたしが知るわけないじゃん。適当にキリよく10枚くらいでいいんじゃない?」
「まぁそれくらいでいいか……」
よく分かんないからそれでいいや。
なんか多い気がするけど、女の子ならそんなもんなのかも知れないし。
水玉、縞々、動物、果物、縞々、無地、水玉、水玉、縞々、無地……似たようなのばっかりだな。
一応全部違うけど、どうせならバリエーションを……待て何を考えてるんだ私は?
いやいや、パンツだからどうにも変に感じるだけで、服に悩むのと同じような物だろう。
……そうだよね?
ね?




