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3話:団員内のイジメ

 翌日の朝はとても早かった。朝4時に起きて練習着を用意しながら、制服に着替えて学校へ向かう。応援団の練習日常は体育祭が終わるまでの期間だ。


 山本はこの日、前日の疲れが響いていたのか朝7時に起きる。


「やばい!遅刻だ…。嫌な予感しかしない」


 すぐ携帯を見ると、団長を筆頭に3桁に迫る連絡の数にやばいを超えて笑いしか出てこなかった。山本の団長は白石蘭で練習の鬼でもあったので、泣き目になりながら急ぐ。


 練習開始時間に10分遅れながらも学校へ到着した。


「山本!何遅刻してるの?意識が足りない。だから遅刻する。連帯責任にしたいけど、今回が初めてだから何も言わない。遅刻にも度合いがあるから次1人でも遅刻したら体重の半分の重さを重りとして練習してもらうよ」


 この日、山本は泣きながらも練習に励んだ。2日目にして足の爪は剥がれて、重りを付けた状態での柔軟は地獄を超えて気を失うものだ。


 練習も嫌々ながらになる団員も現れる。気持ちがあやふやになっている証拠のようにも見えた。


「やる気ないなら帰って良いよ。邪魔だから」


「君のような人がいるだけで士気が下がるから。退いて」


 白石による怒号は、グラウンド中に広がった。山本の心は次第に疲弊して足の傷は目で確認できるほど深くなり、出来ない自分が嫌になって泣く。


「山本!泣く暇あるなら練習しろよ。だから心が弱いんだよ」


 白石も1つの弱点を踏み台にして1人1人を罵倒する。


 山本の練習が終わり、塾へ行くために制服へ着替えようとするが学校規定のリボンが無いことに気づく。


「あれ?確かここにブラウスと一緒に置いたはず…。どこにいったのかな」


 天然発言をするが、リボンは無惨にも学校の正門に位置する噴水に投げ捨てられていた。


「え、これ誰がしたの…?酷すぎる。なぜ私だけこうやられなければいけないのさ」


 濡れたリボンに立ち尽くすことしかできなかったが、人の視線を感じた。振り向いた時は一瞬しか見えなかったものも、スカートのひらひらが見当たらなかったので男の子がそこにいたと推測する。


「男子…なのかな。でも考えてみれば、男子応援団も合同でやってるよね」


 山本の在学する学校には女子と男子の応援団があり、そのルールはガバガバだ。女子には鉄の掟があるのに対し、男子はふざけ半分のようなものでルールは表向きのもの。


 濡れたリボンを見ながら悔しかったのか、痛めた足を懸命に動かしながら駅へと向かう。


「なんで私だけこんな目に遭わないといけないの…男子は女子更衣室に入るのはダメなのにどうやって入ってからリボンを盗ったのかな」


 いじめられてることに気づいていない山本だが、陰湿ないじめがその日からずっと続いた。リボンから始まり、今度はブラウスも無くなり、着替えの分が水浸しになってしまうという謎のことが起きる。


「女の子だからってこんないじめ許されるわけないよね。本当に…なんで私だけなの」


 1人で嘆くが、写真のシャッター音に気づき遂に犯人を捕まえることができた。


「君が私の服を濡らしたりしたのね。永谷大和君」


 永谷大和は山本と同じクラスの人だが、いじめを好むバカでもある。男子応援団に属するが、頭脳もそこまで良いとは言えない。底辺を彷徨う不良とも言える。


「バレたか。まぁ良いや。俺がいじめてる人を救おうとしたからいけないんだぞ」


「誰の話をしてんのさ、今あなたがやったことは犯罪よ?」


 永谷は不敵な笑みを見せた後、その場を立ち去る。いじめてる人を救うというのはどういう意味なのか理解に苦しんだ。


「よく分からないや。担任に話してこの件は終わらせよう。なみとかに話してないから、心配かけないようにしないとね」


 翌日、永谷は生徒指導の指示により退学が告げられた。いじめられた被害者は不登校で心も疲弊しきっており、生きてるかどうかも確認できないという。


 山本は分からずだったので守山と一緒に練習に励む。白石の拷問的練習に耐えながらなので、声を出す時は泣きながら叫びまくる。


「1、2、3、4、上下前…」


「なんでそこで間違えるの?さっきも間違えていたのに何回間違えたら気が済むの?足の怪我なんか気にする暇あるなら、痛いの我慢して練習しろよ」


「はい!」


 白石による一喝に団員は苦し紛れの返事しか出来なかった。1年目となる山本たちにとっては、地獄の門をまだ潜り抜けたばかりだ。


 練習が終わると、ほとんどの人は日焼けして半泣きで着替えて帰るのだが白石は日焼けの頭文字もなく、楽しんでいる様子でそんな様子に守山紗耶香は憧れている。


「本当に先輩は楽しそうですね」


「え?あ、うん…。今は団長の小山夏菜子さんに任せてるから、OBとして最後まで頑張らないといけないって自覚があるの」


 白石の思いは揺るがぬもので、本当に大切な教えを最後まで貫いて後輩に伝えようとする。そんな白石に守山紗耶香は憧れる。

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