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第117話 一旦休憩 3 不憫な部外者

「あたしの名前、もしかして凄い変な名前にされかねなかったのかな……」


「ルナは特別。他は難しいよ」


 自分でセンスが無いと言ってしまうシアを見て、ルナは名付けてもらった事を振り返り若干怖くなったらしい。

 しかしシアとしてはルナだけが特別だったのだと、きっぱりと言い切った。


「うへへ……特別……」


 ルナはルナで、特別だった事を教えられてなんだか嬉しそうだ。

 怖がったり嬉しがったりと素直な奴である。


「へぇ~、ルナの名前ってシアちゃんが付けたんだ」


「そういえば精霊の名前がどういう物か考えた事もなかったな」


 それを聞いていたセシリアが意外そうに驚いた。

 まぁ、そんな事は普通は誰も考えさえしないのだから、彼女の反応も当たり前ではある。

 ダリルも同じく驚いたが、それよりも精霊の名前について不思議がっているようだ。


「1人で好きに生きてる精霊に名前なんて、基本的に必要無いからね。シアと仲良くなって、名前が無いと困るからつけてもらったんだ」


 なのでルナはいつぞや話したように説明してあげる。

 自分で名前を考えて名乗る精霊も当たり前にいるけれど、少なくともルナは違った。

 そういうものなのか、と周りもあっさり納得したようだ。


「本当にお前達がいつどうやって出会ったのか不思議なもんだ。出会ってすぐに山を降りてきたにしては仲が良いしな」


 そして団長は改めて、彼女達がいつ出会って仲良くなったのか疑問に思ったらしい。

 単純に気になっただけで訝しむつもりは全く無いのだが、その辺りを適当な嘘で誤魔化した彼女達には困る話題でもある。

 なんて言えばいいかな、と2人で顔を見合わせるが相談は出来ないので諦めた。


「ボロボロのシアを助けただけだよ。あんまりにも酷いから、ゆっくり時間掛けて元気になるまでお世話してただけ」


 とりあえずなんかそれっぽい事を言っておけばいいか、と出会った時の事だけを語る。嘘ではない。

 そしてその療養こそが、充分仲良くなれるだけの時間だったのだと思ってくれるだろう。


「あの頃は寝てばかりだったから、いつとか……どれくらいとかは全然分かんない」


 ルナが良い感じに話をしてくれたので、それに便乗してシアも補足する。

 2人とも本当に嘘は言っていないが、事実を上手い事曖昧に伝えている。

 大して深く考えてもいないのに自然とそういう言葉になるあたりが面白い。


 そして元より誰も追及する気など無い。

 皆つらい話だと思っているので、この話を聞いたなら今後は気にする事もないだろう。


「そうか……まぁとにかく、これでひとまずやりたい事は出来たんだし、気分変えるぞー」


 やっぱり触れづらい話題なので、団長はさっさと話を変えようと立ち上がりながら皆に声を掛けた。


 どうやらこれで鍛錬に移るのだろうが、言ってる本人はまだ疲れているのでどうするつもりなのかは分からない。

 それでも皆はその声に合わせて素直に気分を切り替えていく。



「俺はどうすりゃいいんだ……」


 いつの間にか近くに来ていたのか、地面を綺麗に戻していたユーリスが呟く。

 どうするもなにも、帰るしかないのだが。


「あ、まだ居たんだ」


「いつの間に……気付かなかったよ」


 シアとルナは聞き逃さずに弄る。

 近くに居た事に全く気付いていなかったどころか、存在を忘れかけていた節もあるが、そこまで言うのも可哀想と思って一言だけにした。


「ずっと居たよ! まだってなんだよ、さっさと帰れってか!?」


 そしてやはりしっかりと反応してあげる。

 というか自分でも分かっているなら大人しく帰った方が良いと思う。


 団長の方針としても今は鍛錬に参加させてもらえないだろうし、ここに居ても何も出来ないだろう。

 むしろ雑用でもしてくれるのだろうか。


「そうだ。一応部外者だろうが。いつまでも鍛錬場に居座るな」


 その団長から冗談めかして辛辣な言葉が飛んでくる。

 一応、詳しい事情は公言しない事にしたので未だシアも周りから見れば部外者扱いなのだが……それはいいんだろうか。


「あーもう、分かったよ……大人しく帰るよ」


 何はともあれ、身内であっても彼が部外者なのは変わらない。

 結局何も言えないので、しょんぼりしながら帰ることにしたらしい。


 しかしやはりシアの特別扱いにはまだ少しだけ、何も思わない訳でもないようだ。

 恨めしそうに彼女をチラッと見てからトボトボと歩いていく。

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