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1話:空元気な女子中学生

 中学3年生を迎えようとした1人の女の子がいた。その学校は、中高一貫でもあるため高校受験というものは存在しない。刺激が足りない日々を過ごしていた。


「山本さん。またテスト大変なことになってますよ!ちゃんとしないと退学ですよ」


「分かりました」


 いつものように呼ばれる山本。しかし、日々何もすることがなくつまらない授業は居眠りして酷い時は、好みの先生には授業が終わった後に話し倒れるほどだ。そんな彼女には、唯一の楽しみがある。


「なみ!今日も行こうよ」


「まゆっちは相変わらずだなぁ。そんな私もハマってしまったけどね…」


 山本は守山を連れて同じ学校にて行われている、女子の応援演舞の練習風景を見に放課後などを利用して見学することが多くなった。彼女の心を満たすのは、そんな女子たちが体を傷つけながらも見せつける応援という素晴らしい動作を見て英気を養うというものだ。


「やっぱりすごいよね。私もやりたいな…」


「まゆっちはまずテストをどうにかしないとダメじゃん。それに遅刻ばかりするし、あれを見る限り遅刻したら鬼のように怒られるぞ」


 守山は山本のことを思って心配する。


 守山も応援団を見ては少し憧れている部分もあった。それは、姉の紗耶香が参加しているという事だ。年齢的に言うと守山七海たちは中学3年生に対し、紗耶香は高校1年生となるがそんな努力家でもある姉が羨ましく見える。


 放課後家に帰る為、列車に乗った。家に着いた後、中学体育大会で卓球部の練習をする準備を1人で黙々と始める。


「演舞も凄いけど、まずは入ってる部活のために頑張らないとね…。男子人数足りてないから心配だな」


 山本の入っている卓球部は女子の人数が優っているもので、顧問はかなりの数学オタクだ。


 翌日、卓球部の練習参加でラケットとユニフォームを学校へ持参する。同じ部活の女子も続々と揃う。


「おはようまゆっち!」


「あ、おはよう友梨!」


 彼女の名前は植松友梨。山本とは同級生で、卓球部に入ったのも同じ時期。かなりの天然だが、場を盛り上げるムードメーカだ。


 2人はユニフォームへ着替えてラケットを取り出し、素振りと体操を行う。練習の際も山本が憧れる演舞の練習が聞こえる。


「まゆっちはこの演舞練習いつも見てるけどやりたいなって思うの?」


「そういえば友梨ちゃんには言ってなかったね。なんか演舞をする人がかっこよく見えるんだよね。足を痛めながらも、みんなを元気付けれるならそれでいいんじゃないかなって思うんだ」


「まゆっちがやりたいのなら私は応援するよ。だって、私はまゆっちの親友だもんっ」


 2人は笑いながら素振りをする。


 続々と部員が揃う中、男子も見覚えのない人が1人いた。山本の幼馴染でもある上山竜司から説明が始まる。


「あ、男子の方は人数ギリギリ足りたよ。俺の友人だけど前宮涼太だ。遊んでた時に卓球上手かったし、素質があるから連れてきたよ。それじゃ始めようか」


 山本は、この大会がとても面白いものになるんじゃないかと予測した。楽しみというより、人が揃うという事が稀なので卓球の大会で何かが起こる事間違いなしと考える。


 練習が本格的に始まると、前宮が放つスマッシュとラリーの持久力に驚きを隠しきれずにいた。男子の本気度がよく伝わる。大会は個人戦と団体戦が行われ、その団体戦に出るという事だ。山本と植松率いる女子卓球部は、晩年1回戦敗退に終わる。男子も同じだが、男子の方がとても面白い事が起きそうだと山本は直感する。


 休憩時間になると、前宮をグループチャットへ招待してそれぞれが追加する。話をする部員だったが話し口調に違和感を感じる。


「初めまして。あまり自信はありませんが、宜しくお願いします」


 前宮は、同級生相手に敬語ばかり話す。


 殆どの人は面白がるが、山本は変だと感じる。顔も青ざめており、腕には多くの傷が確認できた。休憩後の練習はサーブの練習をしまくったが、変わりはなく終わった。


「あの新しい部員、なんか変だったな。でも大会前までに男子は増えたから良かった」


 違和感はさておき、今は人数が足りたことに胸を撫で下ろすことにした。その夜、チャットのタイムラインを見ていると変なタイムラインが流れていることに気づく。


「これは前宮君のアカウントみたいだけど、内容やばいな」


 山本が見たのは、前宮のSOS投稿だ。両親による虐待と理解してくれない学校側と精神が崩壊しているのだと理解する。


「これ…違和感は間違ってなかった。少しで早く助けなきゃ」


 山本は、すぐさま前宮にチャットを送る。

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