表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/181

第149話 お風呂再び 3

 その後は特に騒ぐ事もなく、シアも以前のように沸騰する事もなく。

 皆のんびりとお湯に浸かっている。


 ただし今回シアを抱いているのはセシリアだ。

 更にそのシアの胸元に、ルナもぷかぷか浮いている。


 ふくよかなモノを枕にぬくぬくとリラックスしているシアは、色々な意味で気分が良さそうだ。

 最早完全に開き直っているらしい。


 それを見るリリーナは、ジトリと何か言いたそうな表情。

 しかし自分から口に出したくないのか、ひたすら黙ったままだ。


 そんな視線を知ってか知らずか、セシリアは呑気に口を開いた。


「それにしても、シアちゃんもしっかり体型を気にしてたんだねぇ」


 幼い見た目だとは自覚していたし、成長を望んでいたのは周知の事実。

 それでも、太っただの胸がどうのと気にするのは意外だったらしい。

 その見た目もあって、まだまだ小さな子供という印象が強かったのだろう。


「まぁ……無頓着なのはちょっと違うかなって。別に女の子らしくなりたいって思ってるわけじゃないけど」


 中身が何であろうと、どうせ女の子として成長していくのだ。

 何事も見た目が良いに越した事はない、という考えらしい。


 わざわざ太ろうなんて思う筈も無いし、ぺたんこよりはある程度の大きさも欲しいのだろう。


「ふーん……成長するといいねぇ」


 まだまだ揶揄いたいらしいルナは、シアの薄い胸元をツンツン突きながら笑う。


「特別大きくなんて思わないから、リリーナくらいにはなりたいかなぁ」


 対しシアは、そんな悪戯には特に反応も無く言葉を返した。

 ぷにぷにされたなら反応しただろうが、薄い胸板ではその程度何も思わないのだろう。

 思ったような反応が無くてルナは面白く無さそうだ。


「……へぇ?」


 しかし素直に口に出した言葉は、違うところでよろしくない反応を見せた。


「あ゛っ……ちが、そういう意味じゃなくてっ……」


 やたら低い声をボソリと漏らしたリリーナを見て、失言したと悟ったが遅かった。


「そういう意味ってどういう意味かなぁ? ん~?」


「あはは……ほら、同じエルフだし、なんかこう……ねっ。小さくてもいいから、ちょっとくらい欲しいなって――」


 笑顔で詰め寄るリリーナから退こうにも、セシリアに抱かれているので逃げられない。

 とにかく弁明しなければ、と口を衝いて出てきたのは更なる失言だった。


「誰が()()()()だコラ! 小さいってなんだー!?」


「ひゃ~っ!?」


 決して本気で怒ってなどいないが、多少はカチンと来たのだろう。

 逃げられないシアへ襲い掛かり、その小さな身体を擽った。


 やられている本人も、殆ど悪戯に近い報復で安心したらしい。

 むしろ楽しそうに悲鳴を上げている。


「わぷっ!? ぶへぇっ、がぼぼぼっ……」


 ただし2人の間に居た、元凶とも言えるルナは巻き込まれて沈んだ。

 呑気にぷかぷか浮いていたので、咄嗟に魔法でどうにかする事も出来ずお湯に呑まれて暴れている。


 まぁ散々、人の体型を弄るなんて失礼な言動を繰り返していたのだ。良いお仕置きになるかもしれない。


「わっ、ちょっ!?」


「ひゃぁああ!? ルナ!? どこ触ってっ――」


「この、年下の癖に無駄にデカいモノ晒してっ!」


「なんで私までぇ!?」


「ぷはぁっ、待ってあたし小さいから溺ぼぼぼっ……」


 勢いのまま4人でわちゃわちゃと騒いで大暴れだ。

 さっきまでのんびりリラックスしていたのに、最早お風呂どころではない。


「……あたしは普通がいいなぁ……」


 リーリアは巻き込まれないように、隅っこで小さくなっている。

 バカ騒ぎに呆れながら、微かに膨らみだした胸に手を当てて呟いた。


 先程からの皆を見て、大きくても小さくても面倒そうだと感じたのだろう。

 それはそれで、また巻き込まれる形になりそうだが。



 結局この大騒ぎは、シアが疲れてのぼせるまで続いた。

 今回は魔法を使ってあっという間に水気を取り去り、さっさと着替えてリビングで一休みだ。


「うー……」


 シアはソファに横になりダウン中、その上に同じくルナが伸びている。

 小さなルナは巻き込まれただけでもめちゃくちゃにされたようだ。


「全く……なんでまたのぼせるんだ? 随分と賑やかだったけど、遊ぶ場所じゃないだろう」


「「ごめんなさい……」」


 そしてセシリアとリリーナは、揃ってリアーネに軽くお説教をされたところだ。

 ふざけ過ぎた自覚はあるらしく素直に謝っている。

 本来ならそこにシアも居る筈なのだが、のぼせて横になっているお陰でお説教は回避したらしい。


「とにかく、もう寝てしまいなさい。だいぶ寒くなってきた時期だ、下手したらシアが風邪をひきかねない」


「そ、そうだね。ちょっと早いけどもう寝ようか。シア、行くよ」


 もう冬も目前だ。こんな事でシアが本当に風邪なんてひいたら笑えない。いや何処かの誰かは笑うだろうけれど。


 リリーナはシアを抱き上げて部屋へ向かう。一緒に寝るという事は覚えていたらしい。

 セシリアが寝るのはリリーナの部屋なので、必然的に3人一緒になるのだ。


 ただし布団は別れるのだが……ちゃっかり自分が一緒に寝るつもりなのか、さっさと行ってしまった。


「ちょっと!? シアちゃんと一緒に寝るのは私なんだけど!?」


 慌ててセシリアも追い、リビングはあっという間に静かになった。


「本当に賑やかだな。リーリアは大丈夫だろうけど、湯冷めしないようにね」


「うん、それくらいは大丈夫」


 延々と呆れ続けていたリーリアが一番大人だったかもしれない。

 将来はシアより遥かにお姉さんになるだろう。


「ま、それはそれとして、そのうち買い物に行こうか」


「わー、そしたらあたしもちょっと大人だ」


 しっかりと成長が見えてきた以上、少し早いかもしれないが下着は用意した方が良いだろう。

 姉達に憧れてきた彼女は自分の成長を素直に喜んでいる。

 そしてそれは家族を愛するリアーネにとってもまた、喜ばしい事である。


「シアは……だいぶ先かな」


 今はまだまだ成長の兆しも見えないが、この先にもまたその喜びが待っている。


 ちょっとした喧嘩や身体の事。家族の成長を見て、未来を想う彼女の表情は柔らかかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ