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第21話 温もり 4 私にできるコト

 食事の後しばらくお腹を休めてまったりしていると、ノックの音が響いた。大人達が来たっぽい。

 そういえば武器を持って移動していたって事は皆ハンターだよね。仕事はどうしたんだろう……


「やっと来た……遅いですよ! シアちゃん、もうウトウトしちゃってるのに!」


 いや、確かに満腹になってまったりして眠くなってるけど……大丈夫だからね。


「すまんすまん……というか連日俺たちが狩りに出ないのも含めて、色々と調整してやってんだから文句言うな」


 団長さん、だったっけ。ムッキムキのデカくて渋いおっさん……かっこいい。男が憧れる男って感じだ。赤髪がまた目を引く。


「セシリア、全部投げ出して行くんじゃない。心配なのは分かるけどな」


「まぁまぁ……僕らじゃ彼女の世話なんて出来ないんだからいいんじゃない?」


 続いて茶髪のおっさん。団長さん程じゃないけど、やっぱり鍛えていて逞しい。

 並んだ金髪のお兄さんはまだまだ鍛えてる途中って感じかな。


「調整する為にもやるべき仕事はあったんだけどな。彼女達に任せた方が良いのは分かってるが」


 そしてエルフのおっさん。一回り若く見えるけどエルフだからかな。黒髪を適当に伸ばしてボヤっとした感じだ。


「だってリリーナだけズルイもん。私だってシアちゃんと居たいし」


「え、私ズルイって思われてたの?」


 そんなに私の面倒を見たいのかな。私の周りはお世話好きな人が多いな……


「まぁ、んな事は置いといて……とりあえず改めて自己紹介といこうか。俺はハンターギルド『赤竜の牙』団長、ヴィクターだ」


 半ば無理矢理、場を整えて自己紹介してくる。


「俺は副団長のフェリクス。団長が居ない時の代わりだが、揃って出る事も珍しくもないな。で、こっちは俺の息子の……」


「セシルだ。副団長の息子って言っても、普通の団員だよ。セシリアは僕の妹だね」


 団長も副団長も私のとこに来るなんて、面倒かけちゃったな。

 目線で促がされてセシルと名乗ったセシリアのお兄さん……ぱっと見20歳くらい?


「俺はダリル。ギルド内じゃ3番手って感じで上2人の補佐だ。一応そこのリリーナの魔法の師でもある。君とは是非魔法やあの障壁について――」


 エルフのおっさんが名乗りながら私に迫ってくる。なになに?

 リリーナの魔法の師匠なのは理解したけど、なんでそんな迫ってくるのよ。


「止まれ阿呆。幼女に手を出す変態になってるぞお前」


「……私幼女じゃない」


 団長がダリルさんを引き戻す。いや、そこまでは思わないけど……幼女?

 つい訂正したくて声を出す。


「シアちゃんは今年で10歳だってさ。――きっとちゃんと成長出来なかったから」


「お、おぉ……そうか。つらかったろうなぁ……これからいっぱい食って大きくなれよ!」


「本当によく生きてきたものだ……あの障壁といい、生き延びるだけの能力といい、幼いながら素晴らしいぞ!」


 しまった。訂正したはいいものの、セシリアは小声でなに言ってんの。これ以上無駄に悲壮感を煽らなくていいってば。

 すっごい気遣ってくる。頭をわしゃわしゃされてるというか、団長の手がデカくて鷲掴みにされてるんだけど。

 フェリクスさんもなんか感心してるし。この人達、基本単純なのかも……


「私はエリンシアっていいます。あの……助けてくれて、ありがとうございました」


「一応あたしもかな? ルナだよー。あたしまで面倒見てもらってありがとー」


 乱れた髪を直しながら私も名乗り、改めて頭を下げてお礼を言う。いや本当に、良い人たちに拾ってもらえて良かったよ。

 そして下げた頭にルナが乗ってくる。なんで。今までそんなことしてこなかったのに、随分くっついてくるなぁ……


「人と街を護るのがハンターだ。助けなかったら誇りも失くしちまう」


「当たり前の事をしただけだからな、そんなに重く受け止めなくていいぞ」


「大人として、子供を護るのは当然だ。俺に子は居ないが、団長とフェリクスは親としても放っておけないだろうしな」


 カッコいい事言ってるけど、流石にちょっと罪悪感が……子を持つ親には私の境遇は効果抜群で、逆に良くなかったかもしれない。


「あのっ、そんなに深刻じゃなくて大丈夫だから! えーっと、そうだ! 私これからどうしたらいいか分かんなくてっ……何か出来ることとか……」


 無理矢理でも話を変えよう。頭をブンブン振って打ち切って、何かすることがあるか聞く。

 これ以上本当に可哀想な子を見るような目をされるのは居た堪れないのよ……


「っ……そうか、どうするって言ってもなぁ……」


 団長がハッとした顔になったと思ったら、困ったように呟く。

 うん、まぁどうしたらいいかって特に決まったことが無いなら言いようがないよね……


 そしたら皆顔を合わせて小声で話し始めた。何?

 私がどうしたいか分からないって言ったから相談して答えるの?

 別に聞こえないように話さなくても……普通に話せばいいのに。



『ちょっと! 気を使わせてどうすんですか!』

『えっ!? いや、そういうつもりじゃなかったんだが……』

『シアちゃんはあんまり気にされたくないのかな……』

『僕たちが重く考えているのを察しているんだね……気丈な子だ』

『さっきも、これからどうしたらいいか悩んでたのよ』

『うんうん、深く考えないでゆっくり休んで遊んでって言ったんだけど……』

『急に当たり前の生活に戻って戸惑っているのか?』

『それよりも何かしなきゃって感じじゃないか?』



 長い……まだかな……

 頭の上で髪を弄ってくるルナとじゃれながら待つ。



『まさか、助けた僕らに何か報いろうと?』

『そんなの……こっちがつらくなっちゃうよ』

『優しくするのも出来る限りお世話するのも当たり前だよ! まだ10歳にもなってないんだよ!?』

『まぁ落ち着け。とりあえず嬢ちゃんが悩んでることに答えてやれ』

『そうは言っても……普通に生活する以外に無くないか?』

『その普通が分からないのかも』

『10歳なら学校に通うことも出来るぞ。あの子がどう受け取るかは分からないが……それくらいの金は出せるしな』

『まぁ本人の意思を確認しなきゃな。強制するってのも違うだろう』



 ほんとに長いな。何を話してるんだ?

 わざわざ私に聞こえないようにしてる以上、無理に聞きに行くのもな。ルナとこのまま遊んでいよう。


 当たっても問題ないくらい小さな弱い魔法を撃ち合って遊ぶ。極力抑えた繊細な操作が必要な、たまにやる鍛錬を交えた遊びだ。

 私は頑張ったところで大した魔法にはならないから、こういう面で上手くなるしかない。



『じゃあとりあえず学校について聞いてみようよ。もうシアちゃん遊びだしちゃったし』

『地味に凄い事してるなあれ』

『あの子は魔法の適正が無いらしいが……惜しいな』

『楽しそうだし、魔法に関して学ばせてみるのもアリか?』

『それはいいかも……! 私でも色々教えられるかもしれないし……』

『なら俺も……あの子には興味がある。適正無しじゃ伸びしろも有るか分からんが、無駄ではないだろう』

『その興味ってのは変な意味じゃねぇよな……?』

『ぶっ飛ばすぞ貴様……』



 お……?

 皆こっち見た。相談終わり?

 遊んでたのがダメだったわけじゃないよね?

 怒られないよね……とちょっとだけ不安になりながらソファへ向かい、居住まいを正した。

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