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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

肉食の植物に食べられちゃう哀れな人のお話

作者: リール


その森には、凶悪な1本の植物が自生している。


大きな頭部を持ち、そこから鋭いキバで人間を含む多くの動物を積極的に捕食し、舌でその味を確かめる植物が。


大きさは約10メートル。常に毒を分泌している尖った多数の葉っぱと、鋼のように丈夫で、太くで鋭いツルを何本も備えた獰猛な植物だ。


目は見えないが、聴覚とあらゆる動物の熱を感知する器官を持っている。だから、自身の可動域に存在する生物を次々と捕食したり、身を守るためにツルを伸ばして敵の体を貫いたり引き千切ることが出来るのだ。


この植物はそうして身を守りつつ動物を食べ続け、長い年月を生き永らえている。


そんなある日、植物は複数の熱を感知した。


植物は理解した。近くにいるのは人間の女2人と男1人だ。彼らからガチャガチャと響いている音から、鎧でも身にまとっていることが予想できる。


彼らは何かを喋りながらジリジリと近づいている。


喋りながら近づくなんてずいぶんと器用なことをするものだと僅かながら感心した。もっとも、植物は人間の言葉が分からない。理解したいとも思っていないが。



次の瞬間、植物の体に強い衝撃が走った。


この感覚は知っている。剣と呼ばれる長くて鋭い単なる刃物から受ける衝撃だ。気持ちは全く分からないが、多くの人間にとって理想的な武器らしい。


ついで、別の角度からも剣による衝撃がきた。


恐らく、彼らは剣などという刃物ごときでこの植物を断ち切ることが出来ると思っているのだろう。


残念ながら、植物の体には小さなかすり傷さえついていない。この植物は、柔軟性に富んでいる上に極めて強固なのだ。人間の腕力で振り回される刃物ごときで切断出来るわけががない。


人間たちは、何かを大声で喋りながら植物の体を刃物でやみくもに叩いた。感じ取れる熱も上がっている。


哀れなものだ。身の程を知った方がいい。


植物は、ツルを伸ばして彼らが持っている剣を奪った。


そして、自身の口を近づけてそれらをバリバリと咀嚼し、すぐに吐き出す。


飲み込むまでもない。何度も食べてきたが最高にまずい。まずすぎる。こんなものをぶら下げて歩いているというのか、人間は。


それから、なぜか黙ってしまった人間のうちの男をツルで持ち上げ自身の口に放り込み、牙を突き立てた。


鎧と人間の肉、内臓の味が広がる。


大してうまくはないが、人間という存在は、内臓を詰め込んだ肉の塊だ。だから栄養が詰まっていることは確かだし、食べる価値はあると思う。


そうして咀嚼していると、近くの人間たちが甲高い声を上げた。


黙っていたと思えば突然叫び出す。変な生き物だ。


植物はその人間たちを黙らせるためにツルでめった刺しにした後、周囲に散らばっていた刃物の破片を拾い上げ、体を何度も引き裂いた。


常備するほど刃物のことが好きなのであれば、こうして刃物で切り裂かれることもきっと人間にとって嬉しいことなのだろう。


そして最後に、植物は動かなくなったその人間をよくかみ砕いて味を確かめた。


男よりは柔らかくて食べやすい。味は大したことがないが。


人間の肉ってそんなに美味しくないらしいですね。どうせ口にするなら、僕だったら人間よりも熱々のヒレステーキと牛タンを選びます。

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