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第128話 誕生日 5 我流って言うとちょっとカッコイイ

「問題無い。当たればいいんだから、自分なりに慣れて貰うだけだ」


 しかし団長としては別に構わないらしい。

 なかなかに割り切っている意見だがそれでいいのだろうか。


「えぇ……そんなんでいいの……?」


 シアもそれは流石にどうなのかと、微妙そうな顔で反応する。


 教えてもらう立場で図々しいかもしれないが、そんないい加減な感じでいいのかと呆れそうになる。


「地域によっちゃ流派だってあるが……何を学んだ所で、結局は当たらなきゃ意味無いしな。やり易い形を自分で見つけりゃそれでいい」


 一応ちゃんと考えた上での話なのだと、フェリクスがフォローを入れる。


 やはり武器というものは使い方――流派が存在するが、シアの知るそれとは若干考えが違うようだ。

 あくまで考え方の1つであり、我流や身近な者に教わるのが殆どらしい。


 というかそういった物が纏まって広まるのが流派だろう。

 むしろ最低限の基本となる事を除き、自分なりに考えて身に付けろという流派だと言えなくもないかもしれない。



「ほんとにそういうものなの……?」


 前世の感覚的にはどうしても違和感があるのか、未だシアは懐疑的だ。

 大人達はその意見で纏まっているようなので、セシリア達の方を向き未だ微妙そうな顔で訊ねる。


「弓に関しては知らないかなぁ……ただまぁ、当たらなきゃ意味無いっていうのは確かにそうね」


「そういえば皆そんな感じかもね」


 と、聞かれても知らない事は答えようが無い。

 リリーナは苦笑いしつつも、彼らが言っている事も確かにその通りだろうな……と賛同している様子。

 そしてそれはセシリアも同じらしく、曖昧な呟きが続いた。


 そんな感じってどんな感じだと聞きたいが、恐らく言っている本人もよく分かっていないだろう。

 分かりやすく決まった型のような動きをしない、というような感想なのだろうか。


 そもそも彼女達も、其々剣と槍を使うが我流だ。

 自分なりにしっくりくる武器を選び、周囲から基本を学び、鍛錬と実戦で使い方を身に付けていった。



「実戦はあらゆる状況に臨機応変に対応しなきゃならん。その為に色んな型を学ぶってのは確かにあるが、結局自分のやり易い様にやるのが一番だ」


 こういう時に説明するのはやはりダリルだ。

 どうやらこの世界は弓に限らず、武器全般がそういう考えの元で使われているらしい。


 なにせ地球とは違い、戦いの対象が多い。


 魔物や獣、亜人に魔法生物……場合によっては人同士。脅威となる攻撃手段どころか、姿形もとにかく多種多様。

 考えるべき状況が多すぎる故に、どうしてもそれに合わせた型も多くなってしまう。

 だから体を動かすままに、感覚のままに……それが軸なのだ。


 そういう意味では、セシリア達の鍛錬は団長ら対人を元にしているので不十分。あくまで基礎でしかない。

 この経験を元に実戦で学べ、という事だ。


「それを誰かが纏めたのが流派だしな。少なくとも俺の知ってるのはそういう奴ばかりだよ」


 団長はそう言って話を切り上げようとする。

 これ以上説明のしようもないので、とにかくそういう物なんだと納得させて、さっさと次の話へ移りたいようだ。


「まぁ、とりあえず分かったけど……つまり好きにやれって事?」


「そういう事だ。最低限の基本は教えるがその後は……申し訳ないが嬢ちゃん次第だ」


 なんにせよ彼らの言いたい事はシアも分かった。

 結局は自分で考えて好きなようにやればいいらしい。


 とは言え、彼らも殆ど放置に近い対応になる事には若干気が引けているのか謝っている。

 むしろ今までが皆揃ってやたらと気に掛けすぎなくらいだ。


「はーい」


 何はともあれ、そうと決まれば自分なりに考えてみる。なんだかんだ素直だ。


 それに、これなら彼らに余計な負担を掛けずに済むというのもある。

 どうにか時間を作って、セシリア達を見て自分を見て仕事まで、というのが少しでも軽減されるならそれで良いと彼女は思っている。


 鍛えてもらう、教えてもらう、それに甘えてばかりではダメだと改めて考え直したようだ。

 正直色んな面で甘えてばかりで、見た目相応の子供でしかないけれど……やはり何度も言うように、中身は大人のつもりでもあるのだ。



 しかし話が逸れて時間を食ってしまった。


 シア以外の鍛錬もあるので、とっとと最低限の使い方だけでも教えてしまおうと団長は空気を切り替えた。


 そうしてダリルが離れた所――邪魔にならない鍛錬場の隅の方に土で壁と的らしきものを作り、指導が始まる。

 セシリア達は離れた所で待機中だ。



 勿論、弓の使い方くらいはシアも前世の知識で多少は知っている。

 詳しくは無くとも、なんとなくこういう感じ……というイメージは持っているのだが、ここは魔法の世界。


 腕や指を保護する防具など存在せず魔力障壁で護る事になるし、弓自体も身体強化に物を言わせて制御する面がある。


 弓の左右どちらに矢を番えるのか、弦の引き方や指の形も個人の好みでしかないので、一般的な使い方をいくつか教えるだけだ。


 これはスポーツや武道では無く、命を懸けて敵を殺し生き残る為の武器と技術だ。

 シアの曖昧な知識にある細かいルールや作法など、誰一人考えもしない事。


 基本的な事を教わる中で、彼女も改めて理解した。

 自分が今持っている物が何の為の物なのか――それを持つ意味を。

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