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10話:理系文系の選択と悪夢

 山本の進路を考えなければいけない時期へと入った。この高校では、理系か文系かどちらかを選択しなければならない。


「あまり考えた事ないからどっちが良いか分かんないや。こんな時はクラスの声をなんとなく聞いて調べたり、人に聞くに限るね」


 山本は顔を伏せて寝てるように見せながらも耳を立てて声を聞き分ける。数分後その思惑は現実になる。


「おい前宮!お前はどっち行くん?」


「文系だとやること限られるから理系やわ」


 会話の主は前宮と男子応援団で活躍した大山が進路の事で話をしていた。最後まで聞くと大山も前宮も理系を選択するといった内容である、と山本は確信した。


「前宮君や大山君も理系なんだね…私どうしよう。なみとかは決めたのか聞こうかな」


 クラスメートの守山に文理どっちを選択するか参考程度で話すことにした。


「なみー!理系と文系どっち選ぶの?」


「私は文系かなぁ…性格を考えてたけど理系は合わなさそうだなって思ったのよね」


「そんなことないよ!って言いたいけどなんかわかる気がする」


 冗談を話しながらワイワイ騒ぐ2人。いつも通り帰宅して自主練をすると、どっちを選択するか山本は1人考える。まとまらない将来像で迷宮入りしている中、前宮から連絡が入った。


「お疲れ様です。山本さんは文系と理系どちらを選択するか決めたでしょうか?僕は理系を選択しようと思っています」


 日中に聞いた通りのものだった。本番が終わってもなお練習をしていたため、足の痛みもピークに達している。痛みを我慢しながら山本は前宮にこう送った。


「敬語なんか使わないでよ…。こっちがなんか畏まらないといけなくなっちゃう。私も理系に行くよ」


 送信後すぐに気づいた。


「あ、まだ何も決めてないのになんで理系を選んだのだろう…。何かの誘いかな」


 数分後、連絡通知音が部屋に響く。


「一緒ですね!確かに敬語になってましたね。ではここからは…。一緒ならお互い切磋琢磨して頑張ろう!」


 前宮の悪い癖は女子に対しての言葉遣いだ。トラウマが原因で以来女子との会話では敬語がほとんどという…。しかし、山本はそれがむしろ気を使ってしまうということで指摘をした。


「でも、山本さんってなぜ理系を選んだのですか?」


「そうね…将来安泰だからかな。あと敬語になってるよ」


「あ…」


 2人で笑い合う。文理分かれるという事は、専門科目を一気に学び抜くということを意味する。季節は春から夏へと移り変わり、蝉の鳴き声が最盛期を迎える中最後の選択が行われた。


「では皆さんこれで確定でいいですね!」


 担任の一言で、文系理系の選択は終了した。帰宅する山本と守山はその出来事について会話をする。


「分かれちゃったね。でも応援演舞の時は一緒だから良いや」


「悲しいのか、それともそれがあるから大丈夫というのか本当に分からないなぁ。でも、楽しければそれで良いよ!青春は今しか味わえないからさ」


 手を繋いで帰るその姿は姉妹のように見えた。


 山本は家に着くとすぐに前宮へ連絡を取った。


「前宮君!結果どっち選んだの?」


 連絡をして待つが、来る気配が無かった。その時、前宮の身に危機が迫ってることを山本は知る由もない。


 山本が帰宅する10分前、前宮は自転車でいつもの登下校に使う通りを走っていた。


「山本さんは結果どっち選んだのかな…。帰宅して時間を見てから連絡してみよう」


 鼻歌を歌いながら路地裏を自転車で漕いで大通りに出ようと右へ曲がった瞬間、前から来るイヤホンをつけながら走る自転車と正面に激突してしまった。


「君!大丈夫かい?意識あるか?ヤバい…救急車を呼ばなきゃ。誰かAEDを…」


「俺…の身に何が起きたのかな。前がぼやけて見えるよ…」


 そのまま前宮は意識を失った。

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