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第101話 決闘もどき 1 よろよろ幼女

 さて、セシリア達がまたもや鍛錬場で転がっている頃。

 シアはどうしているのかというと、よろよろと歩きながらギルドを目指していた。

 ルナも合わせてゆっくりと飛んでいる。


 結局あまり寝れずにいたのでリーリアと遊んでいた。

 最近は遊べていなかったのもあって彼女も喜んでいたが、何処かに行ったわけではない。

 あの子もあの子でエルフらしく魔法が好きなようで、シアとルナと共に様々な魔法を使って遊んでいたのだ。



 ちなみに2年以上もの異常な鍛錬のお陰で、シアの魔力量はかなりのものだ。

 彼女の力がやたらと魔力を消費するだけで、普通の属性魔法はむしろいくらでも使えるし大した負担も無い。


 ただし全てが最低限のレベルではあるが、そもそもの使い方が上手いと言った感じだ。

 そうでもなければ、いくらルナが居ても山で野生生活など出来ないとも言えるが。


 そんな事をしているとリアーネが大慌てで帰ってくるなり色々と細かくシアの力について調べ出した。

 魔道具に魔力を込めたり、実際に力を使って実演したりとよく分からないまま繰り返す事数時間。


 ようやく解放された頃に軽く昼食を取り、ギルドへ向かうことにしたのだ。

 リーリアも流石に鍛錬についていく気はないらしい。どうやら魔法は好きだが戦う事に興味は無い様子。

 まぁ10歳でそんな事を考えている子供は極少数だろう。



 全く疲労が抜けていないし、全身筋肉痛でとにかく痛いが――なんとかギルドへ到着。

 この調子では鍛錬など無理があるが、それでも何か出来る事があるかもと考えながら中へ。


 周囲の、またあの子と精霊が来てるのか……なんて視線には気付かない。

 ルナの存在もそうだが、団長達に混ざって鍛錬している子供など気にされて当然でもある。

 

もしかしたら、団長達が目を掛ける程の物凄い才能を秘めた天才児だとでも思ってしまうかもしれない。

 半分くらいはある意味そうとも言えなくもないが、今の所は特別な力を持つだけのアホな子供だ。


 しかし場合によっては、あんな子供なんか見てないでどうせなら他の団員を鍛えてくれ、なんて妬みや僻みを生んでしまいかねない。

 しかもグリフォンに襲われた事も当然知られている訳で……良いのか悪いのか、とにかく注目の的なのだ。


 そんな事など露ほども考えていない当人はのろのろと歩きながら鍛錬場へ入り、休憩中の皆を見つけ駆け寄っていく。

 しかしやはり痛いので途中から呻きながら歩いた。


 そうして呻いて近づいて来るシアに皆も気付いたが、セシリア達はまだ動けないのか動きたくないのか横になっている。



「こんにちは。一応来たけど……もう凄い事になってるね」


 手を挙げたり振ったりして、各々シアを歓迎している大人達へ挨拶。

 彼らも全然余裕だなんて程ではなく、昨日より息が荒いし結構な汗もかいている。


 やっぱり倒れている3人も見て、朝から随分と張り切っていたのだと思ったシアは感心しつつも若干引いている様子。


「おう、体調はどうだ?」


 傍まで来た彼女へと団長が体調を聞く。

 シアが予想以上に貧弱だったので割と心配はしていたらしい。


「全身痛いし、ここまで歩いて来るだけで汗かいちゃった」


「癒してやらないとこんなになるなんてなー」


 正直に答えるが、夏も終わり涼しい時期だというのに歩くだけで軽く汗をかいてしまった。

 ルナは既に心配はしておらず、それどころかシアの体をツンツンと突いて悪戯を始めた。


 全身の痛みで情けない悲鳴を上げて逃げようとするが、動きが遅いのでひたすら虐められている。

 余計な体力を使うな。


「やる気があったとしても無理はするなよ」


 そんな微笑ましいと言えなくも無い2人を眺めながらフェリクスは一応忠告をしておく。

 つい先ほど無理をさせられた気がする、転がっている3人からジトリと視線が突き刺さった。


「シアはお前らとは違うからな。幼過ぎるからゆっくりやっていくしかない」


 扱いの差にもとりあえずちゃんと理由があるので説明してあげるダリル。

 未だまともに成長出来ていない幼い体の彼女では、今の時点で必死になったとしてもあまり意味が無い。


 なにせ実質7歳児くらいと言っていい程に未熟な体で更に貧弱。

 技術は別だが、少なくとも体を動かす事に関しては年単位で考える事だ。


 しかしそんな話も当人は聞いているのか聞いていないのか。

 ルナに突かれてきゃいきゃいはしゃいでいる。



「うー……シアちゃんごめん、せっかく来てくれたけど、動きたくない……」


「同じく……」


 シアが来たのでどうにか構ってあげたいらしいが、それどころではないらしい。

 セシリアもリリーナも気力が無い。相当キツかったようだ。


「とりあえず、昼食をとらなきゃかな……」


「あ、私食べてきちゃった。皆がどうするのか分からなかったから……」


 なんにせよいつまでもここで転がっていても仕方ない。

 昼食に行こうとセシルが体を起こし座り込みながら言うが、シアは食べてきてしまった。


 来たばかりなのに何故か彼女まで息が荒いが、散々ルナに虐められていた所為だ。

 鍛錬もしていないのに更に汗をかいている。


「そりゃまぁ仕方ないか。どうするかなんて連絡とってなかったしな」


 仮にシアが食べて来ないで、皆が食べてしまっていたら可哀想な事になっていたと理解したのか団長は納得した。


 一応リアーネも家に帰ったのだし、それを見越してこちらも食事を終わらせておくべきだったかもしれない。

 そんな事は最早過ぎた話であったが。

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