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第148話 お風呂再び 2

 お風呂はともかく、流石に脱衣所に4人は少し狭い。

 のんびりする必要も無いので、皆ポンポンと脱いでいく。


「シア、恥ずかしいのは多少はマシになった?」


「まぁ多少はね……」


 それでも前回の経験があるからか、やはり一応は大丈夫なようだ。

 気遣ってくれる下着姿のリリーナに対しても、顔は赤いもののしっかり対面出来ている。


「ん? んー……?」


 そんな中、なにやら気になったらしいルナ。

 シアの周りをグルグル飛びながら、上から下までジロジロと観察している。


「な、なに?」


 今シアはパンツ一丁だ。

 相手がルナでも、流石にそんな恰好でそんな事をされれば恥ずかしい。

 全く意味は無いが、体をギュッと固めて隠したつもりで訊ねた。


「シア、太った?」


「んなっ!?」


 そして一切の遠慮も無く、ルナは口を開いた。

 皆の前でのまさかの一言で、シアは驚愕している。


 どころか、その言葉に釣られた全員から思いっきり見られてしまい、元より赤かった顔を更に赤くして困惑してしまう。



「うーん……確かにちょっと……」


 セシリアから見てもなんとなくそう見えるらしい。

 元が痩せていたのだから、太ったというよりも健康になったと言っていいのだが……


「お尻大きくなった?」


 リリーナも感想を言った。

 買ったばかりの頃は多少ダボついていたパンツが、むしろ小さくなったように見える。


「な、なってない!」


「いや、なってるなってる。ていうかなんか……ムッチリしてない?」


「してない!」


 否定するシアをルナは逃がさない。

 それでも必死に否定するが、誰から見てもその通りであった。


「まぁ確かに、上半身はまだまだ痩せてるけど下半身が……」


「~~っ」


 上半身はまだ痩せ気味であるのに対し、何故か下半身は肉付きがよくなったようだ。

 具体的な言葉にされ、もう恥ずかしくて堪らなくなったのか、脱いだ服で隠してしまう。


「うん、背は伸びてないのに脚太くなったね。あとお尻も」


「う、うるさい! なってないったらなってない!」


 ひたすらじっくり観察していたルナは、シアの太ももとお尻をペチペチ叩きながら言う。

 そう、背は伸びていないのだ。恐らく数ミリくらいは変わっているだろうが、ハッキリ言って変化無しである。


 言われた事を全て否定するシアだが、いくら彼女でも自分の体の事くらいは分かっている。

 いつからか自覚しているけれど、指摘される恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。



「いやだって、リーリアよりも――」


「もーっ! そうだよ太ったよ! 悪い!? 太ももは太いから太ももって言うんだよ!」


 尚もしつこく追及するルナに対し、シアは観念したのか開き直って宣言した。

 いつのまにかコンプレックスが1つ増えていたらしい。


「背は全然伸びないのに! 何もしてないのに下半身ばっかり!」


 下半身がムッチリしてきた事は理解しつつも、あえて気にしない様にしていたのに。

 皆に見られ指摘されて、ここに来て不満が爆発してしまったようだ。


「何もしてないからなんじゃ……」


「だって鍛錬! 動いてるもん!」


 そんなシアに、再度ルナが言葉を返す。

 運動をしないから太るのだ、と至極当然の話を突き付けた。


 しかし週に3日は鍛錬をしているのだ。

 それは運動じゃないのかと、シアは爆発した勢いのままキレ散らかしている。


「動いてないよ。最近はずっと弓ばっかりじゃん。それでご飯食べて寝て……」


 だがそれさえもルナはバッサリ切り捨てた。


 まさに彼女の言う通りで、もうずっと鍛錬は技術と感覚の向上を軸にしているのだ。

 幼く貧弱な体をどれだけ動かしても、ただひたすら効率が悪い。

 しかもちょっと頑張れば次の日は殆どダウンだ。


 そうなれば自然と、弓や魔法の扱い、アルカナの制御を中心にしていくのは当然である。

 弓の鍛錬の時は上半身を酷使するが、それを支える為の大事な下半身は全然使っていない。

 そこもまた、身体がある程度出来上がってからの方が良いという方針だ。

 あくまで現状は、弱い弓で感覚を養っているに過ぎない。


 なのに毎食頑張って詰め込んで、たっぷりぐっすり眠るのだ。

 だから下半身だけがムッチリしてきたのかもしれない。確証など全く無いけれど。

 きっと毎回疲れてやりきった感があるから、本人は動いていると思い込んでいたのだろう。



「……嘘、そんな事あるの……?」


 それを今言われて思い至ったのか、シアはパンツ一丁のまま愕然としている。


「知らないけど、実際こうなってるし」


「そんなぁ……」


 結局本当かどうかなど分からない。

 しかし事実として太っ……肉が付いたのだから仕方ない。


 どうやらシアは、その辺りの事はしっかり気にするタイプらしい。

 すっかり女の子らしくなったものである。


「いや、その歳で太ったは無いでしょ。ただの成長だって」


「そうそう、気にする歳じゃないって」


 落ち込んでいるシアを放置は出来ず、セシリアとリリーナはこれまた至極当然の言葉を伝える。

 高々10歳の子供が、一体何を悩んでショックを受けているんだと慰めた。


 確かにちょっとムッチリしてはいるが、元々が歳不相応に幼く痩せた体だ。

 むしろ健康的で喜ぶべき事であるのは間違いない。


「上に伸びないのに、成長……?」


 しかしそれなら何故身長が伸びないのかとシアは呟いた。

 下半身だけが横に成長されても、それはそれで困るのもまた事実である。


「あー……うん、そういう事もある……かな?」


「そ、そのうちね! きっと! 大丈夫!」


 それ以上の慰めの言葉が出てこなかった2人は、最早投げやりに曖昧な言葉で終わらせた。

 成長など人其々。よくよく思い知っているリリーナは若干の同情がありそうだ。


「リーリアはちゃんと成長してるのに……」


「あたし!?」


 シアは隣のリーリアを恨めしそうな目で見た。

 自分に話が向かうとは思ってなかったらしい彼女は驚く。


 だが実際、多少の身長の伸びを見せているし、少しずつ子供から大人へと変わり始めているのだ。


「まぁ確かに、リーリアはしっかり成長してるかもね」


 それを聞いてルナは改めて2人を見比べる。

 分かりやすいのは胸だろう。未だぺったんこなシアに対し、リーリアはほんのりと膨らみを見せている。

 あからさまな視線を受けて、2人は胸を隠した。


 先程からして、精霊というのは本当に遠慮が無いらしい。

 こんなにも人の体型に踏み込んでいくなんて、しっかり怒られた方が良いだろう。


「……おかしい。私が10歳の頃なんてそんな……なんで……」


「ぅわ!? こっちまで!?」


 妹の成長を知って、当時の自分と比べたリリーナが絶望した顔で呟く。

 隣に居たセシリアは、そんなに落ち込む程なのかと対応に困って引いた。


「さ、さっさと入ろうっと!」


 シアとリリーナからなんだか嫌な視線を受けた当のリーリアは、居た堪れなくなって逃げるようにお風呂へと急いだ。


「「どうして……」」


 それを見送った2人は改めて自分の胸に手を置き、俯いて疑問の声を呟いた。


「あーあ、ダメだこりゃ」


「ほら、2人とも行くよ!」


 ルナからすればどうでもいい事であり、セシリアは自分が何を言っても嫌味になると判断した。

 なので揃って呆れるだけで、慰めようとはしなかった。


 そもそもいつまで下着姿で固まっているんだと急かしていく。


「そうだぞ、早く脱げ」


「うひゃあ!? なにすんの!?」


 あろうことか、ルナは動かなくなったシアのパンツを掴んで引っ張る。

 流石にいきなりパンツを脱がされかければ一瞬で再起動したらしい。


「お風呂だからでしょ。行くよ」


「はいはい……」


 どうせ脱ぐ事にはなるのだが、だからと言って脱がされるのは恥ずかしい。

 固まっていた自分が悪いとも理解しているので、文句は言わずに改めて自分で脱いでお風呂へ向かった。


「リリーナ」


 それを見ていたセシリアは、同じく固まっていたリリーナに向かって悪戯っぽくニヤリと笑い、手をワキワキさせながら近づいた。


「自分で脱ぐわ!」


 何をされるか察した彼女は焦って逃げ、どうにか無事に自分で脱いでいく。

 ついにシアだけでなく、自分にまで来るのかと若干の危機感を抱いたようだ。


 そうしてようやくお風呂場へと集まった。

 ただ服を脱いだだけで、随分と賑やかな少女達だ。

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