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12話:葛藤の山本

 翌朝、筋肉痛がひどい朝を迎える山本はずっと寝れる状態ではなく涙を流して目が腫れていた。


「私…心配してんのかな。でも家族の事や精神的な事で相談してそれなりの答えを返してるからやっぱり前宮君のこと心配してるみたいだね、まゆちゃん」


 自問自答する山本。これには、卓球部で知り合った前宮とはSNSの投稿から始まる。卓球の試合が終わった後も前宮は密かに自殺を企てており、何度も止めていた。それでも前宮は懲りず自身の首を絞めたり、手首の頭骨動脈目掛けて刃を入れようとする。山本は前宮のことだけでずっと様子を見続けてきたということだ。


「何でこんなに泣いてるのかな…。いつもの朝だよ?何事もないじゃん!練習に行こうよまゆちゃん…泣くんじゃなくて早くここから動いてよ!」


 その場で泣き崩れる山本。その頃学校では守山が遅刻ギリギリで到着しており、山本がいない事に気づく。


「あれ?あの遅刻常習犯今日変だなぁ。私の後にまゆっち来るはずなのに遅すぎる。連絡してみるか」


 守山は担任の朝礼が終わった時間を見てお手洗いの個室へ向かい、山本へ電話をする。難航するかと思われたがすぐに繋がった。


「あ、意外とあっさりだ…。もしもしー!まゆっち?今日どしたん、何かトラブル起きたん?」


「…ごめん。ちょっと泣きすぎて頭痛くてフラフラしてるだけだから。心配かけてごめん。遅れて来るから、大丈夫だよ」


「いや、声を聞く限り大丈夫じゃないよ。今日は練習休んでカフェに行こうよ。話聞くからさ」


 そう言って守山は授業開始前に通話を切り、教室へと戻る。山本は遅れながらも列車に乗り、込み上がる涙を堪えていた。


「大丈夫なのかな…。いくら他人って言っても色々関わっちゃったからな。逆境を笑わないとなみから怒られそうだから、笑おう。涙を拭って日焼け止めで目元を誤魔化してみようかな」


 泣に泣きまくった目元を誤魔化すために、練習で使用していた日焼け止めで涙袋の腫れを抑えた。遅れながら到着すると、守山は怒ってるだろうと思われたが意外な反応だった。


「おはよう!まゆっち。なんか色々あったみたいだから心配したよ。いつものカフェで話そうよ!あ、2限分休んだみたいだからその分の授業内容渡しとくからその辺は大丈夫だよ」


「ごめん…私なんかのために」


「長年の付き合いだから気にしないで」


 その後、残りの授業を受けた後2人は学校から徒歩30分で到着する女子限定のカフェへと向かう。何を食べるのかと思えば、守山が慰めるがために2人の好きなものを注文して払うというらしくない事をした。


「そこまでしなくて良いよ!私なんかのために…」


「元気になって欲しいの!そんな言わず食べてよね!」


 込み上げる涙を我慢しながら山本はチョコレートのパフェを一口頬張る。その顔を見た守山は笑顔で笑う。


「やっぱ可愛い!落ち着いたときでいいから何があったか話してほしい。それが私からの今日の貸し借りね」


「分かった。今日ね…前宮の事が心配になって涙止まらなかったの。自殺を何度か止めて、そのような連絡をもらわずだったからやっと落ち着いてきたなと思った矢先で…」


 またも溢れそうになる涙。それを見て守山はハンカチをそっと渡す。


「なるほどね。確かに同級生だから心配になるよね…。でも、今私たちができるのは元気を送ることもだけどまゆっちが元気じゃなきゃダメじゃん?あの子は病院の人が治療してるから何にも出来ないし、じーっと指咥えて見るしか出来ない。だったら、元気でいなきゃいけないのは私たちの方だから頑張ろうよ。大丈夫、まゆっちは上手だし明るいし私たちの同級生では元気印なんだから!」


 褒める守山に山本はキョトンとする。しかし、理解したのかまた声を出して泣く。落ち着いたところを見計らって手を繋ぎ、支払ってそのまま帰宅の道へと誘う。涙を流しまくった山本の目は赤くなっていた。


「花粉症並みに目が赤くなっちゃったね…。心配だよね…今は早く回復してくれることを心から祈ろうね」


「うんっ!」


 仲の良い2人は姉妹のようにして話をする。その声は一種の音色のように…。

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