①決戦
「ああ、我が神!気高く美しき私だけの神よ!照覧あれ、貴方の為に血を捧げましょう、貴方の為に首を捧げましょう!」
狂気的な笑みを浮かべながら、魔性・妻木煕子は大量の虫によって構成された黒い羽織を着ていた。
それは禍々しくも美しく、怨念を吸った血と油を塗り込んだ妖刀のような威厳があった。
文明を破壊しながら進撃を続ける魔性は、涎を垂らしながら自分の首元を優しく撫でた。
「ああ、ああ、楽しい!あなたが楽しければ私も楽しい!」
狂気的に笑いながら、魔性は着物を構成する虫を乱暴に手で掴んだ。
ぶちゅぶちゅぅ!羽や体が潰れる感触が手を伝い、潰された虫の残骸は小さな粒となる。
全部で9つ、形も大きさもほぼ同じのその粒を、魔性は地面に投げつけた。
乱暴に投げつけられたそれは、地面に着いた否や、大爆発を起こした。
瓦礫を吹き飛ばし、残っていた建物を破壊し、爆風を巻き起こす。
「楽しい!壊すのは楽しい!我が神は破壊をお望みだ、十二使徒よ、その身を以て破壊をまき散らせ!」
集まってくる虫を握り潰し、玉にし、それを滅茶苦茶に投げつける。
残骸など気にしない、虫共を盾にするまでも無く、我が身は神の加護に守られている。
慢心、破壊と暴力に魅せられた魔性は、肉体だけではなく心までもがとうとう歪んだ。
狂ったように涎と鼻水を垂らした美しくも禍々しいそれは、玉をまき散らしながら叫んだ。
「さぁ舞台は整った!ならばあとは役者だ!尾張の大うつけか⁉それともギリシャ最強の大英雄か⁉救国の聖女でもいいぞ⁉」
玉だけではなく虫で構成された玄翁を華奢な腕で掴み、それを振り回し破壊をまき散らす。
「ははっ、逃げたか!つまらないつまらない、我が神に捧げるにはお前らは小物過ぎたか!はははは、そりゃあそうですわね!我が神は無敵!有象無象の馬鹿や神と人の雑種如きが敵うはずもない!」
「おおそうかい、んじゃあその雑種如きの蹴りを食らいなBBA!」
流星の如く地面から飛び上がった何かが空中で軌道を変え、涎を垂らしていた魔性の鳩尾に突き刺さったのだ。
速度はもはや音を超え、その衝撃は破壊されていた瓦礫をさらに蹂躙し、周囲のあらゆる物質が粉塵と化した。
「―――――――――アァァアアヅギャァアガアアアッ!!?!?!?!?」
口から血を噴水の如く吹き出す魔性、これでまだ死んでいない辺り、やはり人間の息をとっくに超えていたのが分かった。
空中にてそれを嘲笑いながら、流星の如き少女は言った。
「おいおい雑種に血反吐かぁ!?笑える冗談だなオイ!」
持っていた槍で爆風を起こし、着地と同時に後方へ飛ぶ。
「言ってやれよ大うつけ!バカはお前だって・・・・・・よ!」
姿をくらました大英雄を眼中に捉えられず、魔性は虫の圧縮爆弾を作り出す。
「それで逃げたつもりかぁ⁉甘い甘いぞ雑種ぅぅッ!見つけられないならばこの国ごと消し炭にしてくれるわぁっ!」
そう、先ほどは淫魔に邪魔され阻止されたものの、あの圧縮爆弾、いいやこの魔性はその気になればこの国を丸ごと更地にすることができるのであった。
そうなれば例え不死身のアキレウスとは言えど、360度からの攻撃を食らえば、踵を潰されてしまうに違いない。
だが心配しないでほしい、こちらはそれを許すほど寛大でもなく、出番を大人しく待つほど利口ではない。
「ぬぉおおおっ!アキレウスばかりずるいぞ!儂だってかっこいいとこ見せたーい!」
子どものようにはしゃぎながら、中年の男が刀持ちながら駆ける。
その速度はアキレウスには劣るものの、瞬間的な速度では神々の領域に片足を突っ込んでいた。
爆発的な脚力を以て、尾張の大うつけ織田信長は魔性の間合いに飛び込んだ。
「―――――ひっ」
怯む魔性は次の瞬間には虫の爆弾を投げつけるが、信長はそれを見て笑った。
「かかったなぁ!大逆転ホームランじゃあ!」
なんと振るう刀をひっくり返し、刃ではなく峰で爆弾を殴ったのだ。
爆弾は野球ボールの如く魔性の顔面に突き刺さり、爆発までのカウントダウンを刻み始めた。
信長は刀を鞘に急いでしまい、魔性の顔面を蹴って後ろへと飛んだ。
(やはりバカか⁉このままでは貴様は落下死、免れたとしても重傷、その後この爆弾で死ぬ!)
魔性は屈辱と怒りの中で薄く笑い、顔面の爆弾を取ろうとした。
だがそこで気づいた、今も尚、落下し続ける信長の表情に。
余裕満々の舐め腐った眼でこちらに中指を立てている、血迷ったか、そう嘲笑おうと思った瞬間。
「やることはやったぞアメリア!さっさと迎えにこぉい!」
中年の声が響くと同時に魔性の上空を何かが通過し、地面に激突する寸前の信長をキャッチしていった。
足軽はこれを鉄の鳥と呼び、天下泰平の世の象徴と言った。
ある意味では正解、ある意味では不正解と言ったところか。
その名は飛行機、かつて空を飛んだ女性が、愛用した機体である。
「もうすぐ爆弾が爆発します!衝撃に何かに捕まって衝撃に備えてください!」
操縦席に座る少女がそう叫ぶと、乗っていた誰もが飛行機のあらゆる個所を掴んだ。
「のーぶーなーがーさーま?なんで私も連れて行ってくれなかったんですか理由を言ってくださいさもなければ・・・・・・・・(ボキボキと指を鳴らす)」
「ヒィイイッ!ナポレオンシールド!」
「ホワっつ!?」
おりゃああっ!ぎゃあああっ!二つの罵声が響く飛行機の上には緊張感などない、というかジャンヌとスヌークはもはや酒と肉を貪ってしまっているし、アキレウスなんてもはや寝てしまっている。
注意しても無駄だな、そう察したアメリアはスピードを上げ、自分で取り付けたカーブミラーを見る。
そこにはいつか見た虫の大軍が迫ってきているではないか、叫びたくなる自分の口を一生懸命塞ぎ、アメリアは背後にいる馬鹿共に命令を下す。
「虫の大軍が迫ってきてます!でも妻木煕子ほど強くはないのでそこに有るバズーカで倒せます!」
「何っ!?バズーカ!?」
信長は目をキラキラさせ、おいてあったバズーカに弾を込め、引き金に指を掛ける。
「儂も一回撃って見たかったんじゃよな~!んで、これ打つときなんて言うんじゃっけ?」
「イアハート殿の話によると・・・・・・・『アイアムラ〇ボー!』、でしたっけ?」
「どうでもいいから早く打ってください追い付かれますからァッ!」
「あっ(引き金を引く)」
ドォン!放たれた弾は虫の大軍にぶち当たり、爆発によって他の虫を殺していった。
爆風により顔がえらいことになっている信長と明智、ただひたすらにビビりまくっているナポレオン。
本当にこんなアホなメンバーで世界を救えるのかなぁ、そんな事に笑ってしまう自分も、十分この状況を楽しんでしまっていることに気づいた。
「・・・・・・・・ふふっ」
笑った瞬間、飛行機の背後の遥か先に在る爆弾が起爆した。
町はおろか、大地ですら抉れていく。
「「「「「「「のわああああああああああああああああああああああ!」」」」」」」
がたがたと揺れる機体にしがみ付き、信長は後ろを振り返った。
そこには、かつて自分たちを陥れたはずの大国の、無残な末路が爆発と共に広がっていた。
「・・・・・・・・・・」
言う事は何もない、思うことも、何も。
道場なんてもってのほかだ、仲間を殺されかけたのだから。
でも。
「・・・・・・・ま、アーメンとだけ言っておくかの」
ふざけたつもりだが、心の奥底では分かっている。
あのクソ皇帝も、刀使いも、そこに住む人々も。
自分と同じ、被害者だと言う事に。
あとがき
ついにクライマックスに突入しました!作者です!
もうすぐ百話近くになるんだなぁと思うといろいろ思い返すところがあるなぁなんて思いながらこうしてキーボードを打っていますが、そのうち10話以上がクソ話だという事に気づいて爆笑してしまいましたw
次話投稿がめんどくさい時にやった記憶があるんですが、めんどくさがりすぎですねごめんなさぁいw
今回の言いたいこと。
高所恐怖症。
アメリア尊敬できるわ。
今思ったんですけど俺の小説って個性強いですよね、特にキャラとか。
ちなみにこれ余談ですけど、今一番自分の作品のキャラで推してるのはみんなも大好きアメリアです、今も昔も変わりません。
今回の字数 3302




