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前世のあたしは 超がつくほどお嬢様だった。
オーウェル王国エイベル侯爵の娘、ヴァイオレット。
国内で一番大きな領地をもち、王宮で一番発言力の強いエイベル侯爵があたしの父だった。
エイベル侯爵の持つ領地はあまりに広大で、王都から遠く離れた飛び地の地方を近くの下級貴族に任せることは
オーウェル王国ではよくある慣習だった。
父の持つ領地の中で、最も辺境の地であるギルモアを管理していたのが領地を持たないリンドリー男爵で、彼はその三男だった。
あたしと彼は同じ貴族とは言え、明らかな差があった。
彼からすると、エイベル侯爵からの縁談なんて断れるはずもなかったのだ。
そう、前世、あたしと彼は夫婦だった。
夫婦になった経緯は簡単。
エイベル侯爵の娘 ヴァイオレット、つまりあたしが たまたま辺境の地へ休暇にでかけ、そこで見かけた奮い立つような美男子リンドリー男爵の三男に一目ぼれし、身分を盾に、縁談をごり押ししたのだ。
リンドリー男爵の三男、ソレイユは優秀な男だった。
ヴァイオレットと結婚しなければ、一生を田舎で過ごし、彼の才能は埋もれたままだっただろう。
幸か不幸か、侯爵令嬢ヴァイオレットは、エイベル侯爵家のたった一人の娘だった。
つまり、侯爵家はあたしが継ぐか、その夫が継ぐかどちらかしかなかった。
リンドリー男爵の三男、ソレイユは優秀な男だったため、すぐにその才能を認められ、エイベル侯爵ばかりか、王様や大臣たちにも認められ、エイベル侯爵家の後継ぎに納まった。
結婚後、ソレイユは次期侯爵として、領地を納める仕事に、城での次期要職候補として活躍した。
あたしの一目ぼれで強引に結婚することになった二人だったが、結婚後、二人の間には穏やかな愛が育ち、息子と娘一人ずつ授かり、二人は幸せに暮らしましたとさ………
って、なればよかったんだけど……。
彼が優秀だったのは本当。
次期侯爵としての務めを立派に果たしていたし、あっという間に城での地位と人気を築いた。
彼は本当に申し分のない、侯爵家の婿だった……。
そして、あたしとの結婚生活もうまくいっていた。
あたしが強引に縁談を取り付けたけれど、彼はそのことに対して一度も不満を漏らさなかった。
強引で我儘な侯爵令嬢であるあたしに、いつも優しくしてくれたし、妻としてちゃんと扱ってくれた。
だけど……。
結婚して、たった数年で彼は病気で帰らぬ人となった。
重病なんかじゃなかった。
ほんの軽い風邪だった。
でも、連日の城での仕事に侯爵家の仕事、過労と慣れない環境からくるストレス……。
彼の体は、思っていたよりずっと弱っていた。
体調がよくなっていないのに、無理をして、更に体調を崩し悪化し、ある晩容態が急変し彼は一人逝ってしまった。
彼は、今際の際、こう言った。
「必ず会おう、生まれ変わってもう一度」と
だが、会うわけにはいかない。
彼の言うように、こうして生まれ変わったとしても。




