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ポルトガルの大うつけ~金平糖で何が悪い~  作者: キリン
【第一部】第一章 憤怒の黒炎
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エプロンは愛い

いろんなことがあった今日。

生きているうちでは珍しく、楽しい一日になった。


まあ腰を蹴られたり、クソ野郎と関わりを持ってしまったのはとてもイラっと来るのだが。

まあそれはそれで、とても楽しい一日だった。


家臣もできた、秀吉と同じぐらいの忠臣だ。


まだまだ小さきおなごだが、それでも優秀で忠臣なのは変わらない。

……まあ感覚的には孫娘という感じなのだが、そこら辺はあのちっこいのに言ったらまた腰にドロップキックされそうなので黙っておくことにしよう。


……いや、楽しい一日だった。


本当に、楽しかった。


天下統一とか戦とか、明智の裏切りとか、そんなもの全部忘れてしまって、楽しんでいた。


そうだ、人生は楽しいんだ、誰だって楽しいはずなんだ。


『本当に?』


『本当に、あなたはそう思う?』


当たり前だ、じゃなきゃ自分はあの少女に感謝などしていない。

あの時自分助け、こんな楽しい一日をくれたことに。


『でも、あなたはあなたが嫌いでしょう?』


『自分は自分自身が犯した罪が形になった炎が渦巻く本能寺で死ぬべきだった、そうよね?』


……もういい、喋るな。


『真実よ、あなたは余りにも自分に甘すぎる、偽善者にもなってない』


五月蠅い。

何が楽しい。

自分はもう疲れた、自分の罪を見るのも、それを償う方法を考えるのも。


『じゃあ、あなたは地獄行きね、あなたの家臣はさぞかし安心するでしょうね』


……何が言いたい。


『みんな心の中で、あなたが怖いし、憎んでいる、光秀様だってそうよ』


……貴様が誰だかは分かった、だがそれは置いておく。

確かに、お前言ったことは真実だ、光秀は儂を死ぬほど憎んでいたんだろう。


『そうよ、貴方が光秀様を変えたのよ』


……だがな、お前が言ったことは一つ間違っている。

家臣が全員、儂を憎んでいると思うか?


『……あなた、うつけ者だってことは本当らしいわね』


当たり前だ、儂がいくら塵でも、あのちっこいのを愚弄させはしない。

……されてはいけないのだ、ああいう人間はな。


『ずいぶんご執心ね、何人女を抱いてきたのかも分からないような奴が、今更、しかもロリコン?』


違う、儂はあいつを孫だと思っておる。


『ますますバカなの?』


……いや、何だろうな。

……。

愛しいんじゃよ、いろんな意味で。


『……』


黙んな黙んなほんと、ロリコン信長とか絶対嫌じゃぞ儂。


『……いずれ貴方は此処に来る、そして光秀様があなたを殺す、必ず』


受けて立つ、貴様も光秀も、全て断ち切って見せよう。








「朝ですよー、早く起きてくだサイクロンぱーんち」


やる気なない声とともに、フライパンを持ったエプロン姿のアメリアのビンタが信長の間抜け面に炸裂した。


ぼごぉおん! と、ちょっと心配になるぐらいの音が響き、信長が飛び起きる。


「何すんじゃこの馬鹿モン! せっかく夢の中でお前の株を上げてやってたというのに!」


「夢は覚めれば消えるモノ、さっさと起きてください、朝ご飯が覚めますよ?」


朝ご飯? と、信長はそういえばいい匂いがする方向へと足を運んだ。


そこにはテーブルがあり、見たことも無いような食べ物がたくさん並べられていた。


「あ、ノブおはよ~」


ふぁあ、と、まだ寝起きのナポレオンが自分の部屋らしき場所から出てきたので、とりあえずぶん殴っといた。


「へぇ~、これあんたが作ったの? やるじゃない」


昨日の女、ジャンヌ・ダルクはいつの間にかアメリアの後ろに立っていて、アメリアの肩を抱いていた。


信長は音速でジャンヌの手を掴み、アメリアの肩から強制的に離す。


「儂の家臣に触るなこの阿呆!」


「はぁ? 別にいいでしょ? 仲良くするのはチームの基本ですよ~だ」


「ご飯を食べローリングタブルパンチィ」


アメリアの双椀から繰り出されるパンチ(ただの萌え萌えポカポカ)は二人をほっこりさせ、とてもいい気持ちでテーブルにいざなった。


いただきます、と、手を合わせて全員で言った後、各々が箸やらフォークやらを使って飯を食い始めた。


「……うまい! うますぎるっ!」


「なんか聞いたことないけど凄く古い感じするわねそれ」


「あ? やんのかおおん?」


「やってやるわよ表へ出なさい」


二人が席から立ち上がり、ボキボキ指を鳴らしていると、アメリアが。


「ちゃんと! 席にっ! 座ってくださいっ!」


珍しく大きな声を出し、机を思いっきり叩いてそう言った。

二人はたじろぎ、とりあえず信長が。


「わ、儂は座っているぞぉ~?、空気椅子ってやつじゃな!」


「そんなの座ってないのと同じじゃない! ごめんなさいね~なんか・・・・・」


二人とも苦笑いのまま、椅子に座った。


アメリアはほっぺを膨らましながら、再び飯を食べ始めた。


「あー、ちょっといいかな?」


ナポレオンが手を挙げ、全員の箸を止めた。


信長はアメリア特製の卵焼きを拝みながら食べながら、ナポレオンに言う。


「ふぁーふ、ぁーふぉふぉふぇふぇふぇーふ」(特別意訳・お主こんなにうまい飯を取る箸を止めるとか頭おかしいんじゃないのか?)。


「うーうー」(特別意訳・そうよ)


ちょっと品のないフランスと日本の代表的偉人にドン引きしながら、ナポレオンは話を続けた。


「えーっと? 君たちがこの時代に来たのは、世界を救うため、ここまではいいかい?」


「あっはい卵焼きうまっ」


「お代わり!」


ナポレオンはとりあえずまともに話を聞いてくれるアメリアだけに言うことにして、少しボリュームを下げて話を続けた。


「……世界を救う僕らがいるなら、それを脅かす悪がいる」


というわけでさ、と、ナポレオンは両手を合わせてごちそうさまと言ってから、アメリアと信長にこう言った。


「君たちを襲った兵士いるでしょ? 何処の国の兵士か調べてきて、もちろん、ノブとアメリアで」


これが、本当の始まり。

狂った歴史、狂った物語。

それが始まる、瞬間。


当のご本人は、アメリアのエプロン姿が愛いとしか思っていなかった。








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