そんなこんなでいろいろありまして
「そんな訳で女子会です!」
歓声を上げるアメリアと女子勢、全員が全員好きな食べ物やら何やらを握り締め、狭い飛行機の中で愉悦を楽しんでいる。
そこでグイっと一口、華奢な腕にそぐわない大きな酒瓶を、ジャンヌが景気よく飲み干した。
「いえーい!今日は真っ昼間から騒ぐぞー!」
「良いこと言ったなダルっち!よっしゃあまずは何する!?」
なんかこの大英雄あだ名をつけるの好きだなぁ、と、そんな事を思いながらもジャンヌはアキレウスと肩を組みながら笑った。
「・・・・・・・・・・・」
そんな会話の中で、顔を真っ青にしながらちょこんと正座している女性が一人。
明智光秀。
史実では男と語られ、この物語では女であることが明かされた人物。
つい先ほどまで威勢よくアキレウスの胸ぐらを掴んでいたものの、ものの数分で肩をすくめて縮こまってしまったのだ。
まあそれもそのはず、目の前にいるのは異国とは言えど救国の聖女と神の血を引く大英雄、ただの裏切り者である自分に劣等感を覚えるのも無理もない。
あと怖い、めっちゃ怖い、正気を失って襟首を掴んだことに腹を立てているかもしれない。
そう、この場に話せる人間は、彼女を除いて誰一人いないのだ。
「光秀さん、飲み物は水と紅茶とお酒、色々ありますけど何にしますか?」
「えっ・・・・・ああ、うん、酒で」
こくん、健気に頷いたアメリアは、ジャンヌの懐に置いてあった未開封の酒瓶を開け、拳一つ分のコップに注いだ。
「はいどうぞ、日本酒じゃないのでお口に合うかどうかわかりませんけど」
「あ・・・・うん」
「あっ、もしかして盃の方が良かったですかね?」
「いやそういう事ではなく!」
思わず声を荒げた、しまった、陽気だった雰囲気が消し飛び、二人の英雄、そしてこちらにコップを差し出すアメリアの目線が突き刺さる。
「・・・・・・・私は敵だ、お前たちの仲間を殺そうとした」
空気を壊した、気分を害した。
喉元まで恐怖が昇ってきた。
「・・・・・・・・光秀さん」
コトン、と、コップを飛行機の端に置き、アメリアは私の顔を掴んだ。
(―――――――――ひっ)
殺される、そんな言葉が頭を駆け巡る。
だがそれがどうした、道理に敵う、こいつらは自分の妻を殺しに来たんだ。
覚悟を決め、閉じていた瞼を開ける。
そこには。
「・・・・・・・・ほーん」
以上に顎をしゃくれさせ、片目を吊り上げた表情のアメリアがいた。
思わず吹き出しそうになるのを堪えながら、光秀は何かを言おうとするが。
「はいだまらっしゃい、今の発言を取り消しなさい」
ぎゅむーっ、まるで餅をこねるかのようにアメリアは両手で光秀の柔らかいほっぺをムニムニし始めた。
是では喋れない、それに発言?何を言っているのだろう。
「貴方は殺そうとしたんじゃない、殺されに来たんでしょう?それにあなたが前にした話が正しければ、悪いのは信長公、仲間である私たちも例外ではありません」
確信を、少女の口から出てきた刃によって貫かれた。
でもその刃は優しく、まるで自分の悪い何かを殺してくれるような、そんな気がした。
「貴方がそれを気にするなら、私たちは笑って頭を下げましょう」
そう言って、アメリアは深く頭を下げた。
ジャンヌもアキレウスも、持っていた酒や肉を置き、頭を下げ始める。
「えっ・・・・・・・ええ?」
明智は困惑する、敵に頭を下げるなど訳が分からないからだ。
「改めて、ウチの信長公がご迷惑をおかけしました」
下げた頭をゆっくりと上げ、アメリアは私の目を見てくる。
そしてようやく気付いた。
彼女は、きちんと笑っていた。
この国で初めて会った時、何とも言えない不快感が彼女の周りを包んでいたが、それがきれいさっぱり消えていたのだ。
「・・・・・・・答え」
「え?」
「いいえ、何でも」
首を横に振り、光秀は軽く頭を下げる。
「こちらこそ申し訳ありません、場の雰囲気を乱したうえに、愚鈍な問いを投げかけてしまって」
「別にいいですけど、このまま帰ったりしませんよね?まだあなた何も食べてないし話してもいないじゃないですか」
アメリアは光秀の細く小さな手を握り締め、ぎゅっ、と力を籠める。
「聞かせてください、貴方の人生、その波乱万丈さを」
そう言って後ろを向き、こちらを見据える二人を見る。
片や救国の聖女、片やギリシャの大英雄。
「聞いてあげてください、彼女たちの人生を」
そう言って、アメリアは置いてあったコップを手に取る。
「日本では、こうして酒を酌み交わすのが友好の証と聞きましたので」
「え、でもイアハート殿は子供では・・・・?」
「良いんですよ、ってか私は子供ではありません生理だって来てますし」
いや何があったんだイアハート、だが考えるのは真に愚鈍な気がするので聞かないことにした。
酒が入ったコップをそれぞれ持ちながら、アメリアは酒を飲み干した。
光秀も、それを豪快に飲み干した。
「・・・・・・・・・いい飲みっぷりですね、流石は大人と豪語するだけはあr
「Are you from japan?no i am not Japanese」
「え?」
光秀のきょとんとした声が響く前に、アメリアはもう戻れない領域へと至っていた。
後方のジャンヌに掴みかかり、酒臭い口で訳の分からないことを言い出す。
「I think you are a hero because you are kind」
「絡み酒ってウザいけど可愛い子なら大歓g
「Your favorite person is Napoleon」
「おい何であいつの名前が出てきた?」
顔が険しくなるジャンヌをすり抜け、アメリアはアキレウスの目の前に詰め寄る。
「なっ・・・・・・なんだよ」
「Your favorite person is also Napoleon」
「―――――――――――」
思わず無言になるアキレウス、アメリアは酔ったまま酒瓶を抱え、その場で寝てしまった。
「・・・・・・・・・・」
お酒止めようかな、そんな事を思う光秀であった。
あとがき
神に殺されました作者です。
やっぱ強い作者は強いですね、桁が違う。
助けてピーポーえヴりわぁん。
今回の言いたいこと。
中指of中指、それ即ちポプテテピック。
中指こそ最大の攻撃であり防御である。
今回の字数 2390




