第22話 温もり 5 10歳の進路相談
「あー……嬢ちゃん。今後の事だけどな、まずはしばらくゆっくり休んでくれ。その後は色々と選択肢があるんだが――」
「俺の元で魔法について学ばないか?」
団長からまず休めと言われた。
まぁ、それは当然なんだけど……食い気味にダリルさんからお誘い。
選択肢ってやつの1つ?
「ちょっと!? ダリルさん何言ってんですか!? 私だってシアに……!」
「良い大人が抜け駆けですか!?」
そしてリリーナとセシリアが怒ってる。
魔法ねぇ……今の遊んでたのを見たから?
「私は適正無いですよ? 出来る限り上手く使えるようにはしましたけど……」
「無くともだ。魔法を使っている君は楽しそうだったし、それだけ上手く扱えるなら魔力そのものの使い方も上手いってことだろう。強化とか……」
「強化は無理です……体が弱くて、凄く負担になっちゃうので……」
確かに魔力の使い方は障壁を使う以上は上手くないとだけど、強化は無理なんだ。
無理と言うか、正直痛くて疲れるから使いたくない程度なんだけども。もしかしたら今後成長して変わるかもしれないけどね。
体が弱いって理由も伝える。また心配されそうだけど、体の事だから隠すほうがダメだと思う。
いや、ルナが言ってたっけ?
まぁいいや。とりあえずこれ以上嘘言いたくないし。
「「「…………」」」
「そ、そうか……体が弱いから……それは……遭難していたからなのか?」
何故かダリルさんを見る皆の目が怖い。どうした?
あと山暮らしは関係あるかもしれないけど元々です……
「えっと、私は生まれてすぐ……1年くらい死にかけてたみたいなんです。そのせいか昔から虚弱で……」
「「「………………」」」
嘘は言わない、嘘は言わない……皆の目がさらにキツくなった。ダリルさんに何が?
なんか汗かいてるね……ほんとにどうした?
「あ゛っ……えっ、と……そうだ、障壁は素晴らしいものだったが……あれは一体どういう物なのか聞いてもいいか?」
どういう……難しいな。なんて説明したらいいだろうか。
これも当然嘘は言わないぞ。魔法に関しては実力者みたいだし、もしかしたらもっと進化出来るきっかけが得られるかもしれない。
つらい事を思い出す事になるけど、1から話した方が良いだろう。
「最初は普通の魔力障壁しか出来なかったんです。でも……街が襲われたとき、助けてくれたお母さんが……危なくって、護りたくって、気づいたら壁が出来てて……」
やっぱり思い出すのは嫌だ。でも大事な事かもしれないし語る。
普通じゃない力って、覚醒した時の状況が意味を持ってるっていうのがお約束だしさ。
なにか私じゃ分からない事を知っているかも――
「てんめぇっ! いい加減にしろよ!? どんどん嬢ちゃんが気落ちしてってんだろがっ!」
「ぐふぉぁっ!」
とか思った瞬間、団長がダリルさんを殴り飛ばす。えぇ……?
もうどうしたっていうか、なんなんだ。いきなりでびっくりしたじゃないか。
「全然ダメじゃないですか! なんなんですかあなたは!」
「こんなのが師匠だなんて恥ずかしい!」
「がふっ……ぅ……」
「話遮って誘いだしたと思ったらなにしてんだてめぇ!」
「普通途中で止めますよ!? なんで何回も続けるんですか!」
「ごはぁっ!……っ……」
酷い……全員でタコ殴りだ。ダリルさんが何をしたっていうんだ……
「え?……えっ?……あの、皆……?」
「あははっなんか凄いことになってるね。賑やかな人達だなぁ。ふふっ……」
私のつらい過去を無理矢理聞き出したみたいに思われてるのかな。それで責める気なんて全く無いんだけど。
ルナは笑ってる。相変わらずだね。
「すまなかったな。嫌なことを思い出させちまっただろうに」
何事も無かったかのようにこっちに向き直って話を続ける。
いいのかな、あの後ろで倒れてる人。
「あの……後ろの……」
「あんなのはいいの、気にしないでね。ほっといて話の続きよ」
リリーナ……あんなのって、君の師匠でしょ?
「シアちゃんにつらい思いをさせるなんて……なんでよりにもよって、庇って亡くなったっていうお母さんの事を……」
後半小声で言ってるけど聞こえてるのよ。確かに庇われたけど、あの時の事じゃない。
「違うよ、お母さんが私を庇って死んじゃったのはその後……何十人くらいか集まって逃げようとしてる時に……私の障壁じゃ防ぎきれなくて、離れてた人達以外は皆……」
あんなとんでもない魔物がそこらに居るわけないけど、もしまた途轍もない強さの魔物が居たなら――
今度は護れるだろうか……?
あれ……誰を?
ルナは当然護りたいし、皆を……?
私は……
「――っ!?」
あれ、今度はセシリアが崩れ落ちた。
「セシリア……」
「違っ、違うのっ……そんなつもりじゃ…」
うん、違う。なんでショック受けてるのかは分からないけど、絶対違う事は分かる。
というかさっきからなにを勘違いしてるんだか知らないけど、そんなに気を遣われなくても今の私は簡単に泣いたりはしないぞ。
あれだけ泣いたんだから。もう気持ちは切り替わってるはずだ。多分。大丈夫。
「えーっと……?」
なんかもうどうしたらいいかわかんないから触れなくていいかな?
「はぁ……嬢ちゃん、学校に行く気はあるか?」
あ、そっちももう触れないのね、じゃあいいか。




