表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/181

第114話 強度実験 4 目標は高く

「しかし、お前が本当に全力でやってようやくとはな」


 フェリクスが疲れ切った団長を見ながら、障壁の途轍もない防御への感想を言った。事実先の攻撃は物凄かった。


 あれほどの攻撃をする敵などそうは居ないだろう。

 出現すら稀な強力な魔物や、特に危険と言われる魔法生物以外にはシアは安全を確保出来るのだ。

 そりゃあ山でも生き残れるわけだと、皆良い方向へ改めて信じ込んでくれたようだ。


「そうだな……って、おい早く地面綺麗にしろ。人が集まってきた」


 攻撃した本人が一番実感しているのだろうか、感慨深く呟いた。かと思うと慌ててユーリスに地面を戻すように言う。

 どうやら立て続けに物凄い攻撃をしていたせいで、何事かとギルドの者達が集まってきてしまったようだ。


 もう遅いかもしれないが、面倒な事になるのは避けたい。

 とりあえずはさっさと地面を直してしまおうという事らしい。


「また俺かよ……はいはいやりますよ。分かってたよ……お任せください」


 いい加減文句も言い飽きたのか、1人でブツブツと呟きながら大人しく地面を綺麗に均していく。

 将来は苦労人だろう。いや、既にそうかもしれない。



「適当に言い訳してくるか」


「すまん、頼む」


 そんなユーリスを後目に、フェリクスは言い訳の為に歩き出した。


 まぁ鍛錬の為にちょっと本気の攻撃という物を見せていたのだ……とでも言えば皆素直に信じるだろう。

 未だ座り込んだままの団長は、動きたくもないからか若干申し訳無さそうに頼んだ。


「なんか……色々凄すぎて全然反応出来なかったな」


「そうね。これがホントの実力者ってやつよ……先は遠いわ」


「逆に言えば、そんな遥か高みの目標が目の前に居て鍛えてくれてるって事だ。喜ぼうじゃないか」


 ずっと黙ったままだった3人がようやく口を開いた。自分達では推し量れない実力を垣間見て、なかなかにショックだったようだ。

 セシリアは呆けて、リリーナは嘆き、セシルは彼女達を鼓舞した。


「確かにそうだね……頑張ろ」


「まぁ、ここで躓くようなら最初からここで鍛錬してないわ」


 そう言われてしまえば、落ち込んではいられない。

 何よりすぐ傍にシアが居るので、沈んだ姿など見せたくないのだ。


「え? 皆あんな風になりたいの……?」


 同じくずっと黙っていたルナも反応する。彼女も彼女でショックを受けていたらしい。なにせ精霊として実力には自信があったのだ。

 精霊の特徴として、何かに突出した人に同じ物では敵わないというのはあるが、予想以上に彼らが物凄い実力なのだと実感したのだろう。


 過去に彼女が障壁の強度を確かめた時は罅など到底無理だったし、同じような魔法を使ったダリルとの差も明確だった。

 武器による攻撃はともかく、自信のある魔法でさえ彼らに及ばない事を悟ったのだ。


 ついでにそんな彼らを目標として目指す彼女達に、あれほどの力を身に着けたいと思っているのかと若干引いた。

 まぁ、あくまで目標として目指すなら別に良いだろう。



「思ってたよりハンターって凄いんだねぇ……」


 シアも呑気に攻撃の感想と、それを目指す意気込みの彼女達への感想を合わせて呟いた。

 思い返せば、両親を含めハンターの戦いは殆ど見た事が無かった。

 攻撃はからっきしなシアからすればもう理解不能な次元の話なのかもしれない。最早コンプレックスによる嫉妬すら無いようだ。


「言っちゃ悪いけど、魔物よりよっぽど化け物染みてる気がするよ?」


 ルナがなかなか酷い事を言う。

 しかし事実として、そこらの魔物など遥かに超える攻撃だったのだから仕方ない。


 とは言えこの世界の人とはそういうものだ。

 いや、流石に皆が皆ではないけれど……とにかくそうでなければここまで歴史は続かない。


 言われた当人の団長は笑っている。誉め言葉として受け取ったらしい。

 セシリア達も苦笑いで誤魔化そうとしているが、やはり同じような感想は持っていたようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ