第133話 夢見る願い 4
「ほら、じゃあ次だ。シアの力で作った魔道具だぞ」
「え? あ、じゃあ色々調べたり作ってたのは……」
次を開けようってリアーネさんが言いながら2つの小さな箱を持ってきた。
昨日やたらと細かく調べてたのも、最初からそういう事だったんだ。
しかも私の為だけに……
「アルカナって呼ぶようにしたんだって? と言う事で名付けてアルカナ魔道具だ。幸いにもアクセサリーの形として作れたから、常に持ち歩けるぞ」
あ、そうそう、そういえば名前変えたんだっけ。全く慣れない。
名付けてっていうかそのまま……誰も突っ込まないけど。
でも魔道具で何をするんだろう。
本当に色々細かく調べてたから、予想出来る物が多すぎる。
「さ、これだ。2つあるけど、まずはこっち」
そう言って渡された箱を開けてみれば、中には……ブローチ?
数センチ程の赤い魔石と、その周りを金で装飾した綺麗な物。
うん、多分金だよね……これ。えっ、こんなに凄い物を貰っちゃっていいんだろうか?
あ、でもこの世界って別に金とか特別高価じゃないんだっけ?
なんにせよ、本当に綺麗で嬉しい。
「流石に装飾を1から作るのは無理があるから、良く使われる形から少し加工しただけなんだけどね」
「そんな、これでも全然……ほんとに嬉しいよ」
まぁそれはね、いくらなんでも金属の成形からやってたら大変すぎる。
アクセサリーとして基本になる色んな形があって、それを使ったってだけ。
むしろそこから少しでも加工して特別に作ってくれたって事だから、ありがとうなんて言葉じゃ足りないかも。
「あとは魔石も悩んだんだよね。シアに似合う色を考えたんだけど、あえて目立つ赤にしてみた。ちなみに勿論合金だからね、普段使っていても耐久は気にしなくていいよ」
そっか、色も沢山あるもんね。綺麗な赤だし、目立つから好きかも。
そして合金だった。
アクセサリーだったら当たり前か。金そのものじゃ簡単に傷付いちゃうもんね。
でも気にしなくていい程の耐久って、何との合金だろう……やっぱ金属も地球とは違うのかな?
まぁ今考える事じゃないや。常に気を付けて扱える自信は無いし助かるな。
「魔力を流してごらん。実際に確認が出来なかったから不備があったら調整しなきゃならないんだ」
「ん、分かった」
ああ、私にしか使えなかったら確認も出来ないか。そりゃそうだよね。
とりあえず言われた通りに魔力を流したら、勝手にいつもの球状の障壁――アルカナの盾が作られた。
全く意識してないのに、しっかり丸くなってるから凄く楽だ。
硬さと大きさ、変形や固定するかって操作は流石に意思次第みたいだけど、勝手に維持してくれてるから負担が全然違う。
魔力の消費も変わらない……どころか、魔力をどれだけ流すかで強度の調整が出来ちゃう。
とんでもないや。
「凄い! なんかもうなんて言っていいか分かんないくらい凄いよ!」
「問題無さそうなら良かった。これから使っていく中で、気になった事があれば遠慮なく言ってほしい。私も勉強になるしね」
「分かった、今度色々試してみる!」
とりあえず一旦障壁……じゃない、アルカナの盾は消しておく。
これ名前変える意味あったのかな。なんか面倒な気がしてきた。
ていうかこんな凄い物を1日で作ったの?
仕組み自体は単純だからとか?
ダリルさんが興味深そうに見てたけど、うん、また今度にしよ。
「じゃあ次はこっちだ」
そういえば2つ作ったって言ってたっけ。
今のが凄くて一瞬で忘れてたよ。
こんなのを2つもなんて……もうなんてお礼を言えばいいのやら。
「これは……なんだろう?」
開けて見れば、小さな赤い魔石が2つ、金の鎖みたいなので輪っかになってる。
何かは全然わかんないや。ネックレスにしては小さいし。
でもやっぱり綺麗だ。
どっちも私みたいな子供が付ける物じゃないような高級感。大事にしよう。
「それはブレスレットだね。アクセサリーとしては少し邪魔になるかもしれないけど、用途としては手に付けた方が良いと思ってね」
「あ、そうなんだ……こうかな?」
腕に付けるらしい。よく見れば付け外しが出来るようになってた。
とりあえず右手にグルリ……悪くない。
確かに何処かにぶつけたりしそうだけど、用途に合わせた理由があるみたいだ。
「特に頑丈な合金にしたから、日常生活程度じゃ傷は気にしなくて大丈夫だ」
「へぇ~……」
やっぱりこの世界特有の金属とかありそうだ。
金の装飾として使うような合金でそこまでの物は普通じゃないと思う。
「それは剣と矢を作る魔道具だ。魔石がどっちも同じ形だから分かりづらいけど、使う本人なら分かる筈」
そういえば剣とか矢とか、そんな感じの事を言ってた気がする。
剣の形とか無理って思ってたけど……魔道具にしてしまえば出来ちゃうのか。凄いなぁ。
ていうか、だから今日は弓を持ってきたんだね。
気になって仕方ないから、もう魔力を流しちゃう。
「わっ」
そしたら半透明の剣が手の辺りに出てきたから、思わずびっくりして声が出た。
本当に剣の形してる……なんかもう凄い以外に言葉が出てこない。
ていうか落としちゃった。
これ出した瞬間に掴まないとならないのか。その辺りも意識しなきゃかな。
「私は剣とか武器には詳しくないから、リリーナの剣を参考にしたんだけど……こんな感じでどうかな?」
「良いと思うぞ。嬢ちゃんには少し大きいが、成長すれば大丈夫だろう。護拳もあるし、片刃で扱いやすいんじゃないか?」
落とした剣を団長が拾って、なにやら2人で話してる。確かにリリーナの剣に似てる、かも?
護拳って言うらしい柄のあれが付いてるのは一緒だけど、こっちは片刃で少しだけ湾曲してる。
正直カッコ良くてワクワクするけど、剣なんて使える気はしない。
とにかく、弓と合わせて剣の扱いも要練習かな……
「でもまぁ、これらはまた今度にしよう。こんなとこでやる事でも無い」
そして団長は剣を消すようにって私を見て言った。
まぁ確かに、お祝いの場、料理の傍で剣やらなんやら出すのもちょっとね。
素直に言われた通りにして、次のプレゼントに移っていった。




