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第115話 一旦休憩 1 イメージ大事

「で、どうだ? 一般的な範囲でなら何だって防げるだろうって事は分かったわけだが……流石にその具体的な基準なんてのは感じ取れるものじゃなかったか?」


「うーん……あんなに頑張ってもらっておいて悪いけど、全然分かんない」


 団長がシアへ確認も含めて問いかけたが、どうやら彼女からするとさっぱりだったようだ。


 せっかく鍛錬の時間を使って、しかも物凄く疲れるような事をさせてまで試したというのに、そんな答えしか返せない事が申し訳ないらしい。

 シアはしょんぼりしている。


「まぁ、受けて大丈夫かどうかなんて判断は難しいのも当然か」


 その答えは予想していたのかあっさりと受け入れた。

 しかし実際、何回も様々な攻撃で突破される経験を繰り返してようやく判断出来るかも……と言っていいような事だ。

 どのくらいの攻撃まで防げるのかという事は分かったが、その判断まで出来るとまでは彼も最初から思っていなかったのだろう。


「ごめんなさい……」


 少なくとも自分の為にと考えてくれた、と分かっているのでシアは謝った。

 しかし別に謝る程の事ではないので、団長は彼女の頭を撫でてあげる。

 体格差が有りすぎるので座ったままでも届くのだ。


「俺達は基本的に避けるのが当たり前だ。どんな攻撃も脅威と見て、回避を第一に考える。お前はそれを防いでしまえるから、本来考えなくていい事を考えなきゃならないって事だ。気に病まなくていいさ」


 彼の言う通り、攻撃は出来る限り避けるのが当たり前であり……防いで耐えきれるかどうかなど正直な所わざわざ考えない場合が殆どだ。

 そんな判断をする余裕など無い故に、辛うじて防ごうとするのだから。


 盾に魔装を纏って使う場合もなくはないが、持って動き回るのも正直邪魔である。

 なのでハンターは盾を持たない人が圧倒的に多い。精々が防衛の時くらいだろうか。


 同じく魔装で覆った武器で弾くなり防ぐ事も多いが、とにかく基本は回避。

 身を護る魔力障壁があったとしても、わざわざ受けてやる筈も無いのだ。



「それでも参考くらいにはなっただろう?」


「そりゃあもう。罅どころか、万全に近い時に壊れるなんて初めてだし」


 若干落ち込んでしまったシアを慰めるようにダリルが声を掛けた。

 1つの経験として見ればかなり貴重な物だ。参考くらい、なんて軽い物ではない。


 過去に壊されたのは、母に庇われた時と先日のグリフォンの時。

 どちらも自身が限界を迎えていた状態だった。


「あんな防御が出来れば、そりゃあ避けようなんて思わないよな」


 フェリクスもいつの間にか戻ってきて話を聞いていたようで口を挟んだ。言い訳はすんなりと終わったらしい。


 彼の言う通り、あれほどの防御手段を持っているなら避けようとしなくなるのも自然かもしれない。

 ほぼ確実に安全に防げるのに、確実に避けられるか分からない行動は逆に危険である。


「なんにせよ今後は避ける事も考えろ。常に消耗の激しい防御を繰り返したって無駄……とは言わないが勿体無い。必要無ければ避けられるようになれ」


「分かった。動けるように頑張る」


 それでもやはり避けられるようになるに越したことはない。

 ダリルは改めてこれからの課題を伝える。彼女もそれはよく理解出来ているのか、素直に受け止めて返事を返した。


「消耗は確かに無視できないだろうな。随分と厳しそうだし……」


 結局のところ問題は消耗の激しさだろう。団長はシアを見て呟いた。

 いくら防げても、後でクタクタになっていたら戦闘では危険だ。


 全力での攻撃が出来ないのと同じで、様々な状況を考えなければならないのが実戦なのだ。

 今まではそれも全てルナが助けてくれていたのだけど、その状態から脱却したいのなら重要な事である。


「その消耗についてなんだけどな。もしかして今まで明確な強度のイメージも無く使っていたんじゃないか? 障壁を作るときにいつも何を考えていた?」


「え……うーん? 絶対護るって思って……確かにイメージなんてなんにも……」


 ここでダリルがまたもや何か考えていた事を話しだした。シアが力を使う様子を何回か見てきたが、どうも強度のイメージをしていないのではと考えたようだ。


 そして彼の言葉はまたもや事実だった。

 シアはいつも確実な護りをイメージしていただけで、具体的な強度など考えた事も無かったのだ。

 そもそも力に目覚めた時点で、どうしても護りたいのだという意識だけだったし、それで充分すぎる防御になっていた。


「そうか。なら消耗が激しいのはその所為かもな」


「どういう事? シアのやり方が悪かったの?」


 返答を聞いて納得したようにダリルが言う。

 今まで問題があったようには思えなかったが何か間違っていたのだろうか、とルナは疑問を持ったらしい。


「具体的なイメージも無く、絶対護れるようになんて思ってたら自然と全力で作るようになったんだろう。あらゆる場合において常に全力だなんて、そりゃあ疲れるってもんだ」


 予想が的中したからか、確信を持って説明を続ける。

 シアは今まで常に全力だったから消耗が激しかっただけであり、本来はもっと柔軟に使えるはずなのだ。

 

火の魔法だって、どんな形で使うかとは別に、どれくらいの熱なのかというイメージをする。

 彼女の力も形以外に強度もイメージしなければならない訳だ。


 ただ、今までずっと全力でやっていたお陰で実現出来る強度はより上がっている。だからあそこまでの防御になっているのだろう。

 全くの偶然ではあるが、ある意味鍛錬としてはかなり良い物になっていたのだ。

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