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第127話 誕生日 4 エルフと言えば弓?

 で、そんな彼女もギルドへと到着し、早くも日常と感じつつある鍛錬が始まる。


 昨日大人達が話していた通り、まずはシアに弓の使い方を教える。

 ただし、この場に弓を扱う者が居ないので基本を教えるだけだ。

 勿論知り合いの中には弓を使う者は居るけれど、唐突に子供に教えてくれなんて無理な話。


 彼女の力で矢が作れるなら……という理由で決めた事でもあるので、そもそもシアに向いている武器かどうかさえ分からない。



「お前達はちょっと待っててくれ。――ほれ、嬢ちゃんは今日はこれだ」


 毎度の事の様に、口火を開くのは団長だ。皆を纏める最も上の立場であるからだろう。

 一旦セシリア達は後回しにして、シアに弓を手渡す。


「弓? 私には引けなかったけど……」


「一応だいぶ弱い弓を用意した。多分使えると思うが、とりあえず試してみろ」


 シアは困惑しているが、言い出しっぺのダリルがちゃんと考えて用意してくれているので恐らく大丈夫だ。


 1つ問題があるとすれば、シアにとっては少し大きい事だがそこは仕方ない。

 極一般的なサイズであって、シアが幼過ぎるだけだ。


「ん。――ふぬうぅ……っ!」


 まぁそういう事なら、と言われた通り弦を引いてみる。

 とりあえず身体強化は無しで素の状態だが、以前とは違いちゃんと引けたようで、ひとまずは安心か。


「……ギリギリか?」


「なんとか……」


 ただし、そういう事らしい。なんとも非力すぎる。


「とりあえず素で引けたなら、少しだけ強化したら楽だろう」


 それでも素の状態で引けるなら、多少の身体強化をするだけでもだいぶ楽になる……はずなのだが、その強化も彼女には負担が大きい。


 教える側からすればとにかく色々と面倒な子だが、そんな事は誰も思わない。



「身体強化は成長するまで控えた方が良いのか、少しずつでも慣らしていった方が良いのか……どっちだろうな」


「分からん。調べればなにかしら前例は出てくるだろうが……」


 むしろ真剣に考えてくれる程だ。

 強化を使うか使わないか、どうするべきかをフェリクスが悩み呟く。

 流石のダリルも、貧弱な子供が身体強化を使う事による影響など知り得ない。


「トレーニングとして考えれば強化した方が効率は良いんだし、少しずつ慣らすか」


「そうするか。流石に逆効果なんて事は有り得ないだろう」


 勿論と言っていいのか、強化をすればより強い負担となるので体は強くなる。

 筋肉がひたすら大きく強くなるという訳ではないが、強い負担に体が耐えられるようになっていくのだ。


 なので団長が言う通り少しずつ慣らしていった方が効率は良いはずだ。

 その分疲労等はキツイ事になるが、そこはもう耐えてもらうしかない。


 それで行こう、とフェリクスも賛同したので……シアには厳しい事になるが、そういう方針に決まってしまったようだ。


「うぇー……筋肉痛がぁ……」


 心底嫌そうな顔で嘆いている。実際の痛みなど本人以外には分からないが、かなり痛いのだろう。


 走り込んだり、単純な体の動かし方を学ぶだけで、次の日1日まともに動けなかったのだ。

 他人からは想像も出来ない程の負担なのは間違いない。


「文句言うな。むしろ痛いって事は強くなってるって事だ、我慢しろ」


 しかしそこはなんだかんだ厳しい団長。

 決して無理をさせるつもりは無いが、体を強くするには多少の無理をしなければならない二律背反に悩む――素振りも見せずにキッパリと言い切った。


「はーい……」


 言われたシアも、受け入れるしかないと早々に諦めて気の無い返事を返した。

 強くなる為のやる気は有れど、体を虐めたい訳ではないらしい。


 痛みと疲労が酷い以上それも分からなくは無い。

 しかしそんな甘っちょろい考えでは彼女の望む成長は見込め無さそうなので、団長の厳しさは良い薬になるだろう。



「頑張ってねー、シアちゃん。私は苦手だから弓は教えてあげられないけど」


 シアがつらそうにしているのを見たくは無い。だがこれも必要な試練。

 そう考えて心を鬼に……しているかは分からないが、横で会話を聞いていたセシリアが応援を飛ばす。


「私も。なんかしっくり来ないのよね」


 残念ながらリリーナも弓は不得手らしい。まぁ使えたとしても、シアに教えてあげる余裕も無いのだけれど。


「ていうか今更だけど、弓なんて誰も教えられないんじゃ……?」


 と、ここでセシルが気付く。

 この場に弓をそれなりのレベルで扱える者が居ないのだ。


 一応男達は多少使える程度ではあるけれど、それでは教えるというには少し厳しいかもしれない。

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